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ホンダ・アコードのメカニズムを徹底解説!パワートレーンもボディもサスペンションも見所満載


足掛け40年に渡ってつくり続けられ、十代目を数える歴代のアコードはホンダを代表するグローバルモデルに相応しい、その時々の最新性能が与えられてきた。そんなアコードらしさを継承するための技術開発は、まさにエンジニアの挑戦と言える。




REPORT●安藤 眞(ANDO Makoto)/編集部


※本稿は2020年3月発売の「新型アコードのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

運動性能を高めた新世代プラットフォーム

プラットフォーム開発のテーマは「低慣性・低重心」。重心位置から遠い前後サスペンション周辺の軽量化を行なうと同時に、後席下にIPU搭載スペースを確保。従来型より約15㎜の低重心化と1.7%のヨー慣性低減を達成している。

走りのための低重心プロポーション

従来モデルに対し全長を抑えながらもホイールベースを+55㎜拡大。さらに全高−15㎜、全幅を+10 ㎜とワイド&ローなプロポーションを獲得している。乗員の着座姿勢や位置を工夫することで、スポーティで疲労感の少ない運転姿勢も構築された。

安全運転は最適な運転姿勢から

運転席の8ウェイパワーシートは、前後の高さ調整に加え、ランバーサポートの上下調節も可能。さらに高さとランバーサポートは調整量も拡大され、体格を問わず最適な運転姿勢が取りやすくなった。

快適な座り心地で乗員をもてなすシート

ダイナミックな形状の前席シートは高密度ウレタンを新採用し、部位ごとに特性を最適化、ドライビングをサポートする。後席も同様に部位ごとに硬度の違うウレタンを採用しながら、背もたれの角度や高さを的確に設定することで、圧迫感のない座り心地を実現している。

注視せずに操作ができるエアコンダイヤル

エアコンはパネルを注視せずに操作できるよう、あえてダイヤル式を採用。回した際のクリック感は、数度のつくりなおしの末に決められた。温度調整ダイヤルを回すと、ダイヤル周辺が回した方向の色(青または赤)に光る。

多彩な情報をわかりやすく表示



右側の速度計はアナログ式で、中央のマルチファンクションディスプレイから左が7インチTFT液晶。パワーメーターの内側に、Honda SENSINGの作動状態やエコドライブ情報などを表示させることができる。

デザインと良好な視界を両立

インパネ上部からドアトリムを連続したデザインとすることで、適度な包まれ感を演出。カウル位置が低くなったため、周辺視界が良くなった。ドアミラーとAピラーの間には隙間が確保されており、死角を削減している。

印象的なヘッドライトは安全運転にも貢献



ヘッドランプにはLEDを採用。LED光源は9灯で、内側6灯がロービーム。ハイビーム時には、外側の3灯が上乗せされる。下側にはデイタイムランニングランプ(DRL)が配置されており、昼間の被視認性を向上。目尻にはコーナリングランプも装備されており、ヘッドランプ点灯時にはウィンカーを作動させるか、舵角が一定以上になるとコーナリングランプが点灯し、右左折時の視認性を高める。

ボディを強固に形づくるインナーフレーム構造

ボディ全体の骨格部材を組み立ててから外板パネルを溶接するインナーフレーム構造を採用。主要フレームの結合効率を高めることで補強部材を最小限にし、軽量で強固なボディ骨格を実現している。

高剛性・低振動フロア構造

床下骨格はオーソドックスな格子構造を採用。規則性のある構造の方が、剛性やNVのバランスが取りやすいのだそうだ。従来型よりクロスメンバーが1本増やされており、フロア剛性は大幅に向上している。

リヤバルクヘッド環状構造

リヤバルクヘッドまわりには、環状骨格構造を採用。上部骨格の断面を従来方式から反転させ、剛性バランスをチューニングしている。ロール荷重の伝達を、リヤサスのストローク方向に真っ直ぐ掛けるのが狙いだ。

構造用接着剤を大量導入

ボディ分野の高効率製造技術である構造用接着剤を総延長43mと広範囲に渡って採用。スポット溶接と組み合わせられるウエルドボンド工法によって主要骨格を接合し、板厚アップや補強材の追加を最小限に抑えながら、ドライブフィールを向上。

高張力鋼板を適所に採用

ホワイトボディのハイテン化率は約49%。これまでは440MPa 級以上をカウントしていたが、新型は590MPa級以上をカウントした数値だ。780MPa級以上の使用率が約30%に達していることにも注目。

高度なプレス技術を駆使した形状

トランクリッドの後端はスポイラー形状となっているが、これを絞り成形で実現。これだけ深い絞りは世界的にも類を見ない。形状についても「スポイラーを後付けすると、空力はむしろ悪くなるのでは」と自信を見せる。

フロアアンダーカバーで揚力を抑制

アンダーフロアの形状に合わせて樹脂製や不織布製のカバーを配置してアンダーフロアをフラット化。車体下部を流れる流速を向上することで揚力を低減し、中高速域での走行安定性が高められている。

新たな空力手法も投入

フロントバンパーの左右にタイヤハウスと繋がったスリットを設けて空気を通過させ、タイヤ周辺の風の流れを改善することで空気抵抗を低減。レーシングカーの空力手法を市販車に取り込んだ技術だ。

シャッターグリルで空気抵抗を低減

オープン状態
クローズ状態


エンジン低負荷域ではシャッターを閉じてエンジンルーム内を通過する風を減少し、空気抵抗を低減。エンジンやミッション、エアコンなどの冷却の必要に応じてシャッターを開け、外気を導入する。

遮音性の高い発泡式ウレタンフォームを採用

全ピラーの下端とルーフレール両端の10ヵ所には、遮音性が極めて高いスプレー式の発泡式ウレタンフォームを採用。発泡材をピラー内部で発泡・硬化させることで隅々まで行き渡らせ、車室内へのノイズの侵入を抑制している。

3マイクタイプのアクティブノイズコントロールを搭載

電気的に騒音を低減するアクティブノイズコントロール(ANC)は進化継承。オーディオのスピーカーから、車内騒音とは逆位相の音を出し、ノイズをキャンセルするシステムだ。従来型では、車内の騒音をセンシングするマイクは前後の2ヵ所だったが、新型ではさらに、運転席の窓側にも設置。左右方向でも騒音を拾うことで、より精度の高い相殺制御ができるようになった。

ノイズの侵入経路を徹底的に対策

優れた静粛性を軽量に実現するため、ノイズの侵入経路が基本から見直された。右図の説明にあるウレタンフォームに加え、エンジンルームからの騒音やロードノイズを低減する防音材が適材適所に配置され、重量増を最小限に抑えながら静かな室内空間を構築している。

消音装置付きのホイールを採用

タイヤ内部の気柱共鳴音対策には、ノイズリデューシングホイールで対応する。リムのセンター部に、樹脂製のレゾネーター(共鳴消音器)を設けたもので、ホンダ車ではレジェンドなどで実績のある技術だ。

サス性能と荷室の容量を向上

新型はコイルスプリングとダンパーを別軸として、低い位置に配置。コイルスプリングがなくなって径方向に余裕のできたダンパーは、タイヤ側に寄せると同時に、アッパーマウントも小径化してトランク容量を増大させた。

シーンに応じて特性を変更できるダンパー

アダプティブダンパーの減衰力制御モードは、「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」の3種類から選べる。変化するのは減衰力制御だけでなく、パワーユニットやパワーステアリング、アジャイルハンドリングアシスト(後述)やASC(後述)など、計5項目がそれぞれ専用の制御となる。

入力が分離されたフロントサス

従来型は、フロントアクスルより前に構造物が多いのに対し、新型では大幅に少なくなっている。2ヵ所あるブッシュは役割分担を明確化。前側でコーナリングフォースを支持し、後側でコンプライアンス量を確保する。

リヤサスも各部で役割を分担

リヤサスも各アームとブッシュの役割分担を明確化。前後力をトレーリングアームに負担させることでロワアームの負担を減らし、サブフレームの前後スパンを縮小。これによってIPUの搭載スペースが稼ぎ出されている。

優れた応答性とリニアなフィールのデュアルピニオンアシストEPS

回転力を直線方向の動きに変換するピニオンを、ステアリングホイール軸とラック端の2ヵ所に設けることでラックギアの支持剛性を向上。切り始めの軽くスムーズな応答性と操舵量に応じたリニアなフィールを両立した。

操舵量に応じて最適な切れ角を提供

ステアリングの操作量に応じて最適なタイヤ切れ角を提供するVGR(可変ステアリングギアレシオ)を採用。センター付近はスロー、据え切り近くの大舵角時はクイックなレシオとすることで、高速走行時での車線変更など小舵角時は安定し、走りと車庫入れなどの大舵角時は取り回しを容易にする。

リニアに減速度が増加する特性

従来型はファーストバイトが強めで、低速域のコントロールがやりにくかったが、新型は常用域で扱いやすく、踏んだ分だけリニアに減速度が立ち上がるようファインチューニングすることで、全速度域でのコントロール性を向上させた。

常用域でのハンドリング性能を向上する

旋回時にヨー応答と収斂を補助するアジャイルハンドリングアシスト。コーナー進入時にイン側前輪のブレーキを掛けてヨー運動を励起し、アンダーステアを抑制。立ち上がり時には外輪側のブレーキを掛け、直進に戻るのを早める。

最新の先進安全装備を搭載

先進運転支援システムの「Honda SENSING」には、ミリ波レーダーと単眼カメラを使用する2センサー方式を採用する。シビックやN-WGNに採用されているものと同じで、単眼ワイドカメラで対応するFITとは違うシステムだ。

後側方のブラインドスポットインフォメーションも装備。リヤバンパーコーナーに設置されたミリ波レーダーで後方の併走車両を検出すると、ドアミラーのインジケーターを点灯させて注意を喚起。それに気付かずドライバーがそちら方向にウインカーを操作すると、インジケーターの点滅とブザー音で警報を発する。

エアバッグは合計7つを装備する。サイドカーテンエアバッグは面積が広く、後席の頭部までカバー。ドライバーの足元には、ニーエアバッグも装備する。これは脚部の傷害を低減するだけでなく、ドライバーの姿勢崩れを抑えて運転席用エアバッグの性能を最大化する機能も持っている。

歩行者保護機能としては、ポップアップ式のボンネットフードを装備する。フロントバンパーに着けられたGセンサーで、歩行者との衝突を検知し、火薬式のアクチュエーターを作動させてボンネットの後端を持ち上げ、衝撃吸収スペースを拡大する装置で、低いフードによる伸びやかなデザインと、歩行者保護性能をより高い次元で両立させるための装備だ。

3種のモードで駆動する

e:HEVシステムは3種類の駆動モードを使い分ける。青いラインがEV走行時とエネルギー回生時の流れ、緑色のzラインがHV走行時の流れ、赤いラインがエンジン直結クラッチ締結時の駆動力伝達の流れを示す。

冷却性能の向上で重希土類フリー化を実現

耐熱性向上のために添加していた重希土類を廃止する代わりに、冷却性能を向上。軽量化のために中空化していたモーターシャフトの内部にもATFを流し、遠心力を利用してローター内部の磁石を冷却する。

IPUを大幅に小型化

IPUは大幅なコンパクト化を実施。12V変換するDC-DCコンバーターをエンジンルームに移動したことで、前後長を大幅に短縮。冷却頻度の高いDC-DCコンバーターがなくなったことで、空冷系もシンプルになった。

荷室と室内空間を犠牲にしない

IPUは後席クッションの前寄りに搭載。前後長を短縮したことで、レッグスペースと容量48ℓの燃料タンク搭載スペースも確保する。高さ方向の寸法も抑えて座骨部分のクッション厚も十分に確保し、座り心地も向上させた。

熱効率は世界最高レベル

型式名称はCR-Vハイブリッドと同じLFB型だが、新型アコード用にはさらなる改良を追加。耐ノック性を向上させて、圧縮比を13.0から13.5へと高めた。熱効率40.6%は、ポート噴射エンジンとしては世界最高レベルだ。

原動機型式:LFB-H4


排気量(㏄):1993


種類・気筒数:直列4気筒


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):81.0×96.7


最高出力(kW[㎰]/rpm):107[145]/6200


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):175[17.8]/3500


使用燃料:レギュラー


モーター最高出力(kW[㎰]/rpm):135[184]/5000-6000


モーター最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):315[32.1]/0-2000

オイル掻きあげによる抵抗を低減

オイルパン内に装着される二次バランサーシャフトは、バランスウェイト形状を改良。エンジンオイルを掻いた際に、オイルを横方向に逃がす形状として、油同士がぶつかり合うことによって発生する抵抗を低減している。

小型化のキーポイント

リチウムイオン電池のセル数は従来と同じ72個だが、モジュール構成を変更。従来は18セルを1モジュールとして左右に分割していたのに対し、36セルを1モジュールとして左右をつなげ、幅方向を約90㎜短縮している。

EGR量の増大には高流動タンブルポートで対応

EGR率増大による燃焼の不安定化には、吸気ポートの高タンブル形状で対応を行なう。下側を凹形状としてバルブ上面に吸気を集め、流れの指向性を向上。常用域でのタンブル比を約25%向上させている。

高流量EGRシステムを採用

EGRはバルブと通路を改良して流量をアップ。流路径をφ21㎜拡大すると同時に、屈曲部をなだらかにし、無駄な容積を削減している。EGRクーラーへの入り口も直線化し、圧力損失の低減を図った。

進化型の加工技術でフリクションを低減

ホーニングに使用する砥石(中砥と仕上げ砥)の番手を最適化することで、必要な油溝を確保しながら表面粗さを低減。エンジン内部で最もロスの大きいピストンとシリンダー壁間のフリクション低減を図った。

排熱回収でシステム効率を向上

ハイブリッドシステムはエンジンを頻繁に停止するため、冷却水温が上がりにくい。寒冷時に暖機に時間が掛かると、過濃混合気で運転する時間が長くなるし、エンジンオイルの粘度も下がりにくいため、燃費に影響を与える。また、ヒーターの熱源は冷却水だから、それを確保するためにエンジンを回す必要も生じる。そこで排気管の途中に小さなラジエターを設け、排気ガスの温度を利用して冷却水温を高める排気熱回収器が付けられている。

吸排気バルブでノッキングを改善

吸気側には燃焼室側を鏡面研磨したバルブを採用する。鍛造肌を鏡面研磨することで表面積を減らし、蓄熱量を低減するのが狙い。熱負荷の高い排気側にはナトリウム封入式を採用し、常用域で0.9度の点火進角を稼いだ。

エンジン振動に起因するゴロゴロ音を低減

クランクシャフトが曲げ変形することによるゴロゴロ音を低減するため、剛性を約33%向上。ジャーナルを太くするとフリクションが増えるため、ウェブ裏に肉盛りをして対策を行なっている。

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