東芝エネルギーシステムズ、東北電力、東北電力ネットワーク、岩谷産業、旭化成は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」で、期間を2021年3月末から2023年2月末まで延長した委託契約をNEDOと締結した。今後は、5社体制により、システム制御や水電解技術の更なる高度化に向け取り組んでいくという。
・ 事業名称:水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発
・ 期間:2016~2022年度(2016~2017年度までは基礎検討(FSフェーズ)を実施し、2017~2020年度までシステム技術開発(実証フェーズ)を実施中。今回、2022年度までシステム技術開発(実証フェーズ)を延長。)
実証事業の概要
太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入拡大にともない、電力系統における需給バランスを調整するための出力制御の機会が増加する。できるだけ出力制御せずに、再生可能エネルギーで発電した電力を有効活用するための方法として、大規模で長期間の貯蔵を可能とする水素を用いたエネルギー貯蔵・利用(Power-to-Gas)が挙げられる。この水素を用いたエネルギー貯蔵・利用を効率的に進めるためには、出力変動の大きい再生可能エネルギーを最大限活用するための電力系統需給バランス調整機能(ディマンドリスポンス)だけでなく、水素需給予測に基づいたシステムの最適運用機能の確立が必要となる。
2020年3月に開所した「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」では、世界最大規模の10MW級水素製造装置を活用し、電力系統における需給バランスの調整に貢献することで、蓄電池を使わずに出力変動の大きい再生可能エネルギーの電力を最大限利用するとともに、クリーンで低コストの水素製造技術の確立を目指してきた。
今後は、当初の東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業の3社に、東北電力ネットワークおよび旭化成が加わった5社体制で、現在実施中である「実証フェーズ」を2023年2月末まで延長し、「Power-to-Gas」の実用化に向けた技術の確立を目的として、各種制御システム(水素エネルギー運用システム、電力系統側制御システム、水素需要予測システム)や水電解技術の更なる高度化を目指す。
各種制御システムの高度化へ向けた研究開発では、電力システム改革や電力市場の制度動向を踏まえ、太陽光による発電電力の逆潮流機能を追加することなどにより、需給調整リソースとしての水素エネルギーシステムの活用に向けた機能向上などを目指す。
また、水電解技術のさらなる高度化へ向けた研究開発では、部材・機器の経年劣化評価を基にした交換頻度の適正化、電解枠の構造・材料見直しなどを通じ、水電解装置のコスト削減を目指す。
この事業における各社の役割、本プロジェクトへの取り組む姿は以下の通り。
東芝エネルギーシステムズは本事業を通じ、再生可能エネルギー由来の水素製造から利活用まで、エネルギーを効率的に使用することのできる水素ソリューションを展開し、CO2フリーの水素社会の実現に貢献していく。
東北電力は、電力の安定供給を前提とする水素エネルギーシステムの活用方法を検証し、再生可能エネルギーの導入拡大を目指すとともに、引き続き、地元電力会社として福島県の復興に貢献できるよう取り組んでいく。
東北電力ネットワークは、電力系統側制御システムを活用したディマンドリスポンスによる需給バランスの改善について検証し、再生可能エネルギーの導入拡大と電力系統の安定運用の両立に向けて取り組んでいく。
岩谷産業は、本事業における開発・実証が、水素エネルギー社会の早期構築に寄与するものと考えており、産業用水素の輸送・貯蔵・供給システム関連技術、水素ステーションの建設・運営などの知見をもとに、水素エネルギーの利活用拡大に向けて積極的に役割を果たしていく。
旭化成は、本事業向けに世界最大規模の10MW級大型アルカリ水電解装置を自社技術で新規設計し、納入したサプライヤーの立場だったが、このたび、委託事業者として本事業に参画し、主に水電解装置関係の技術開発を担当することとなる。本事業で得られた成果を基に大型水電解装置の早期実用化を目指し、世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献していく。
東芝エネルギーシステムズ:プロジェクト全体の取り纏めおよび水素エネルギーシステム全体
東北電力:電力の安定供給を前提とする水素エネルギーシステムの活用検証
東北電力ネットワーク:電力系統側制御システムを活用した電力系統の需給バランス調整
岩谷産業:水素需要予測システムおよび水素貯蔵・供給関連
旭化成:水電解装置維持費低減のための技術開発