トヨタが東京オートサロンで発表した「GRヤリス」。とにかく、エンジン、ボディ、シャシー、4WDシステムと見どころ満載の「怪物モデル」誕生で話題沸騰だ。その傍に「GRヤリスCVTコンセプト」なるクルマが展示してあった。これはなんだ?
PHOTO◎松井亜希彦(MATSUI Akihiko)
FF+ギヤ付きCVT、でもリヤはダブルウィッシュボーン
価格も含めて衝撃的だったGRヤリスの発表については、こちらの記事を参照してほしい。
東京オートサロンの会場でも常に人だかりができていて注目度の高さが窺えた。トヨタにとってセリカGT-FOUR以来のスポーツ4WDモデルということもあるが、そもそも生粋のスポーツ4WDモデルの系譜は、スバルWRXしか続いていないと言ってもいいのだから、注目されるのも当然だ。
車両価格396万円というのも車両の内容・仕様を考えるとバーゲンプライスである。
さて、そのGRヤリスの隣には、「GRヤリスCVTコンセプト」なるクルマが展示されていた。
これはなに?
というわけで、早速詳細を取材した。
まずCVTだ。GRヤリスの1.6ℓ直3ターボは272ps/370Nmという高出力を誇る。いまのトヨタ(アイシン)でこの大トルクに対応できるCVTはラインアップにない。
となるとエンジンはターボではなくNA(自然吸気)だ。つまり新型ヤリスが搭載するM15A-FKS型1.5ℓ直3DOHCエンジンだ。
スペックは
エンジン形式:1.5ℓ直列3気筒DOHC
エンジン型式:M15A-FKS型
排気量:1490cc
ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm
最高出力:120ps/6600rpm
最大トルク:145Nm/4800-5200rpm
である。オートサロン会場にいた説明員によると「発売するにしてもパワーアップはしない方向」だという。
組み合わせるCVTは、トヨタ&アイシンの手による画期的な「発進ギヤ付きCVT」であるDirect-shift CVT(アイシンでは
AWFCW21)である。トルク容量は215Nmだ。
では、ボディ&シャシーは? 会場でクルマの下回りを覗き込んでみた。プロペラシャフトは存在しなかった。つまりFFである。一方でリヤサスペンションは、GRヤリスと同じく、ダブルウィッシュボーン式を使っていた。
つまり、まとめると
・GRヤリスには、1.6ℓ直3ターボ(272ps/370Nm)+GR-FOURと呼ぶ新しい4WDシステム+6速MTのモデル
・そしてGRヤリスCVTコンセプトという、1.5ℓ直3NA(120ps/145Nm)+FF+Direct-shift CVTのモデル
の2種類が存在するということだ。
GRヤリスCVTコンセプトは、コンセプトだから必ずしも市販されるとは限らないが、市販の可能性は極めて高そうだ。
GRヤリスの生産は、トヨタが元町工場内に新たに立ち上げる「GRファクトリー」で行なわれる。多品種少量生産に適した生産方式を採るというから、同じボディでエンジン、トランスミッションなどが異なる派生モデル(別グレード)を効率的に生産できるのだろう。
このGRヤリスCVTコンセプト、本命のGRヤリスの「廉価版」という位置づけになるのか、と言えば、必ずしもそうとは言えないだろう。
GRヤリスと同じ専用プラットフォーム(フロントがGA-B、リヤがGA-Cベースでサスペンションをダブルウィッシュボーンとした)で、より軽量なクルマ。パワフルではないが、気軽に使い切れるパワー。新開発のギヤ付きCVT。コンパクトで素晴らしく楽しい2ペダルコンパクトスポーツカーの要素満載だ。
GRヤリスの車重が1280kg。
ヤリス1.5ℓFF+CVT(Xグレード)の車重が990kg
GRヤリスの半分以下のパワーだが、車重で200kg以上軽いとなれば、また別の世界が拓けてくる。CVTのモデルが作れるなら、MTの可能性もあるだろう。新しいFFライトウェイトスポーツ誕生の予感がする。
ちなみに、ヤリス1.5ℓFF+CVT(Xグレード)の価格は159万8000円だ。GRヤリスCVTコンセプトの市販モデルがスズキ・スイフトスポーツ(ベースグレードのATモデル)の194万1500円と同じような価格、200万円前後で登場すれば、このカテゴリーが活性化するのは間違いない。
楽しみに市販化を待ちたい。