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ロータリー復活!となったら次期RX-7に載るSKYACTIV-Rはどんなエンジンになる? PHEV化? 48V化? 電動スーパーチャージャー付き?


マツダ100周年の2020年にロータリーエンジン搭載のスポーツカーが復活する……という期待を込めた噂があったが、残念ながらいまのところロータリーエンジン搭載モデルは登場していない。レンジエクステンダーの発電用エンジンとしてロータリーを搭載する、というのは現実的(だし、マツダも明言している)だが、主機としてロータリーを積んだクルマはどうなっているのだろう? 後編はSKYACTIV-Rと呼ばれる新世代ロータリーについて予想する。

ロータリーエンジン復活の条件

 マツダがロータリーエンジン搭載の新型スポーツカー(おそらく名前は「RX-7」と予想する)を発売するための条件を「技術課題の克服」と「経営環境」と前編に書いたが、技術課題とは


1:燃費性能の向上


2:環境性能の向上


3:コスト


 だと思う。


 3のコストについては、ロータリーエンジンを搭載するモデルが次期RX-7だけ、という状況では止むを得ないこと。高価なプライスダグを下げても一定数の顧客が存在することが条件になる。つまりマツダのブランド性が高級スポーツカーを売れるだけ向上していることが重要だ。


 勝手に推測すれば、トヨタ・スープラRZ(3.0ℓ直6ターボ)が約700万円だから、次期RX-7は高くても800万円以下の価格におさめる必要があると思う。トヨタ(とBMW)ですら、単独ではビジネスとして成立させられないスポーツカー。マツダが次期RX-7で成功をおさめるにはかなり高いハードルを越えなくてはならない。


 ちなみに、RX-7(初代・2代目・3代目)は25年間で81万1634台製造されている。平均すれば年間3万2500台だ。とはいえ、これはRX-7が北米で売れに売れていた時期も含めての数字。1992-2003年の3代目FD型は12年間で8万3184台だから6932台/年だった。次期RX-7は年産1万台×モデルライフ(8年間くらい?)=8万台くらいは売れる価格にしなければならない。




 


 生産設備も新規で立ち上げなくてはならないロータリーエンジンが年産1万基ではコスト低減は難しい。


 そこで関係してくるのが、レンジエクステンダー用のロータリーエンジンだ。




 マツダはレンジエクステンダー(REX)の発電用にロータリーエンジを使うと明言している。

マツダの資料より

 上の資料をみると、REX用ロータリーは1ローターだ。

 このREX用のロータリーと次期RX-7が搭載するロータリーエンジンに共通はあるのだろうか?


 マツダが2013年暮れにお披露目したREX用ロータリーエンジン(デミオEVのリヤにローターが水平になるように搭載)は、330ccだった。先行開発用のエンジンだからこれがそのまま次のREXに載るわけではないだろう。330cc×2ローターにしても660cc。軽自動車には最適だが、MAZDA2以上、さらにSUVもあるマツダの車両には小さすぎる。

16X(左)と13B(右)のローターサイズ比較 | 2007年の第40回東京モーターショーに参考出展された16Xのローター。比較用に13Bのローターと並べて展示されていた。 見た目にもサイズの違いは歴然。ローター 内側のギヤ径もかなり大きくなり、K値変更によるストロークアップが実感できる。 細かく見ると、ローターリセスは13Bに比 べてやや深くなっており、逆にサイドシールはまったく同じものであるように見えるが、このあたりは開発の過程でどんどん変更される部分ではあるだろう。

 となると、SKYACTIV-Rの元になるはずの「16X」ロータリーの単室容積800ccというのが浮上する。生産技術的に、2つのサイズ(REX用の小さなローターと次期RX-7用の800cc用のローター)のローターとハウジングを造るのが難しいかは素人にはわからないが、1種類の方がなにかと都合が良いはずだ。

ディメンジョンの見直しと排気量の拡大 | ディメンジョンの刷新を断行する16X。市販開始後の歴史で2回目、実質的には初の“フルモデルチェンジ”である。K値(R値/e値)を大きくすることは、レシプロエンジンのロングストローク化に相当。単室容積が同じなら、e値が大きいほどR値が小さくなり、機械的にはメリットが得られやすいが、16Xでは燃焼そのものの劇的な改善を狙い、ボアに相当するb値の縮小も事実上の決定事項となっている。シール性能なども含めた高回転化技術も一段高いものが要求される。

REXの発電用ロータリー→800ccの1ローターSKYACTIV-Rエンジン


シリーズハイブリッドの発電用ロータリー→800ccの1ローターSKYACTIV-Rエンジン


次期RX-7用ロータリー パターン①→800cc×2ローター(1600cc)SKYACTIV-Rエンジン 300ps




次期RX-7用ロータリー パターン②→800cc×3ローター(2400cc)SKYACTIV-Rエンジン 430ps




 というのは、どうだろう?


2ローターなら税制(×1.5する)1600cc×1.5で2400cc


3ローターなら2400cc×1.5で3600cc


 扱いとなる。


 出力は、RX-8の13B-RENESIS(MSP)が2ローター1308ccで235ps/216Nmだったから、2ローター1600cc(もちろん自然吸気で)で300ps、3ローターなら430psくらいにはなるだろう。

3ローターか2ローターか?

 次期RX-7が搭載するSKYACTIV-Rは2ローターか2ローターか? 勝手な推測を続けるが、2ローターだと予想する。歴代RX-7で3ローターを積んだモデルはないし、技術課題1の燃費性能のためにも3ローターは難しい。軽量コンパクトでありながら比出力が高いというのがロータリーエンジンの魅力。フロント・ミッドシップにロータリーエンジンを搭載するRX-7は、スーパースポーツというよりライトミドル級スポーツだと思う。




となるとライバルは


BMW Z4(3.0ℓ直6ターボ 340ps 全長4335mm)


トヨタ・スープラ(3.0ℓ直6ターボ 387ps 全長4380mm)


ポルシェ・ケイマン(3.0ℓ水平対向6気筒ターボ)


日産フェアレディZ(3.7ℓV6 336ps 全長4260mm)


ジャガーFタイプ(3.0ℓV6+SC 340ps 全長4480mm)


 になるはず(もっとも売れているのはフォード・マスタング


だが)。

2007年発表の「16X」

 SKYACTIV-Rのベースとなるのは、2007年の東京モーターショーで発表された「16X」だろう。当時の資料にも

「次世代 RENESIS では、繭形をしたローターハウジングのトロコイド形状を変更します。これは1967 年に初代10A(491cc×2)を導入し、その後7 年間にわたり13A(655cc×2)、12A(573cc×2)、現行13B(654cc×2)と最適なトロコイド形状を模索した黎明期以来の、エンジンの基本骨格のさらなる進化を意味します。ローターハウジング幅と厚さを縮小しながらトロコイド外形を大きくし、排気量を800cc×2 にしたにも関わらず、エンジン本体でRENESIS 同等の小型化を可能にしています」
2007年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「大気(たいき)」。以前から展開している「Nagare」デザインテーマによる作品だが、想定搭載エンジンを16Xと明言。ショートオーバーハングのFRレイアウト、2シーター、グラスキャノピー、ライトウェイトという、「セブンの文法」に満ち溢れているのは、偶然とは考えにくい……。

 と書かれている。16Xはマツダ・ロータリーエンジンの歴史上、実質的に初のフルモデルチェンジとなるものだった。前型の13Bが1300ccだったのに対して16Xは1600cc。基本ディメンジョンを変更するだけでなく


・直噴化


・サイドハウジングのアルミ合金化も行なうとされていた。


 この16Xからすでに13年間も時間が経っている。この間、マツダはSKYACTIV-XのSPCCI燃焼、電動コンプレッサーの採用、などエンジンの燃焼技術を大きく進化させている。これがSKYACTIV-Rに取り入れられれば、課題の燃費性能も大きく向上しているはずだ。


 ただし、ロータリーエンジンが持つ「燃焼室が扁平で表面積が大きく冷却損失が大きい」という欠点を克服するのは容易なことではない。

サイドハウジングのアルミ化による軽量化と外郭縮小 | 従来は鋳鉄製だったサイドハウジングがアルミ化される。おもな狙いは軽量化だが、成型自由度の高さを活かして外郭寸法の縮小にも積極的に貢献させたい意向であるようだ。また、冷却水通路の効率化や、リブ形状の緻密化による剛性向上といったメリットにつながる余地もある。ブロック全体が同じ材質で構成されるため、サーマルマネージメントの点でも有利となるはずだ。

 では、次期RX-7は2ローターは、ロータリーエンジンだけで勝負するのか? そうはならないと予想する。少量生産のスポーツカーだからと言って、燃費性能(=CO2排出量)には目を瞑るという時代ではない。

パターン①:2ローターSKYACTIV-R+48Vマイルドハイブリッドを採用する

メルセデス・べンツが採用する三菱電機製48Vマイルドハイブリッドしシステム

 これは、メルセデス・ベンツが使っているような48VのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み込むことを想定している。メルセデス・ベンツSクラスの場合は3.0ℓ直6ターボに三菱電機製ISG(16kW/250Nm)を使っている。これなら、重量もさほどかさまず、燃費の向上が期待できる。ロータリーが苦手とする始動時の暖機や低回転での効率を改善できるのではないか。

パターン②:2ローターSKYACTIV-R+PHEVを採用する

ZF 8HPのPHEV仕様。PHEV仕様は、トルクコンバーターの位置に150kW/450Nmのモーターを内蔵し、ILE(インテグレーテッド・ローンチ・エレメントと呼ぶカップリング)を使う。

 こちらは、ZFが開発している縦置き多段ATで従来トルクコンバーターが収まっていた部分にトルコンに代えてモーターを入れるタイプを想定する。ZF製8HPの次期型PHEV用はトルコンの位置に150kW/450Nmのモーターを内蔵する。EV走行距離はバッテリー容量と車重によるが、50km程度走れるようにすれば、PHEVにやや甘めな現在のモード燃費は飛躍的に改善されるはず。こちらも、ライバルが直6ターボを載せていることを考えれば、充分に軽量コンパクトに仕上げられるはずだ。




 マツダがラージプラットフォーム(FR)で、どんなトランスミッションを使うか不明だが、選ぶとしたら、アイシン・エィ・ダブリュ8速/10速、ZF 8HP、あるいはジヤトコが最近発表した9速AT。どのメーカーも電動化の開発には余念がない。トルコンに代えてモーターにした多段ATを組み合わせることがSKYACTIV-Rに大きなメリットを与えると考える。

 ということで、本稿では次期RX-7の搭載パワーユニットは


800cc×2ローター/自然吸気/300ps/300Nm/PHEV(200ps/400Nmのモーターを搭載)




 あるいは


800cc×2ローター/自然吸気/300ps/300Nm/M Hybrid(48V駆動のISGを搭載)




 とする。

 マツダは現在、ラージプラットフォーム向けに直列6気筒エンジン(ガソリンとディーゼル)を開発中だ。振動特性に優れる直列6気筒を開発しながら、まだロータリーを諦めないのはなぜか?


 


 ひとつは、前述通りレンジエクステンダーの発電用エンジンとしての可能性があるからだろう。




 もうひとつは、HCCIの実現に見通しが立っているから、ではないか。マツダはSKYACTIV-XのSPCCIで燃焼技術で新たな知見を得ている。ロータリーエンジンにHCCIを適用できれば、現在のガソリン燃料を使っても燃費の向上したエンジンができる。HCCIロータリー・エンジンはロータリーの燃費を劇的に改善してレシプロ・エンジンに匹敵する走行燃費を実現できる可能性があるのだ。

マツダの水素ロータリー

RX-8 ハイドロジェンRE主要諸元


エンジン:RENESIS 13B水素ロータリー


燃料:ガソリン(燃料タンク容量61 )および水素(燃料タンク容量110 / 35MPa)


最高出力:ガソリン使用時154kW( 210ps) 水素使用時80kW( 109ps)/7200rpm


最大トルク:ガソリン使用時222Nm( 22.6kgm) 水素使用時140Nm( 14.3kgm) /5000rpm


航続距離(10.15モード):ガソリン549km 水素100km

RX-8ハイドロジェンREが搭載する水素REの概要。基本構造はRENESIS 13B-MPSと同様で、吸気室上部に水素インジェクターを追加した構成だ。ガソリンはポート噴射。燃料は運転席足元にあるスイッチで任意に切替えられる(ガソリン→水素は停止時のみ切替え可)。

 さらに、マツダがロータリー開発を諦めない理由は、「水素ロータリー」にある。水素を直接燃焼室で燃やす水素エンジンは、マツダやBMWが開発をしてきた。現在は、水素を使う燃料電池車に収斂した感があるが、水素の貯蔵方法が70MPaのタンクで規格が決まり、水素供給のインフラが整えば、ダイレクトに水素を燃焼室内で燃焼させる水素ロータリーが再び脚光を浴びる可能性がある。水素燃料とロータリーエンジンの相性はいい。

 また、LPG(液化石油ガス)やCNG(圧縮天然ガス)などさまざまな燃料に対応できるのがロータリーの強みだ。


 


 マツダがロータリーエンジンにこだわるのは、次期RX-7のためだけ、ではないのだ。


 と、勝手に次期RX-7について推測してきたが、SKYACTIV-R搭載の次期RX-7の登場を心待ちにしたいと思う。

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