フレーム単体まで全バラにして修復作業を行ったラビットは、製造から50年以上もの歳月を感じさせないほどキレイに甦ってくれた。そこで役所に申請してナンバーを交付してもらい、路上に繰り出してみた。はてさて、50年以上も前の鉄スクーターはまともに走ってくれるのだろうか?
まずはナンバープレートを取得
フレーム単体で塗装を施し、クランクシャフトまでオーバーホールしたエンジンと組み合わせる。フロントサスペンションを組み付けると、ラビットは再び自立してくれた。この後は板金塗装が終わった外装パネルを元に戻せばラビットは復活する。今回筆者が行った作業で困ったのは、新品部品が入手難であること。たまたま同型用の純正ハーネスが手に入ったので、古いバイクの鬼門である電装系のトラブルは未然に防げたと思う。ともあれ、我がラビットは復活した。早速、役所へ行ってナンバーを交付してもらおう。
走り出すためにバッテリーを新調
調子を取り戻したラビットを走らせるには、まずバッテリーを用意しなければならない。古いバイクなので6Vなのかと思うが、実は12V仕様。面白いのは6Vバッテリーを2つ並列に繋いで12Vにしている点だ。指定バッテリーはパーツリストによると「6V-11AH」というもの。品番で検索すると確かに存在するし現在でも購入可能。ただし、その値段は安価なはずのネット通販でも2万円を超える。うむむ、高い……
ということで別の方法を検索すると、ラビットのバッテリー置き場にジャストなサイズで、かつ12Vバッテリー1つにしてしまう方法が見つかる。これだとばかりにバッテリーを探すと、台湾ユアサで製造している「YTX7L-BS」がちょうどいいらしい。これならネット通販で4000円以内。納得である。
恐る恐るバッテリーをコードに繋ぎ、セルスイッチを押す。するとセルダイナモ特有の静かな回転音とともにエンジンは目覚めてくれた。灯火類も正常に作動している。これでまともに路上へ繰り出せるというもの。
ところでこのバッテリー、フレームに固定するため純正でゴムバンドを採用している。ラビットを手に入れた時点でそんなバンドなくなっている。というわけで、フレームにあるフック状の場所に収まる割りピンと市販のゴムを組み合わせてバンドを自作している。
ヘッドライトに悩みあり!
走り出すと、とても遅い。125ccクラスとしてはダントツに遅く、今の路上では50ccの原付でも遅い部類に入るくらいの出足の悪さ。ということで流れの速い幹線道路では後のクルマが強引に抜いていくことも多いので、注意が必要。だが、一度速度が乗ってしまうとソコソコに加速する。だから幹線道路でも走行中は普通にクルマの流れに乗っていける。これはトルコン仕様のためで、3速モデルならもう少しマシだろう。
気になるのは「何キロくらい出るの?」だろう。明確に記すことは控えるが、法定速度を数割超えるくらいは出る。だから実用上不便だと感じるのは信号スタートくらい。そして特筆できるのが直進安定性の高さと乗り心地の良さだ。ラビットは大柄な車体のほとんどが鉄でできているので重い。そのため加速や出足が悪いのだが、ホイールベースが長いので直進性に優れている。これは最高速近く出しても不安を感じないくらい素晴らしいもので、基本設計の良さを感じられるところ。
そして特筆すべきもうひとつは、乗り心地の良さ。ホンワカしたクッション性を備えているので、路面状態の良い道を走っていると快適そのもの。路面が荒れているとガタピシいうのだが、それでもソフトな足回りは変わらない。またシートがブ厚いのでお尻が痛くならないことも美点。全バラにしたラビットだがシートだけは手に入れた時のまま。それなのに、だ。ブ厚いので足つき性を悪くしているのだが、そんなことよりお尻が痛くならないことを評価したい。乗り手に優しいバイクがラビットなのだ。