ロータリーエンジンの部品構成はレシプロエンジンのそれとは大きく異なる。
ここでマツダ13B-RENESISを例に、その特徴的な構成部品を見てみよう。
TEXT:近田 茂(Shigeru CHIKATA)
PHOTO:瀬谷正弘(Masahiro SEYA)
これまでに量産されたロータリーエンジンにおけるローターの厚み(ローターハウジング幅)は10Aと13Aの60mm、12Aの70mm、そして13Bの80mm。以上の3タイプしか存在しない。ローター外周のやや湾曲した3面それぞれで燃焼エネルギーが得られ、偏心回転運動を繰り返しながらもスムーズに強力な軸回転力が生み出せる。燃焼面の表面積が広い特徴をもち、良い/悪い両方の特質を持っているが、レシプロよりも小さな排気量で大きな馬力を稼ぎ出せる。
各部シール類
ロータリーエンジンの完成には各種シーリング技術を究めたことが貢献した。レシプロよりもシール部分が多く、その長さも長くなる。ブロックの熱変形もあって、各部の気密や耐久信頼性を保つのが非常に難しいわけだ。悪魔の爪痕と言われたアペックスシールのチャターマークを始め、数々の困難に直面したマツダは、各部に独自技術を投入し成功へと導いた。サプライヤーである日本ピストンリングや日本オイルシールの努力があったことも見逃せないだろう。
ローターハウジング
繭型のローターハウジング。この中をおむすび型ローターが回るわけだが、ローターが偏心回転運動をする時、ローター頂点の回転軌跡がこの形状になると考えた方が理解しやすいだろう。燃焼時の面積が広いので、火炎伝播を促進するためツインプラグが採用されている。4サイクルエンジンのようにバルブや同開閉機構を持たないロータリーはハウジング周上のスペースは大きく、実験やレース用では3プラグを開発した例もある。
排気ポート
RX-8に搭載された、新世代ロータリーであるRENESISの革新ポイントは、排気孔位置をペリフェラルポートからサイドポートに変更したことにある。ローターハウジング周上から側面に移設することで、吸排気タイミングのオーバーラップを解消。各ポートの大型化(吸気側30%増し、排気側は倍のポート面積)や膨張行程を長くとれることも相まって高出力と低燃費化を実現している。またスキッシュサイドに残る未燃焼ガスが排出せず、再燃焼に回るのも特徴だ。
エキセントリックシャフト
クランクシャフトの役割を果たしている重要な部品がこれだ。固定ギヤの周りで偏心回転運動をするローターの動きを駆動軸として回転運動に変換する装置である。レシプロのマルチエンジンと比較すると非常に短い。位相も小さく剛性面で有利なので、支持部も少なくてすむ。フリクションロスは小さく、振動面でも有利となるメリットは大きい。もちろん3ローターや4ローターになれば、長く連結する難しさが生じてくるわけだ。
2008年4月に発行されたMotor Fan illustrated Vol.19「ロータリー・エンジン 基礎知識とその未来」より
次回は、「仮想敵ポルシェに勝つために FC3S(2代目マツダ・サバンナRX7)のパッケージング」をお送ります。お楽しみに!