ハーレーダビッドソンを象徴するモデルのひとつがこれ。同社のフラッグシップだったFLH系の流れを継いでいる。今はツーリングにカテゴライズされているが、なんと7機種もの豊富なバリエーションを揃え、その中で最高峰に君臨する超プレミアムモデルである。 REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru) PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke) 取材協力●HARLEY-DAVIDSON JAPAN
ハーレーダビッドソン・ロードグライドリミテッド.......3,996,300円〜 2020年モデルでは新たにブラックフィニッシュタイプが受注生産オプションで登場。エンジン、マフラーやハンドル他の光り物部品をブラックアウト。
◼️11種もある豊富なカラーバリエーションはこちら!
現在同社のバリエーションは6種類あり、総勢34機種と豊富なバリエーションを誇っている。今回のロードグライドリミテッドはツーリング・カテゴリーの中で最高峰に位置している。価格も車重も400(万円&kg)レベルの超弩級プレミアムモデル。ウルトラリミテッドと同類ながら大型のシャークノーズフェアリングをフレームマウント。グランドツアラーとしての機能性を高めたゴージャスな1台である。 搭載エンジンはミルウォーキーエイト114とよばれる最新版。歴代Vツインの第9世代ユニットである。伝統の横置き空冷45度V型2気筒は1868cc。ボア・ストロークは102×114.3mmというロングストロークタイプ。ポート噴射の電子シーケンシャル燃料噴射を組み合わせたOHVの4バルブエンジンからは164Nmの最大トルクを3000rpmで発揮。 加減速時には、エンジンの駆動力に加えてブレーキも協調して電子制御される高度なトラクションコントロール等の機能を備えるREFLEXディフェンシングライダーシステム(RDRS)を装備。タイヤの空気圧モニタリングシステムが採用されている他、ブレーキも電子的に前後連動制御される等、最新の電子制御技術がフルに採用されている。 またインフォテイメントシステムも最新版を標準装備。様々な情報提供を可能とする車載装置でスマホと連携が図れる。ディスプレイはタッチパネル式でセットアップも容易。USBコードでスマホを連結すればグーグルナビ等が簡単に活用できる他、ジョイスティックやボイスコントロールで各種の操作ができる。ヘッドセットは有線式に加えて、ブルートゥース通信にも対応。 電話機能を始め、メッセージのやり取り、スマホに溜め込んだ音楽を聴く等が自由自在に楽しめるのである。 最初のセットアップ等、停車時はタッチパネルで簡単に扱える。走行中はハンドルスイッチで操作可能。さらに左手の発話スイッチをひと押しすれば音声での指示出しが可能。また同スイッチを長押しすれば電話機能が立ち上がる仕組みだ。 アメリカでは州をまたいででタンデムで長旅を楽しむスタイルがリタイヤ組成功者の証とされると聞くが、そんなグランドツーリング・シーンを快適にしてくれる最新機能の数々がフル装備された、まさに豪華なモデルなのである。
いかにも大陸育ちな揺るぎない乗り味が魅力 見るからの巨漢。ドッシリと重厚感たっぷりなフォルム。軸距等サイズ的にはそれより大きなホンダ・ゴールドウィングツアーと比較しても、ロードキングの方が大きくみえ、威風堂々の存在感は流石である。 シート高は735mmと低く、両足は地面にべったり着くので、特に不安は感じられないのだが、何もかもアメリカンサイズ。設計基準となるライダーの体格が大きい事は間違いなく、筆者にとってはギリギリな感じ。手に負えるのかどうかが不安になってくる。 例えば跨がってからサイドスタンドをハネ(戻す)ようと足を伸ばすと爪先まで目一杯伸ばしてもスタンドの先端にやっと届くレベルだった。しかもそれ以前の話、生半可な心構えでは車体を引き起こすことができなかった。我ながらビックリである。 ハンドルを真っ直ぐにして、渾身の力と勢いを使って“エイヤッ!”と左足を踏ん張ってようやく車体を立てることができた。どこか(身体)の筋肉が攣りそうな気配に、かなり無理していたことに気付く始末だ。 バイクの脇に立ち、先に車体を引き起こしてからスタンドをはね上げる手順にすれば良いのだが、跨がる時にうっかりシートに足を引っかけてしまった(グラッときた)時の事がフッと頭をよぎる。 あの巨漢がグラッときたら自分には絶対に支えきれない確かな“自信”があるだけに、そんなリスクを避けたい“不安”な気持ちが頭の隅に浮かんでしまうのである。 車重はナント400kgオーバー。そのスケール感は改めてドデカイ! でも一旦走り出してしまえば、超ド級の重量に対する不安は一気に消し飛んでしまう。むしろその重量感たっぷりな乗り味に魅了されてしまう事も請け合いである。 1.8Lもの排気量から絞り出されるトルクの太さもしかり。大船に乗ったような安定感とでも言おうか、安心して身を任せるに相応しい揺るぎない乗り味とそれに乗る気分は格別なものがあるからだ。 奏でられるVツインのハーモニーもそれと良く似合い自由を謳歌するひとときの、おおらかな気分を盛り上げてくれる。 ドリュルンドリュルンと回転速度に波があり900~1000rpmを繰り返すがアイドリングは安定している。バイクのエンジンでここまで低回転域の気持ちよさにこだわった出力特性は他に例は無いと言っても過言ではないだろう。クランクマスの重さも相まって、巨体を物ともせずに押し出す底力と図太いトルク感は本当に豊かである。 そのまま柔軟でゆっくりとした吹き上がりの中に、強かな加速力を発揮してしまう感覚がハーレーダビッドソンならでは。ここに惚れてしまのも頷ける。 そしてハンドリング面では、意外な程スィーッと軽く旋回できる軽快な操舵フィーリングにも驚かされた。 タイトターンでも車体がスムーズに傾いてくれ、バイクは素直に曲がっていく。バイクの傾きに伴い舵が切れ込んでくれる調教具合が絶妙である。巨体が倒れていく勢いが自然な感覚で緩和される。そのおかげで不安感も無く、車体の傾きと舵角が適度にバランスしてクルっと小さなUターンでも扱いやすさかった。 もっとも何より魅力的なのは、郊外や高速道路でクルージングするシーンである。全てに余裕綽々な雰囲気に包まれる。如何にもアメリカンな大陸的乗り味は、落ち着きはらった快適かつ贅沢な移動道具として、実に魅力的なのである。
⚫️足つき性チェック(ライダー身長168cm) シート高は735mmと低く、足つき性に問題はない。ご覧の通り両足はベッタリと地面を捉えることができる。
⚫️ディテール解説 モダンなフロントマスク。デュアルヘッドライトはLED式。ハンドル部までカバーするカウルとクリアスクリーンのマッチング。中間のエア導入ダクトにはシャッターが採用されていて、開閉できる。
堀の深いフロントフェンダー・デザインにもハーレーダビッドソンらしさが感じられる。ブロントブレーキは油圧ダブルディスクで、ブレンボ製キャリパーは対向4ピストンタイプだ。
ミルウォーキーエイト114エンジンを搭載。横置き45度Vツインで、114は排気量を表している。アメリカの表記でキュービックインチの事。馴染みの単位で表すと1868ccである。左右バンパーには大きなレッグシールドが装備されている。
車体両サイドの低い所でストレートに伸ばされたロングマフラーが、何ともドッシリと落ち着きある風格を醸し出している。
手前に絞り込まれたアップハンドルを装備。走行中の操舵フィーリングは驚くほど軽い。キーでロックすればイグニッションスイッチは固定できる。給油口直後にインカムや音声入力制御用ヘッドセット用のコネクターがある。もちろんブルートゥース接続にも対応している。
ハンドル左側スイッチはライトやホーン、左ウインカー等の基本操作を担う。その他、音声入力起動スイッチ。右下はクルーズコントロール。左下のジョイスティックは液晶ディスプレイ上で各種制御選択できる。グリップヒーターも標準装備。 基本的なシーソースイッチは左右対称デザイン。ハザード、エンジンキルスイッチ。始動用スタータースイッチ。そして右用ウインカースイッチやオーディオコントロールがある。
ゴージャスな丸型4蓮メーターは全てアナログ表示。左上から燃料計、速度計、回転計、電圧計だ。液晶ディスプレイの上は走行風を導入できる吹き出し口で、ちょうど顔に心地よい風があたる。寒ければシャットアウトもできる。
スピードメーターより上の特等席にセットされたカラー液晶ディスプレイ。インフォテーメントシステムが導入され、スマホとの連携もOK。アップルのCar Play にも対応しているので、グーグル等のナビゲーションも活用でる、しかもタッチパネルが採用されているので、扱いやすい。
スペースもクッション容量もタップリな豪華セパレートシート。鞍型の全席も良いが、サイドサポートの効いたシートバック装備の後席は座り心地は格別。
むしろ後席に着座して見たくなる。二人旅では大切なゲストの為の席。十分に寛いでもらうに相応しい贅沢で快適な乗り心地が楽しめる。 腰の両脇には前方に向けて大きなオーディオースピーカーが標準装備されている。左脇にはインカム用のコネクターも装備する。
大型のトップケースは左ヒンジで開く方式。ヘルメット2個を並べて入れても余裕タップリ。 右前方寄りの角には12Vのアクセサリー電源も装備されている。スマホの充電等、様々な用途に活用できる。
低い位置までカバーされる堀の深いリヤフェンダーを始め、左右パニアのデザインも基本的なイメージは古くからあまり変わっていない。
◼️主要諸元◼️ エンジン:Twin-Cooled™ Milwaukee-Eight®114 ボア・ストローク:102mm×114mm 排気量:1,868cc 圧縮比:10.5:1 フュエルシステム:電子シーケンシャルポートフュエルインジェクション(ESPFI) エキゾースト:クロームデュアルエキゾースト (4インチのツーリングマフラーとツーリングマフラーシールド付き) 全長:2,595mm シート高:735mm 最低地上高:130mm レイク(度):26 トレール:170mm ホイールベース:1,625mm フロントタイヤ:BW 130/70B-18 63H リアタイヤ:BW 180/55B-18 80H 燃料容量:22.7 L オイルタンク容量:4.7 L 出荷時重量:407kg 車両重量:423kg 最大トルク:164Nm /3,000rpm リーンアングル(右/左):31.9/ 31.8度 プライマリードライブ:チェーン ギヤ比 :34/46 総減速比(1速):9.593 総減速比(2速):6.650 総減速比(3速):4.938 総減速比(4速):4.000 総減速比(5速):3.407 総減速比(6速):2.875 ホイール(前/後):スライサーIIクリアーコートアルミキャスト/ スライサーIIクリアーコートアルミキャスト ブレーキ(前/後):対向4ピストンキャリパー/ 対向4ピストンキャリパー ◼️ライダープロフィール 元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナーの気持ちになった上での記事作成に努めている。