トヨタは、欧州市場に導入する新型コンパクトSUVの導入計画を発表した。ジャーナリストを集めたアムステルダムのイベントで新型コンパクトSUVのシルエットが示された。果たして、この新型コンパクトSUVとはどんなクルマになるのか?
欧州で年間10万台を売る(つもり)の新型コンパクトSUV
新型コンパクトSUVの名前、価格、導入などのタイミングについては、将来発表予定だ(To Be Announced)。新型コンパクトSUVは、GA-Bプラットフォームを採用する「ヤリス」と並んで、フランスのトヨタモーターマニュファクチャリングフランス(TMMF)で製造される。つまり、TNGAのGA-Bプラットフォームを採用するコンパクトSUVになるということだ。
柔軟性のあるGA-Bプラットフォームにより、長さ、幅、高さ、ホイールベースが異なる車両をサポートできるという。これは、つまり、「単なる背の高いヤリスではない」ということを示唆している。
トヨタ・モーター・ヨーロッパ エグゼクティブ・バイス・プレジデントのMatt Harrison氏は「完成したモデルを見るのに長く待つ必要はない」とコメントした。さらに、「このモデルはヨーロッパで成功するヤリスの販売台数に追加され、これらの車両が2025年までにヨーロッパでのトヨタ販売台数の約30%を占めるようになると予想される」とコメントしている。
トヨタの2019年欧州販売台数は108万9422台(レクサスを含む)。この30%となれば、約32万7000台ということになる。またレクサスを含めなければ約30万台ということになる。
現在のヤリスの販売台数が、ハイブリッドを含めて22万4368台だから、単純にいえばこの新コンパクトSUVでプラス10万台を狙うということになる。
ちなみに、欧州でのトヨタのSUVの販売台数は
C-HR:13万8906台
RAV4:13万9725台
ハイランダー:1658台
ランドクルーザー:4万4306台
ハイラックス:3万8179台
レクサスNX:2万4309台
レクサスUX:2万943台
レクサスRX:1万8657台
となっている。
新型コンパクトSUVは、新型ヤリスと同じくTNGAのGA-Bプラットフォームを使う。ヤリスのサイズは、
新型ヤリス
全長×全幅×全高:3940mm×1695mm×1500mm
ホイールベース:2550mm
である。といっても、新型コンパクトSUVのサイズがこのサイズ(で背が高い版)になるわけではない。
この図版にもあるように、ホイールベースもトレッド(つまり車幅)も拡大(あるいは縮小)することがTNGAの考え方では可能だからだ。
上から、トヨタ・ライズ、C-HR、RAV4、ランドクルーザーだ。
なぜ、RAV4とランドクルーザーの間には日本国内でいえばハリアーがあるのだが、ハリアーとランドクルーザーは2020年中のフルモデルチェンが噂されている。
というようなサイズ、パワートレーンとなっている。
では、新型コンパクトSUVをここに当てはめてみよう。
上から、ライズ、新型コンパクトSUV、C-HR、RAV4となる。
プラットフォームは
DNGA-A
TNGA GA-B
TNGA GA-C
TNGA GA-K
という並びだ。当たり前だが、新型コンパクトSUVは、ライズ以上、C-HR未満というサイズになる。
とうことで、こういうサイズだ。
ということで、一枚の画像を作ってみた。
一番上がトヨタGA-Bプラットフォーム、中が新型コンパクトSUV、そして一番下がVWのコンパクトSUV、T-クロスである。
VWブランドでもっとも小さなSUVがT-クロスだ。サイズは、
全長×全幅×全高:4115mm×1760mm×1580mm
ホイールベース:2550mm
である。
新型コンパクトSUVの直接のライバルは、おそらくこのVW T-クロスだろう。となれば、サイズも
ライズ
全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1620mm
ホイールベース:2525mm
と
C-HR
全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1550mm
ホイールベース:2640mm
のちょうど間である
全長×全幅×全高:4195mm×1760mm×1550mm
ホイールベース:2600mm
と予想する。ヤリスのホイールベースが2550mmでT-クロスと同寸だから2550mmのままでも問題ないが、せっかく拡張性のあるプラットフォームなのだから、そのアドバンテージを生かしてライバルより長く、そして高い居住性を与えるという作戦だ。
パワートレーンは、ヤリスと同じく1.5ℓダイナミックフォース直4DOHC+MT/Direct-shift CVTと1.5ℓ直4DOHC+THS2のハイブリッドの2種類を設定すると予想する。
新型ヤリスの欧州市場での発売はまだだから、欧州のWLTCの燃費およびCO2排出量は発表されていないが、95g/kmを下回れるだろう。つまり欧州のCAFE(企業別平均燃費基準)で多額のペナルティが課される95g/kmを楽々回避できる(しかも、現在はWTLCではなくNEDC燃費でいいからさらに楽なはず)わけだ。
冒頭の「欧州でのトヨタの販売台数の30%をヤリスと新型コンパクトSUVで占めるだろう」が現実のものとなれば、トヨタは現在でも優位にあるCAFEでさらにアドバンテージを得ることができる。
というようなことを想像して、この新型コンパクトSUVの登場を待とう。
登場は、おそらく3月のジュネーブ・モーターショーだろう。
この新型コンパクトSUVが日本国内に投入されるか? 現在のところは、可能性は薄い、と見る。
なぜなら、欧州にはトヨタ・ライズは投入されないが国内には現在大人気を博しているライズ/ロッキーがあるからだ。ライズと、これまた人気の高いC-HRの間にあえて新しいモデルを投入する理由がない。