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なぜ今、2ストロークエンジンに注目が集まっているのか?


排ガス浄化が難しいため姿を消していた2ストロークエンジンがここ最近、再び注目を集めている。シンプルな構造で4ストロークより高い出力を発生可能だが、いくつかの理由から廃れていった2ストの最新情報をMFi次号で特集した。

 かつてはオートバイだけではなく、自動車にも使われていた2ストロークエンジン。吸気/排気バルブがなくシンプルな構造でハイパワーではあるが、排ガスと未燃ガスが混在しやすく排ガス浄化が難しいなどの理由で、現在新車として販売中の自動車/オートバイ用パワートレーンからは姿を消している。

2ストロークの工程。4ストロークがクランク2回転に一度燃焼するのに対し、半分のクランク1回転に一度燃焼する。

 とはいえ、世の中から完全に姿を消したかといえば、けっしてそんなことはない。チェーンソーや、強力な風によって落ち葉などを吹き飛ばして掃除するブロワなどには小型軽量で高出力のパワートレーンとして現在も主役の座にある。

株式会社やまびこのチェーンソー。同社は国内のみならず海外市場でも高いシェアを誇る。
小型作業機器に使われる2ストロークエンジン。これだけ小さいのだ。


 またヘッドまわりに吸気/排気バルブがなくヘッドまわりの構成がシンプルであるため、可視化エンジンやまったく構造が異なるエンジンの製作が容易というメリットがあり、大学の研究室でも2ストロークでの研究も行なわれている。

日本大学 理工学部 機械工学科の飯島晃良准教授(右)と対抗ピストンエンジンを製作した学生のみなさん。

やまびこ製2ストロークエンジンの部品を使用した対抗ピストンエンジン。

やまびこ製ブロワーを使って製作された可視化エンジン。白く光っている部分を超高速度カメラで撮影する。

 今号では日本大学 理工学部 機械工学科の飯島研究室を取材し、学生の方々が製作した対抗ピストンのエンジンも撮影させていただいた。また飯島准教授からは、2ストローク燃焼に関する最新の知見や、将来の可能性についてお話を伺った。

 いっぽうアメリカのアキーテス・パワー社では、対抗ピストンの2ストローク3気筒で排気量2.7L(ピストンは合計6個)のエンジンをピックアップトラックに搭載し実験中。これはディーゼルのように圧縮着火させるもので、高度なシミュレーション技術を活用した燃焼解析と、高出力ではなくほどほどの出力で運転すれば排ガス浄化に関しても解決策はある、としている。



畑村博士が提案しているシリーズハイブリッド用2ストローク対抗ピストンエンジンの構成。

 本誌アドバイザーの畑村耕一博士は、2ストローク対抗ピストン単気筒のシリーズハイブリッド用エンジンを提案し本企画内で解説。それぞれのクランク軸に発電用ジェネレーターを取り付ければ振動面でも優位になる点を述べている。2ストロークはアイドリング時は燃焼が不安定という弱点があるが、発電専用エンジンであればこの領域はパスして運転できるのだ。




 自動車レースの最高峰であるF1でも、2025年からの新しいパワートレーン候補のひとつとして、2ストローク対抗ピストンエンジン+合成燃料のプランを検討中というニュースも流れた。このような最新の2ストロークエンジンの可能性を4月15日発売のモーターファン・イラストレーテッドvol.163 第2特集として掲載している。ぜひご一読いただきたい。





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