どれほど技術が進化しても、法規や市場環境の変化など様々な要因が影響するため、最新のモデルが最良とは限らないのが、クルマの面白い所。さりとてモデル末期のクルマは、熟成が進んでいるとはいえ、その後現れる新型車で劇的に進化する可能性を考慮すると、実際に購入するのはなかなか勇気がいる。
そこで、近々の販売終了またはフルモデルチェンジが確実視されている、モデル末期の車種をピックアップ。その車種がいま“買い”か“待ち”かを検証する。
今回採り上げるのは、新型ではルノー日産三菱アライアンスのCMF-Bプラットフォーム採用が確実視されている日産のコンパクトカー「ノート」の、シリーズハイブリッド車における中間グレードに、ブラック基調の内外装を与えた「e-POWER Xブラックアロー」。一般道で約100km、高速道路で約100km試乗し、燃費を計測しつつその実力をチェックした。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、日産自動車

現行二代目ノートがデビューしたのは2012年8月。最早8年も前のことになるが、率直に言ってデビュー当初から、いやむしろデビュー当時の方が、その実力と商品力に強い懸念を抱いていた。


二代目ノートの土台となっているのは四代目マーチと同じ、本来は新興国向けのAセグメント車を主眼としたVプラットフォーム。筆者は長年お世話になっていた日産ディーラーへの恩返しなどもあり、この四代目マーチを2010年7月のデビュー直後に購入したが、低燃費・軽量化以上にコストカットが目に付くその出来に辟易し、1年ほどで手放している。


そんな長年の義理人情すら吹き飛ばす出来の悪さを、200万円近い身銭を切り体験して間もない頃だったため、デビュー当時の二代目ノートをより厳しい目で見ていた感は否めない。だが、今改めて冷静に見てもなお、初代ノートのみならず、日本では販売が堅調ながらモデル廃止された初代ティーダの後継車とも位置付けるには、余りにも無理のある仕上がりだった。

それが大きく変わったのは、シリーズハイブリッド車「e-POWER」を追加した、2016年11月のマイナーチェンジである。常時シームレスかつトルクフルなモータードライブをワンペダルで楽しめるうえ、e-POWER搭載のためシャシー・ボディが強化されたことで乗り心地やハンドリング、静粛性も大きく改善。内外装の質感も高められたことで、一躍日産の国内向け登録車における最量販車種に上り詰めた。
そんなノートe-POWERを改めて見ると、マイナーチェンジで一新されたフロントマスクは程良くスポーティでクドすぎず、サイドビューも全長4100mm・ホイールベース2600mmというクラストップの長さのおかげで伸びやかだ。
この全長とホイールベースの長さは室内、特に後席空間の広さに直結しており、身長176cm・座高90cmの筆者が座っても充分以上の広さがある。ただし前席の下にはe-POWERのリチウムイオンバッテリーが敷き詰められているため足先を入れられず、脚を思い切り伸ばしてリラックス…というわけにはいかないのが実情だ。
また、絶対的に小ぶりなうえクッションに弾力がなく、サイドサポートも乏しいため、面圧がヒップに集中しやすい。これはフロントシート、またベースとなったマーチの前後席も全く同じ傾向で、長距離長時間走行した後は凄まじい疲労と腰痛を覚悟しなければならない。
インパネはシルバーあるはピアノブラックの加飾パネルで質感が高められているものの、本体の質感は高くなく、造形も平凡と言っていい。荷室はフィットほど広くはないがヤリスやスイフトほどは狭くないというもので、ディーラーオプションのマルチラゲッジボードを使えばフロア高をかさ上げでき、後席を格納してもほぼフラットな状態になるので使い勝手はまずまずだ。
では、実際の走りと燃費はどうか。全行程を通じ、外気温は24℃前後、天気は曇り時々雨、エアコンの設定温度は20℃、走行モードはECOモードで走行した。
まず一般道を約100km走行したところ、意外にもサスペンションは硬めのセットアップで、姿勢変化は程良く抑えられている一方、大きな凹凸を乗り上げても車体の揺れは少ない。
だが身体に伝わってくる衝撃は強めで、決して快適とは言えない。また粗粒路でのロードノイズとフロアの振動は大きく、良路との落差も激しい傾向にある。そして前述の通りシートは面圧がヒップに集中しがちで、3時間ほど走行して休憩を入れた際にはすでに腰とお尻の筋肉が痛くなっていた。
だが、販売を大きく押し上げる主要因となったe-POWERの滑らかかつ力強いモーターの加速、またアクセルオフでの回生ブレーキによる完全停止まで可能にしたワンペダルドライブは、やはり快適の一言に尽きる。特に渋滞に見舞われた際は、ペダルの踏み替え回数が激減するため、疲労軽減に大きく貢献するはずなのだが、それをシートが完全に帳消しして余りあるのが心から悔やまれる。
最初の約20km、1時間半程度は渋滞でのストップ&ゴーを繰り返したが、その後は幹線道路をスムーズに走れたこともあって燃費は伸び、一般道100km走行後には23.0km/Lを記録した。JC08モード燃費34.0km/Lのほぼ2/3にあたるこの数値は、妥当な線と言えるだろう。
では、常時モーターで走行するシリーズハイブリッドに不利と言われる、高速道路はどうか。
走行車線の流れに沿って走行している分には燃費の落ち込みが少なく加速もスムーズだが、流れをリードしようとすると明確に燃費と加速が悪化していく。その落差はEV以上に大きく、クルマが「これ以上はもう無理」と音を上げているのがハッキリと体感できるほどだ。ただし車体の挙動そのものに不安を覚えることはなく、操縦安定性は充分に確保されているのだが。
また、バッテリーの状態によって、加減速性能が大きく左右されやすいのも気になる所。バッテリー残量が少ない時は燃費と加速がより一層悪化し、逆に多い時は回生ブレーキの効きが弱くなる傾向は、車重が500kg以上重いセレナe-POWERほどではないにせよ、今回のノートe-POWERからも感じ取れた。
そのため、流れをリードするのは早々に諦めて、ACC(アダプティブクルーズコントロール)任せのイージードライブに徹することにしたのだが、その結果として燃費は21.4km/Lと、一般道との差は-1.6km/Lに落ち着いた。
こうしてノートe-POWERを見てみると、プラスの方向では一般道でのワンペダルドライブ、マイナスの方向ではシートの出来を除いては、「可もなく不可もない」というのが率直な印象だ。
しかしながら今回のテスト車両は、本体価格215万3800円+メーカーオプション(LEDヘッドランプ、カーテンエアバッグアラウンドビューモニターなど)25万3000円、ディーラーオプション(フォグランプ、ナビ、ドラレコ、マルチラゲッジボード、ルーフスポイラーなど)48万8237円、しめて289万5037円に達しており、諸費用を含めれば300万円を優に超える。
それだけの出費を要求するにしては、その対価として得られる満足度も各部のクオリティも決して高くはない。また、商品価値の根幹をなすe-POWERに対しても、燃費や加速フィールでこれを上回るハイブリッドシステムが競合他車から現れているだけに、より低燃費かつ使用状況による変化が少ないものへの進化が強く望まれる。
従って、「モデル末期の日産ノートe-POWERは“買い”か“待ち”か?」と問われれば、私は“待ち”と答えるだろう。
なお、次期ノートは新型ルノー・クリオ(日本名ルーテシア)と同じCMF-Bプラットフォームを採用される可能性が高く、相応のポテンシャルアップが期待できる。
さらに、最新スペックのe-POWERを搭載するコンパクトSUV「キックスe-POWER」が、間もなく日本でも発売される。マッシブなスタイルとより高い実用性を求めるなら、見逃す手はないだろう。
ただし、専用チューンのHR16DEエンジン+5速MTを搭載する「ニスモS」と、専用チューンのe-POWERを搭載する「e-POWERニスモS」を購入するなら話は別。特に前者は新型ノートに設定されるかが不透明なため、欲しいなら早めに手を打った方が良いかもしれない。
■日産ノートe-POWER Xブラックアロー(FF)
全長×全幅×全高:4100×1695×1520mm
ホイールベース:2600mm
車両重量:1220kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC
総排気量:1198cc
エンジン最高出力:58kW(79ps)/5400rpm
エンジン最大トルク:103Nm/3600-5200rpm
モーター最高出力:80kW(109ps)/3008-10000rpm
モーター最大トルク:254Nm/0-3008rpm
トランスミッション:--
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:185/65R15 88S
乗車定員:5名
JC08モード燃費:34.0km/L
車両価格:215万3800円