2020年春以降に国内導入予定の新型KTM1290スーパーDUKE R。海外試乗会においてその実車に触れるとともに、開発陣に話を聞くことができた。
KTM 1290スーパーDUKE R
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オフロードで手に入れた数々の栄光
KTMというメーカーは言わずと知れたオフロード……。
いや。今現在はロードレース最高峰であるMotoGPクラスに、レッドブルをスポンサーにファクトリー参戦しているのだから、もしかするとバリバリのオンロードメーカーと思っている方も少なくないかもしれない。
しかし、そのルーツは完全にオフロードである。モトクロスやエンデューロ、特にシングルエンジンが得意であった印象が強いが、世界選手権、そしてAMAのスーパークロス制覇等、現在進行形でオフロードのトップブランドである。
80年代からダカールラリーにも積極的に参戦し、数々の栄冠を獲得。ビッグオフのジャンルでも不動の地位を築き上げた。
現在、レギュレーションの関係でダカールラリーは450㏄までのシングルエンジンでの戦いとなっているが、以前はツインエンジンのマシンも数多く参戦。KTMも2000年代にはVツインエンジンを投入し、そのレプリカモデルも発売されていた。(現在の1290スーパーアドベンチャーがその血統を伝承した最新モデルである)
LC8=リキッドクールド8バルブエンジン
そのエンジンがルーツとなるLC8と呼ばれるVツインエンジンを搭載したモデルがスーパーデュークである。ちなみにLC8とはリキッドクールド8バルブエンジンの略であり、シンプルに水冷8バルブエンジンといった意味となる。
先にリリースされていたシングルエンジンを搭載したDUKE同様、オフロードマシンとオンロードマシンのミックスといったイメージで、そのマシンの歴史はスタートしている。
しかし、990時代のスーパーデュークは実にスパルタンなマシンであった。ハードなサスペンション&車体設定にレスポンスの良すぎるエンジン。出力特性はトルクがないわけではなかったが、アクセルをオンの方向に回しているときのみ有効といったキャラクターで、低中速でアクセルを中途半端に開け閉めするような、日本での市街地走行等では非常にギクシャクして扱い辛かった。
反面、開けること。そしてしっかり荷重をかけることを前提とした走行ではReady To Raceを感じさせる割り切ったキャラクターで、マニアックではあるが、非常にエキサイティングで楽しいマシンとなっていた。
MotoGP譲りのテクノロジーが凝縮
そんなスーパーデュークが大きく変わったのが2014年発売の1290からである。
エンジンの排気量アップに加え、車体もデザインも全て刷新。パワーアップは当然ながら、コントロール性の高いフレンドリーなマシンとなっており、スペインで行われた発表試乗会に参加して非常に驚いた記憶がある。
そのことをあるエンジニアに言うと「ちょっと前まではオンロードのこと、よくわからなかったんだよね~」というまさかのコメント……。
2017年にはより熟成された2.0へと進化。そして2020年モデルの3.0では、大幅なイメージチェンジこそ行っていないものの、じつはフルモデルチェンジと言っても差し支えない改良が与えられている。
KTMの市販モデルは全て同胞のキスカデザインにてデザインされる。デザイン料が高いのか安いのかは聞くことが出来なかったが、あまりコロコロとスタイリングを変えないところが特徴でもある。
新型もキープコンセプトのイメージではあるが、その多くを改良している。外装パーツは全て刷新。それはデザイン変更という作業だけでなく、材料を薄くする等の細かい積み重ねにより軽量化を促進する。
タンクやフロント周りのデザインは高速域でダウンフォースを生み出す設計となっており、最新のMotoGP等で得られたノウハウも取り入られている。
熟成を重ねた新型エンジン
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