イギリスの公共放送局「BBC(英国放送協会)」を始め、複数の英国メディアが、130年以上の歴史を持つイギリスのバイクメーカー『ノートン(Norton)』が、税金滞納等により存続の危機にあると報道。ノートンは2008年、財政危機に陥ったが、見事に再建。その後も着実に業績を回復し、2019年には新工場の開設計画を発表したばかりだが……。一連の報道に加え、伝統の英国バイクメーカー「ノートン(Norton)」の人気モデルや、ヒストリーも併せてレポートします。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
破産申告?倒産?“走る高級品”ノートンのブランドは、今後どうなる……
別名・走る芸術品!ノートンが誇るカフェレーサー「コマンド― 961 カフェレーサー」をベースにした50周年記念モデル
☆主要スペック ※日本仕様車
【エンジン】
●エンジン形式:
EURO4 4ストロークOHV 2バルブ並列2気筒
油圧プッシュロッド式バルブアクチュエーター
ドライサンプ、 3ベアリングクランプ、 バランサーシャフト
●内径×行程 : 88mm×79mm
●排気量 : 961cc
●シリンダー数 : 2
●冷却方式 : 空冷/油冷
●最大出力 : 52.9kw / 7,500rpm
●最大トルク : 67Nm / 6,500rpm
●パワーウエイトレシオ : 0.22kw
●ガソリンタンク : 15 L
●始動方式 : セル
●サスペンション : 前後OHLINS
●ギアボックス : コンスタントメッシュ5速
●アドバンスブレーキシステム : ABS
●乾燥重量 : 236kg
●タイヤサイズ : F120/70×17インチ R180/55×17インチ
【車体サイズ】
●全長 : 2055mm
●全幅 : 680mm
●全高 : 1125mm
●ホイールベース : 1415mm
【主な特別装備】
●50th Anniversary ディテール
●オーリンズ フロント Roadholder フォーク
●カーボンフロントフェンダー
●バーエンドミラー
●カーボンフライスクリーン
●シリアルナンバー
【特別記念付属品】
●Nortonレーシングスタンド
●ショートタイプサイレンサー(公道使用不可)
●Norton ロゴ入りバイクカバー
車両本体価格:364万6500円(税込)
英国 Norton Motorcycles 日本正規輸入総代理店 ピーシーアイ株式会社 http://www.norton-motorcycles.jp/
イギリスのバイクメーカー「ノートン(Norton)」が3分で分かる!
栄光の130年をプレイバック【ノートン・ヒストリー 】
1898 年、ノートンはジェームズ・ランズダウン・ノートンによって設立。当初はバイクと自転車の部品を取り扱う会社だったが、数年後の1902年、フランスとスイスからエンジンを調達してバイクの製造に参入。1908 年には、自社製エンジンを搭載するバイクの生産をスタート。当時の単気筒サイドバルブエンジンは、1950 年代まで、バイクエンジンの主流として受け継がれていった。
1907年の「第1回マン島TTレース」では、レム・フォウラーが2気筒クラスを制覇。この時から、レース界では“ノートン伝説”がスタート。その後もブルックランドを始めとする欧州各地のレースを、次々に制覇。パフォーマンスと信頼性を誇る、本格派オンロードバイクとレースバイクのメーカーとして知名度を上げた。
1930年代半ばまで、ノートンは年間4000台近くのオンロードバイクと、レース用バイクを製造。マン島TTレースでは、通算10勝を挙げ、1930年から7年間に参戦したグランプリレースでは、92戦78勝の偉業を達成。
第二次世界大戦中は、レースから撤退し、オンロードバイクの製造に専念。英国陸軍用バイクの1/4近く(10万台以上)を供給した。
ノートンは「フェザーベッドフレーム」を開発。これは、マン島のコーナーをスムーズに曲がれるように設計された軽量で強靭なフレーム。1952年までライダーとして活躍したジェフ・デューク氏は、フェザーベッドフレーム採用車で、350cc&500ccクラスの世界タイトルを獲得。大英帝国勲章を受賞した。
1961年に開催されたアールズコートモーターショーでは、ノートンの代名詞ともいえる人気モデル「コマンド―」を発表。このモデルは、その後、10数年に渡って製造され、累計5万台を売り上げた。
1970年代、タバコ会社のジョン・プレイヤーから援助を受けてレースに参戦。また、「ノートンガールズ」キャンペーンを展開し、「コマンド―」でも成功を収めた。
しかし景気が後退し、価格が安くて壊れない外国車との競争が激化。ノートンを始め、イギリスのバイク産業は衰退の一途を辿り、1976 年には倒産寸前の状態に。「コマンド―」の製造も終了となった。
再びタバコ会社のジョン・プレイヤーの支援を受け、レース界への復帰を果たしたノートンは、1989年、スティーブ・スプレイ氏を擁して「英国スーパーバイク選手権」に参戦。オールブラックの「ノートン JPS」で見事勝利。同選手権では、1994年にも「ダッカムス・ノートン」に乗ったイアン・シンプソン氏が英国タイトルを獲得した。
1992年には、スティーブ・ヒスロップ氏の乗るオールホワイトの「ABUS ノートン」が、日本のヤマハを破り、マン島シニアTTを制覇。マン島レースでの英国製バイクによる勝利は、ほぼ30 年ぶりとなった。
米国の「ボンネヴィル・ソルトフラッツ」にて、ロータリーエンジン搭載の「NRV588」に乗った同社CEOのスチュアート・ガーナー氏により、ロータリーエンジン搭載バイクで最速180マイルの世界記録を樹立。
2012年には、新型のレース用モデル「SG1」で、20年ぶりに「マン島TTレース」の本戦に復帰した。