1月10日より千葉県の幕張メッセで開幕した「東京オートサロン2020」の中4ホールにあるHonda/無限ブースでは、2月発売予定の新型「フィット」と、昨年10月にマイナーチェンジされた「フリード」をベースとした、ホンダアクセスのコンプリートカー「モデューロXコンセプト(2020)」が展示されている。そのチューニングメニューはいつも通り……のようでいて、少なからず違っていた。
PHOTO&REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
今回参考出品された「フィットモデューロXコンセプト」および「フリードモデューロXコンセプト2020」と、従来のモデューロXとで外観上の変化が最も分かりやすいのは、「X」の字を象ったフロントマスクだろう。
これまでは「X」の字となる部分をブラックアウトしていたが、新型フィットおよびフリードでは逆に「X」の字の周辺をブラックアウトするようになった。
これは、両者の内外装デザインを担当したホンダアクセスの小島孝デザインPLによれば、新型N-WGN以降のホンダ車のデザインコンセプトがシンプルな方向に変化したのに合わせてのことだという。
そして、風の流れを積極的にハンドリングに活かす、ホンダアクセス流の“実効空力”においては、フロントバンパー両端にカナードを追加したことが、新たな取り組みのひとつに挙げられる。
モデューロXでは従来より、フロントバンパー正面の空気をボディ側面へと効率良く流す形状を追求していた。今回さらに、カナードの追加により、舵角が当たりフロントタイヤがホイールハウスの外側に張り出した際もタイヤに風が当たらず、かつフロントホイールハウス内の乱流がボディ側面を流れる風によって吸い出されるよう縦渦を発生させることで、直進安定性をより一層高めている。
カナードの形状・サイズ・位置はホンダアクセスの流儀に則り、テストドライバーのみならず開発エンジニアやデザイナーをも巻き込んだ、度重なる実走テストを通じて導き出されたもの。実際に小島PLもカナードの有無によるハンドリングの違いをテストコースで体感しており、特に新型フィットについては「完全にピンポイントで形状・サイズ・位置がテストドライバーから指定された」のだという。
フリードモデューロXコンセプト2020ではさらに、ボディ下面の整流板を、従来の細身のフィンを切るタイプから太く長いボックス状に変更。整流の効果がフロアのより後方まで持続するよう工夫している。
フィットモデューロXコンセプトでは、リヤスポイラーの張り出しをごくわずかに大型化。これは単体販売される純正用品とも異なるモデューロX専用形状で、「あまり大きくしすぎるとかえって空力バランスが崩れるので、車両全体でのトータルバランスを見てこの形状に決めた」のだそうだ。
そのほか、モデューロXの定番チューニングメニューといえば、サスペンション、ホイール、インテリアになるが、フィットではよりスポーティなサスペンションセッティングが与えられるとともに、ホイールは剛性バランスのみならず軽さも追求したものになる模様。
インテリアには両者とも、残念ながらヴェゼルモデューロXのようなセミバケットシートは与えられていない。だが全席のシート中央にスエード(調)の表皮が与えられ、その極めて高い旋回性能を堪能しても身体が滑りにくいよう配慮されている。
最終的にGOサインが出されない限り発売時期は決まらないというモデューロXの通例に従い、両車とも発売時期は未定とされている。だが、コンセプトモデルが出品されるということはすでに完成は近く、1年以内に発売される可能性は高い。特にフィットは、ノーマル自体がまだ発売されていないことを考えると、異例の早さでモデューロX追加ということになりそうだ。