ホンダの新型フィットがいよいよ来年2月に発売になる。フィットの原点に戻ったようなナチュラルで良質なベーシックカーとなった新型。技術的にも見るべき点は多いが、まずはテストコースでのファースト・インプレッションをお届けする。
柴犬フィット:大ヒットの予感がする
ホンダの新型フィットは、フィットとして4代目となるモデルだ。10月の東京モーターショーでお披露目されたので、実物を目にした人も多いだろう。
新型フィットは、当初は年内11月の発売予定だったが、来年2月に延期した。オランダのシャシー・ブレーキ・インターナショナル(CBI)社から供給を受けるはずの電動パーキングブレーキ(EPB)の部品に不具合があったからだ。
このCBI製のEPBは、ホンダN-WGNにも使っていたが、こちらもこの不具合問題で生産を一時中止(来年1月再開予定)している。N-WGNも新型フィットも、CBIからコンチネンタルに供給元を変更している。このCBI製のEPBは、フランス系メーカーの新型Bセグカーにも使われているというから、問題はなかなか複雑だ。
CBI社は、今年、日立オートモティブ社による買収が発表されている。また、日立オートモティブ社はホンダ系サプライヤーのケーヒン、ショーワ、日信工業との経営統合を発表しているから、やや皮肉な感じがしなくもない。
現行フィットも、発売当初、デュアルクラッチに関連するトラブルがあった。新型もスタート前に残念なニュースとなってしまった。
前置きが長くなってしまった。
とはいえ、新型フィット、ヒットの予感がする。
9月にテストコースで開催されたメディア向け試乗会で、新型フィットに短時間だが試乗できる機会があったのだ。そこで見て、聞いて、乗った感触では、「新型、イケそうじゃん!」である。詳細なスペックも価格も未発表な時点で、「これは売れそうだ!」と勝手に言うのもなんだが、「第一印象すこぶる良し」だった。
新型フィットで、開発陣が強調していたのは、「用の美」「心地よい体験」「日常で使える機能」である。室内の広さも、ミリ単位で数字を追うのではなく、本当に使える、そして心地良い空間とはなにか、を追求したという。
全長は3995mm(CROSSTAR除く)で、4m以下を守ったし、伝統のセンタータンクレイアウトも踏襲。使いやすくて心地よい室内空間を作り上げた。
外観のデザインは、「柴犬」をイメージしたという。デザイナーは「新型フィットを柴犬のような存在にしたかった。形が柴犬というわけではない。自分を守ってくれるときもある、一緒にいて楽しい、長くともにいてまるで家族のような愛情が持てる。単なる道具ではなくて、相棒のような存在にしたかった」と語っていた。
果たして、外観はそう見えるか? 実物を目にして触れてみると、デザイナーの意図を自然に感じた。3代目(現行)モデルが、やや煩雑でロボットアニメ風だったのに対して、新型はあくまでもナチュラル。大ヒットした初代のテイストを受け継いだように見える。よりアクティブなユーザーには、少し車高を上げ、クロスオーバー風のデザインを与えた「CROSSTAR(クロスター)」を用意した。
新型フィットは、「HOME」と呼ばれるグレードを中心に、ユーザーの価値観に合わせてバリエーションを展開しているのも新しい。
BASIC/HOME/NESS(FIT NESSで続けて読むとフィットネスとなる)/LUXEというグレード展開となり、CORSSTARが追加となるグレード構成だ。
パワートレーンは、2種類。1.3ℓ直4DOHCと1.5ℓ直4DOHCのエンジンは現行型から基本的にキャリーオーバーする。注目は、1.5ℓエンジンと組み合わせるハイブリッドシステムだ。
現行フィットではスポーツグレードとして設定されていた「RS」は新型では用意されない。現行フィットRSは、1.5ℓ直4DOHC(L15B型)132ps/155Nm+6MT/CVTだった。新型でも1.3ℓ直3ターボ(1.0 VTEC TURBO)搭載グレードを検討したというが、見送られた経緯がある。これも新型フィットのキャラクターに影響を与えることになるだろう。
ホンダの切り札i-MMDを大幅小型化
現行フィットは、1モーター+7速DCTの「i-DCD」を使っていたが、新型はアコードやインサイトなどが使う2モーターのハイブリッドシステム「i-MMD」を採用した。つまり、新型フィットは
1.3ℓ直4DOHC+CVT
1.5ℓ直4+i-MMD(これを新たに「e:HEV」を名付けた)
のふたつのパワートレーンが用意される。
1.3ℓはベーシック、上級モデルはe:HEVとなる。
e:HEVは、発電用/駆動用の2モーターで、バッテリー容量が十分ならEV走行、バッテリーが減るとエンジンを使って発電用モーターで発電、その電力でモーター駆動するシリーズハイブリッドに、高速走行でエンジンでタイヤを直接駆動するモードを加えたシステムだ。
個人的には、トヨタのTHS2と並んで現在世界最高のハイブリッドシステムだと考えているi-MMDがBセグのフィットに搭載されるとは嬉しい驚きだ。
アコードやインサイトのようなより大型で上級のクルマ用だったi-MMDをフィットに載せるには、大幅なサイズダウンとコストダウンも必要だ。新型フィットに載せられたというのは、ホンダ技術陣の開発能力の高さと新型フィットにかける想いの賜物だろう。
新型フィットのプラットフォームは現行型のキャリーオーバーだ。とはいえ、だからと言って手を抜いた部分はない。
i-MMD採用と並んで、新型フィットのハイライトは、極細Aピラーによる広々とした視界と新開発のシートだ。
極細Aピラーについては、こちらを参照していただきたい。
シートについては、別にレポートする予定だ、
新型フィットの試乗は、ホンダの鷹栖プルービンググラウンドで行なわれた。ごく短時間の試乗だから断定的なことはまったく言えないが、コックピットに収まった第一印象は、「現行型より明らかに上質。極細Aピラーによる視界の拡大は安全性の向上だけでなく居心地の良さに好影響を与えている。新開発のシートは、座ってすぐにわかるほど明らかにいい」というものだった。
走り出してからも、i-MMDらしいモーター駆動の滑らかさを味わうことができた。高速周回路では、モーター駆動ではなくエンジン直結となってより効率的に走れる。とはいえ、走行モードの切り替えをドライバーが感じることない。
テストコース故に路面がいいから、NV性能を云々できないが、現行型も同時に乗ることができたので、現行型に対するNV性能のアドバンテージも感じられた。
フットワークは、ステアリング操作に対する一体感が増していた。ヒラリヒラリという軽い感じよりも4輪が踏ん張ったしっかりした乗り味になったとでも言おうか。トレッドが広がったような感じ、とでも言おうか。
乗り心地は、サスペンションの支持部の剛性アップと低フリクション化を徹底した効果で、突き上げ感が大幅に低減している。このあたりは正式デビュー後の公道試乗で確かめたい。
価格については、未発表だが一部報道によると、1.3ℓモデルで3万円程度、ハイブリッドで19万円程度新型の方が高いという。ほぼ同時期にデビューするトヨタ・ヤリスが直接のライバルになる。価格、燃費性能、先進運転支援、コネクティビティなど競争の範囲は、現行フィットvs現行ヴィッツと比べものにならないほど広くなっている。
性能向上が著しい軽自動車も横目で見ながら、「ベーシックなコンパクトカーはどうあるべきか」を真剣に考えて開発された新型フィットが、どう受け入れられるか注目だ。
筆者としては、現行型を上回るヒット作になる、と予想しておく。