スクランブラーと言うと年代によっては懐かしく、若い世代には新鮮に感じられる。ダートも走れる機能性を求めたそのスタイルはちょっとワイルドで、男のツールに相応しい雰囲気が漂ってくるのである。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)
取材協力●トライアンフ モーターサイクル ジャパン
トライアンフ ・スクランブラー1200XC.......1,921,900円
オンとオフ、つまり舗装路と非舗装路の両方を走れる機能を折り込んで開発されたデュアルパーパスモデル。その原点と言えるカテゴリーがスクランブラーである。ダートでもグリップに優れるタイヤを履き、アップハンドルとアップマフラーを装備。
悪路での操縦性を向上、ロードクリアランスを稼ぎ、飛び石のヒットや転倒等、ダメージの軽減策を施す等、タフな仕上がりを狙ったデザインが見逃せない特徴である。
まだまだ現実に非舗装路を走る機会の多かった50~60年代は、実用的な選択肢としても注目されたが、時代の変遷と共にダートでの本格的パフォーマンスの追求(単能化)がエスカレートし出すと、カテゴリーとしてのスクランブラーは、いつのまにか目立たない存在になってしまった。
その後モトクロッサーやエンデューロマシンに近い高性能車の人気も落ち着き、昨今ではアドベンチャー系が注目されている中、トライアンフは最新のテクノロジーを注ぎ込んだ新世代スクランブラーを投入した。この1200スクランブラーXCは全ての道とオフロードを重視して開発されたと言う。
もちろんボンネビルからの派生機種だが、半世紀以上前から数々のダートシーンで活躍したトライアンフの歴史を彷彿とさせてくれるだけに、スクランブラーの登場はインパクトを持って受け入れられ、市場に大きな話題を提供したのである。
フロント21、リヤ17インチのスポークホイールを採用。ブロック剛性の高そうなトレッドパターンデザインのメッツェラー製TOURANCEのチューブレスタイヤを履く。鋼管ダブルクレードルフレームにはアルミ製スイングアームを採用。全体的に軽量化されて車両重量はボンネビルT120より19kg軽い225kgに仕上げられている。
搭載エンジンもクランクの回転慣性マスを軽くする等、吸排気系等の全てを見なおす専用チューニングが施された。ちなみに最高出力はT120の80psから90psへ約13% も向上。最大トルクも5Nm 増の110Nm を発揮。それぞれの発生回転数も最高出力は6,550 から7,400rpmへ、最大トルクは3,000 から3,950rpmへ、共に高いところへ移行している。
フレームワークやサスペンション、16L 容量のタンクやフラットに長いダブルシートデザイン等、全てがオーソドックスな手法でまとめられているが、かなりグレードの高い装備パーツが奢られ、全体に贅沢な仕上がりを誇っている。
さらにメーターディスプレイやエンジンマネージメント等、電子制御系のデバイスに最先端テクノロジーが積極導入されている点も見逃せないチャームポイントである。
エンジンの出力特性やトラクションコントロール、ABSのモード設定が何種類も可能。IMU(慣性計測)ユニットを活用したコーナリングABS やコーナリングトラクションコントロールも搭載。
TFT ディスプレイも第二世代の物へと進化し、GoProコントロールシステムやナビゲーションと連携できる。純正オプションのBluetooth 通信モジュールを使うと、スマホの連携活用にも対応。ちなみにイグニッションキーはキーレスで扱いやすいスマートキー方式が採用されている。
なお、試乗(撮影)車はセットオプションとして掲げられている「エスケープインスピレーションキット」装着車である。
重厚感漂う鉄馬らしい乗り味
足つき性チェック(身長168cm)
ディテール解説
◼️主要諸元◼️
エンジン形式:水冷並列2気筒 SOHC 8バルブ/270°クランク
排気量:1200cc
ボア・ストローク:97.6×80mm
圧縮比:11.0:1
最高出力:90PS(66.2kW)/7,400rpm
最大トルク:110Nm/3,950rpm
吸気システム:マルチポイントシーケンシャル電子燃料噴射
排気システム:2 INTO 2 エグゾーストシステム(ブラシ仕上げ)
始動方式:セルモーター
潤滑方式:ウェットサンプ
駆動方式:Xリングチェーン
クラッチ:湿式多板/アシスト付
トランスミッション:6速
一次減速比:1,257(93/74)
二次減速比:2,750(44/16)
ギヤ比:
1速:3,500(49/14)
2速:2,500(45/18)
3速:1,850(37/20)
4速:1,480(37/25)
5速:1,296(35/27)
6速:1,172(34/29)
フレーム:鋼管とアルミニウム製クレードル
スイングアーム:アルミニウム製両持ちタイプ
ホイール(前/後):36本ワイヤースポーク、アルミニウムリム、21x2.15インチ / 17×4.25インチ
タイヤ(前/後):チューブレス90/90-21 / 150/70 R17
サスペンション(前/後):ショウワ製φ45mm倒立式フォーク / オーリンズ製ピギーバックリザーバー付ツインショック、フルアジャスタブル、
トラベル量(前/後):200mm / 200mm
ブレーキ(前/後):Brembo製φ320mmツインディスク、Brembo製M50 4ピストンラジアルモノブロックキャリパー、ABS / 255mm径シングルディスク、Brembo製2ピストンフローティングキャリパー、ABS
全幅:840mm
全高:1200mm (除くミラー)
シート高:840mm
ホイールベース:1530mm
キャスター:25.8 º
トレール:121mm
車両重量:225kg
燃料タンク容量:16L
燃料消費率:4.9 L/100km(20,4km/L)
⚫️試乗後の一言!