ルネサス エレクトロニクスのミリ波ソリューションのポートフォリオに、衛星通信(Satcom)、レーダおよびフェーズドアレイ用途向けのICファミリ2種が新たに加わる。新製品となる「F65xx」送信アクティブビームフォーミングICと、「F692x」低ノイズアンプ(LNA)は、低消費電力、高ゲイン、さらにコンパクトさを兼ね備えた新たなソリューションだ。これにより、衛星と通信する地上ターミナルや航空機、船舶のほか、レーダシステムやフェーズドアレイに使用されるアンテナのパフォーマンスを大きく高める。
F65xxおよびF692xは、大型の機械走査アンテナから軽量で薄型のアクティブ電子走査アレイアンテナ(AESA)に移行する際に、設計者が直面する熱や小型化に対する課題を解決するものだ。これらのファミリは、Ku帯、Ka帯、およびCDL(Common Data Link)の周波数帯における衛星通信、レーダ、および2地点間(Point-to-Point)通信用途に対応する。
ルネサスのインダストリアル・コミュニケーション事業部RF Communications 担当Vice President のNaveen Yanduru氏は次のように述べている。「機械式アンテナからAESAに移行するお客様は、EIRPやG/Tの要件を満たす低消費電力とノイズ性能を兼ね備えた、信頼性が高くコンパクトで費用効果の高いICを求めています。ルネサスの新たなICファミリは、飛行機内でのライブビデオ会議やユビキタスなグローバルブロードバンド接続、また全天候型レーダによる自律航行機やドローンの状況認識などの新たな機能を実現するでしょう」
次世代の8チャネルTxアクティブビームフォーミングICであるF6521(Ku)、F6522(Ka)、およびF6513(CDL)は、平面フェーズドアレイアンテナの厳しい実装要件を満たす省スペース性を提供しながら、高いパフォーマンスを実現する。これらは、Ku帯およびKa帯で運用される低/中地球軌道(LEO)衛星や静止軌道(GEO)衛星ネットワーク用の、地上の衛星通信ターミナルのEIRP(実効輻射電力)要件と放熱要件の両方を同時に満たすことができる。
さらに、より大容量のオンチップメモリと先進的なデジタルモードを高解像度の位相および利得と組み合わせることで、精度の高いビームパターンと偏光制御、迅速なビームステアリングを可能にしている。新たなICは、第1世代のデバイスと同サイズのため、ボードを再設計する時間を最小限にしながら第2世代のチップへ移行可能だ。
送信アクティブビームフォーミングIC「F65xx」の主な特長
・コンパクトなBGAパッケージで、物理的サイズは2.2mm2/ch未満
・2.3V単一電源により、電源設計を簡素化
・高効率動作により、100mW/ch未満の消費電力を実現(RF出力は10dBm/ch超)
・ビーム更新時間100ナノ秒未満の高速ビームステアリング
・標準1.8Vデジタルロジック互換のデジタル制御
・卓越した利得/フェーズ直交性、および低いRMSフェーズエラーと利得エラー
低ノイズアンプ(LNA)「F692x」の特長
新たなデュアルチャネルLNAであるF6921(Ku)、F6922(Ka)、F6923(CDL)は、卓越した低消費電力、低ノイズ、高利得、およびコンパクトなサイズの組み合わせにより、アンテナアレイG/T(性能指数)を最大化する一方、アンテナ径の物理的サイズを最小化することで、全体的な消費電力とシステムコストを低く抑える。これらのLNAはわずか15~20mWの消費電力で19dBの利得を実現する。また2つの高度にアイソレートされ、かつ利得/位相が整合されたRFチャネルを、1つのBGAパッケージで50オームのシングルエンドRF入力/出力に収めている。
なお、F65xxおよびF692x ICの評価用キットと量産前サンプルは、2020年4月より条件を満たすユーザ向けに供給を開始する。