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ボルボS60の使い勝手を徹底チェック!


新型S60はスタイルで選びたくなるほど美しいセダンだ。しかし、だからといって実用性が犠牲になっているかと言えば決してそうではない。先進的なコックピット環境、快適な居住性、実用的な収納スペース、そして広い荷室。いずれも高い次元の使いやすさを備えている。




REPORT●工藤 貴宏(KUDO Takahiro)


ASSISTANT●益田 アンナ(ANNA Masuda)


PHOTO●中野 幸次(NAKANO Koji)




※本稿は2020年1月発売の「ボルボS60のすべて」に掲載されたものを転載したものです。

メイン取材車プロフィール S60 T5 インスペクション


ボディカラー:フュージョンレッドメタリック


インテリアカラー:チャコール&チャコール


シートカラー:チャコール


シート:パーフォレーテッド・ファインナッパレザー


オプション:メタリックペイント、プラス・パッケージ(チルトアップ機構付き電動パノラマ・ガラス・サンルーフ/ステアリングホイール・ヒーター/リア・シートヒーター/テイラード・ダッシュボード〔人工皮革仕上げ〕/ 19インチ・5ダブルスポークアルミホイール8.0J×19ダイヤモンドカット/ブラック)




※撮影には別の車両も使用しています

〈運転席〉大画面タッチパネル&音声入力は直感的に扱えるインターフェイス

従来はロータリー式だったライトスイッチだが、新世代になりレバー式に変わった。非視認性を高める意味からオートライトでの点灯タイミングは早い。
現行世代ボルボはなんと、ワイパー作動モードの上下位置まで刷新。先代S60など従来世代と逆方向になっているのだ。しかしすぐに慣れる。


左側はクルーズコントロール操作系。ひと押しで作動開始するのが便利だ。ハンドル操作を補助するし、渋滞時の停止保持もおこなう。
メーター内の表示切り替えと音声入力開始ボタンを組み合わせる右側のステアリングスイッチ。車両機能に加え、接続したスマホも音声操作可能だ。


ルームミラーは洗練された雰囲気のフレームレス構造。外寸に対して鏡の面積が広いという実用面のメリットもある。
「Inscription」にはヘッドアップディスプレイを搭載。速度や標識情報の表示に加え、ナビ案内中は簡易的な道案内も示す。


すべてのグレードともにメーターはフル液晶で、サイズは12.3インチ。左右にタコメーター/スピードメーターを置き、その中心にシフトポジションとデジタル速度計を表示する。中央に表示切替可能なエリアを組み合わせていて、その表示メニューは任意に選べる。



中央部分にはナビ画面(ルート案内中は交差点案内や高速分岐案内も表示)のほか各種注意喚起、オーディオ、そして操作説明やショートカットメニューなどさまざまな情報を表示してドライバーに伝えてくれる。

シフトレバー後方に走行系のスイッチ/ダイヤルが集められている。前方から順に、凝ったデザインのスターターダイヤル、ドライブモード切り替えダイヤル、そして電動パーキングブレーキ&ホールドモードスイッチだ。ホールドモードはペダルから足を離しても停止状態を保持する機能。

シフトレバーはストレート式で、前進用のレンジは「D」のみ。任意のギヤを選ぶ際は、そこからレバーを左へ倒すとマニュアルモードとなり、レバーを前後に倒してシフトアップ/ダウンできる。

アクセルペダルはいわゆるオルガン式。支点を下側とすることで、足の角度が自然で踏み続けても疲れにくいのだ。フットレストとともにサイズが大きく、幅広い体形のドライバーにフィットするように配慮しつつ設計されていることが理解できる。

Glass
Contrast


Performance
Chrome rings


4のモードから任意に選べるメーター表示を展開。それぞれの違いは色、文字盤外周のリング、文字盤の表示方法(指針orグラフ状)のデザインなど。

〈シート&居住性〉大きなシートが体を包み込んでくれる

シートはひとクラス上の90シリーズと同様の贅沢な構造。最上の快適性とスリムなデザインの両立を目指して設計されている。運転席の電動調整は全車に採用し,「Inscription」ではより細かい調整機能やベンチレーションも搭載。

着座位置はセダンらしい低さで、SUVは一線を画する運転感覚。座り心地はかつてのボルボよりも硬めだが、身体全体を包み込む感覚はしっかりと受け継がれている。

運転席のシートポジションはドアミラーまで連携し2パターンを保存可能。ドアノブの脇にあるスイッチは手が届きやすく、目視もしやすい。

身長の高い人にうれしいのが、座面の長さを延長する「電動クッション・エクステンション」。「Inscription」に組み込まれ、電動調整式。

電動調整スイッチは座面脇に設置され、シートの形をしているので直感的に動かせる。前方にある丸いスイッチはランバーサポート調整。

シートは座面の前後長が長く、背もたれを高くした設計が快適性を重視したボルボの伝統であり美学を継承。座る部分が抉ってあり、左右方向のホールド性は良好。さらにお尻を沈めることで前後方向にも身体がずれにくい。結果として着座中に姿勢が乱れるのを防ぎつつ包み込まれる感覚もある着座感だ。シートヒーターもオプションで用意。

ドアを開けた瞬間に実感できるほど足元が広いことは一目瞭然。(旧世代モデルではあるが)車体がひとまわり大きなV70よりも広いといえば、その広さが理解できるだろう。そのうえヒール段差(床と座面の段差)を高くしているので乗車姿勢が適正かつ、クーペテイストのスタイルながら頭上クリアランスも申し分ない。ただ、左右席間の床にあるトンネル(ふくらみ)は大きい。

普段は後方視界のために低く収まっている中央席のヘッドレストだが、後突時の安全性のため、中央に人が座る際はここまで上がる。

後席左右に内蔵する「ISOFIX」チャイルドシート取り付けバーは、カバーを空けると口が広くてしっかりと金具が見える作り。取り付けやすさは抜群だ。

センターアームレストは幅広設計で、左右幅は265㎜もある。上部にトレーがふたつ、前方にドリンクホルダーを内蔵する多機能。

乗り込む際は低い座面に沈み込むように座るスタイルとなる。昨今のトレンドであるSUVに比べると乗り降りの際の身体の動きは大きい。

Cピラーを寝かせたフォルムの割には開口上部も広め。足元は、Bピラーから座面前端までの間隔が広いことで足先の出し入れもスムーズにできるのが印象的だ。

「Inscription」にはマッサージ機能も搭載。身体に刺激を与えることで緊張状態を緩和し、座り続けた際の疲労を軽減してくれる。

シートヒーターや表面を換気してムレを防ぐベンチレーション機能も「Inscription」に採用。センターディスプレイで操作する。

背もたれのサイドサポートを電動で調整可能。ゆったりめから締め気味まで、シートのホールド性やタイト感までも体格や好みに応じ変更できる。

〈パワーチャイルドロック〉運転席から遠隔操作できる仕掛けだ。子供を乗せている時に内側からドア(と窓)が開かないようにロックし、降りるときには手元でロックを解除でき

〈助手席エアバッグキャンセラー〉助手席エアバッグの作動を任意にオフにできるスイッチ。作動を止めれば助手席にもチャイルドシートが装着でき、子供を横に座らせてのドライブが可能になる。

〈バニティミラー〉運転席/助手席のサンバイザー裏には全グレードともにバニティミラーが組み込まれる。ミラー脇には、高級車らしくリッドの開閉に連動して点灯するライトも内蔵。

〈非接触式キー〉携帯するだけでドアアンロックやエンジン始動ができる非接触式キー。まるでアクセサリーのようなデザイン性で、「Inscription」はシートと同じ革を張って仕上げられる。

〈パニラマ・ガラス・サンルーフ〉2枚のガラスで構成するからガラス面積が広いのが自慢。前方はチルトのほか写真のようにアウタースライドが可能だ。

〈キャップレス給油口〉キャップがなく、リッドを開けるだけで給油できるからセルフ給油でのわずらわしさを軽減。キャップの閉め忘れがないのも大きなメリットだ。

〈インフォテイメント&空調〉多機能ディスプレイに機能を集約

画面下にあるボタンを押すとホーム画面に戻るのもスマホ感覚だ。それぞれの項目をタッチしたり、左右の画面に切り替え、詳細メニューに移行していく。

S60に組み込まれた数多くある車両機能の作動や設定を管理する。自動駐車/発車機能を使ったり、ESCをスポーツモードに入れることもできる。

アプリを追加して機能を増やしたり、アイコンの位置を移動できるのもスマホと同じ感覚だ。もちろんCar PlayやAndroid Autoにも対応。

平均燃費やその過去履歴も表示。この車両の平均燃費は400㎞弱を走って10.2㎞/ℓと、燃費が悪化しがちな撮影時であることを考えれば良好だ。

内蔵している電子取扱説明書は、キーワードで検索できるから紙の説明書よりも便利に扱える。グラフィックもわかりやすいのは言うまでもない。

地図を画面いっぱいに広げることができる。9インチと大画面なので見やすく、縦長なのでヘッディングアップとしたときに前方の状況がよくわかる。

目的地検索は画面タッチや音声入力のほか、画面をパッドとして使っての手書き入力もおこなえる。日本語に対応しているから安心。

エアコンの作動状況は画面の一番下に常時表示(ナビ画面最大時を除く)。もちろんマニュアルで細かくエアコンの作動を調整可能だ。

画面下にある温度設定の数字に触れると設定温度を切り替える表示に切り替わる。さらに「あつい」と言えば温度が下がる音声入力にも対応。

センターディスプレイの下にはオーディオのコントローラーが組み込まれる。ダイヤル式のボリューム調整が使いやすい。

日本仕様に用意されるオーディオは3タイプ。「ハイパフォーマンスオーディオ」を「Momentum」に、「haman/kardon」を「Inscription」に標準装備する。オプションとして最高峰の「Bowers&Wilkins」も用意され、パワフルなアンプと15個のスピーカーが生み出す音の深みと響きは走るまさにオーディオルームだ。

「T5 Inscription」は前席左右と後席左右の4つにキャビンを分けてそれぞれ温度を設定できる4ゾーン式。後席の吹き出し口はセンターコンソール後部とBピラーに用意する。

「T5 Inscription」は前席左右と後席左右の4つにキャビンを分けてそれぞれ温度を設定できる4ゾーン式。後席の吹き出し口はセンターコンソール後部とBピラーに用意する。

〈室内の収納スペース〉ポイントを抑え洗練された収納の数々

サッとカードを挟めるクリップ式のカードホルダーをサンバイザー裏に用意。シンプルで使いやすい。

Aピラーのチケットホルダーはボルボ伝統ともいえるアイデア。駐車券を挟むのに最適な、独自アイテムだ。

グローブボックスは内部に取扱説明書も収まるトレーがあり、最上部にはETCユニットを設置。エアコンの風を導いて保冷ボックスとしても使える。リッドはキーロック可能だ。

センターコンソール前側の収納スペースは前後に分けて開くシャッターが備わり、写真のようにシャッターを閉めてもトレーとして使える。

CDケースが入るサイズのセンターコンソールボックスを備える。「T4」や「T5」系のモデルは後方にCDプレーヤーを搭載。

シャッターを開くと多機能なことに驚く。前方にトレー(キーが置ける)が2カ所、後方にはドリンクホルダーを用意する。

センターコンソールボックス内にはUSB端子が2個組み込まれる。ひとつは充電だけでなく車両との通信にも使う。

リヤドアのハンドルにも小物を置ける。大きさはフロントと同じで、ガラケーサイズ。

輸入車では珍しく、ドアハンドルは底が設けられて小物を置ける形状。これはフロント。

フロントに比べると容量は小さいが、とはいえあると便利なリヤドアポケット。

フロントドアポケットは大きなサイズで作られているから収納量が高く、実用的だ。

助手席足元(センターコンソール側面)に張ったネットは、コンパクトデジカメなど厚みのある小物もしっかりホールドできるのが便利。

シートバックポケットはネット。入れたものが一目瞭然で、小物もしっかり保持してくれるのがうれしい。忘れ物防止にも一役買う。

後席センターアームレストは多機能で、前方からドリンクホルダーが登場する。後方のリッド付きトレーはテーブルとしても活用できる。

ラゲッジスペース

トランクリッド裏にある赤い箱は、非常時に使う三角表示板。トランク床下に仕舞うのと違い、荷物が満載でもサッと取り出せるように考えられている。

トランクリッドにはキーのイラストが描かれたボタンが備わる。このボタンを押してからリッドを閉じると、すべてのドアがロックされる便利機能だ。

後席使用時の床面の奥行は1020㎜ 。左右幅はホイールハウス間で1050㎜、その後方(写真手前側)のもっとも広い部分で1360㎜確保する。天地高は約500㎜。

釣竿などを載せる際には、後席中央部(センターアームレスト部)だけを貫通させられる。開口部分は天地210㎜×左右175㎜ほど。

床の前方にスロープを付けることで、後席を倒すと床面に段差が生じない構造。運転席のポジションを身長168㎝の筆者に合わせた状態で奥行きは1935㎜。シートは左右60:40分割で倒せ、トランクスルー部分の開口幅は1035㎜ある。

シートを倒す時のロック解除はボタンでおこなう。荷室側には操作部がなく、リヤシートの助手席側背もたれにボタンを設置。左右それぞれ独立してロックを解除できる。

荷室の天井(リヤウインドウの下付近)にある独自の便利装備がフック。バッグや買い物袋を吊っておけば、荷室内で動いて中身が溢れるのを防げる。

トランクリッドを支えるアームの付け根付近にも小さなフックが備わる。上で紹介しているフックに比べるとサイズは小さく、軽いものを吊るのに限られる。

左側の壁にはネットポケットがあり、状況に応じてネットを下げて荷室幅を広げられる。取扱説明書一式が収まった車検証ケースも収納可能なサイズだ。

地上660㎜からガバッと開くトランクリッド。開口部は広く、ゴルフバッグのように大きな荷物の積み降ろしもしやすい。トランクリッドを支えるアームは、リッドを閉じた際にトリムの中に収納される仕掛けで荷室内に張り出さない。

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