2020年に発売予定のEVハイパーカー「ピニンファリーナ・バッティスタ」が日本で初披露された。ピニンファリーナと言えば、フェラーリをはじめとした世界中の美しいスーパーカーのデザインを手掛けてきたことで知られる。そんな名門カロッツェリアが、ついにゼロエミッションビークルの世界に足を踏み入れたのだ。日本でのローンチイベントには、元F1ドライバーにしてバッティスタのチーフ開発ドライバーでもあるニック・ハイドフェルトも姿を現した。
元F1ドライバーが開発したEVハイパーカーの真打ち
2019年3月のジュネーブ・モーターショーでベールを脱いだピニンファリーナ・バッティスタが日本に上陸した。名門カロッツェリアとして知られるピニンファリーナが手掛け、その創業者であるバッティスタ・ピニン・ファリーナの名を冠したEVハイパーカーである。
モーターは最高出力1900ps(!)と2300Nm(!)を発生し、4輪を駆動する。最高速度は350km/h以上、0-100km/h加速に要する時間はF1よりも短い2.0秒以下(!)、そして0-300km/h加速は12.0秒以下(!!!!)だという。
この0-300km/h加速の12秒という数字、多くの人は何がどう凄いのかピンとこないだろう。参考になるかどうかわからないが、国内のチューニング界を例に挙げてみよう。90年代「最高速を追い求めるのは、リスクも高いからもうやめよう」ということになり、パフォーマンスを計る指標が0-300km/h加速に以降しつつあった。当時は「40秒を切れば、そりゃあもう怖いくらい超速」という認識だった。ほどなくして、トップクラスの有名チューナーが20秒台で争うようになっていった。
まさに隔世の感あり、といったところだ。
バッテリーはクロアチアのリマッチ・オートモビル社製で、センタートンネルとシート後部にT字型に置かれ、120kWhで航続距離はWLTPモードで500kmをターゲットとしている。
だがバッティスタの魅力は、その超絶パフォーマンスだけではない。
なんといっても、名門カロッツェリアが手掛けただけあって、エレガントでラグジュアリーな内外装のデザインが最大の魅力だ。
「子供の頃から、かっこいいクルマにはいつも『ピニンファリーナ』のバッジがついていた」と語るのは、元F1ドライバーにしてバッティスタのチーフ開発ドライバーを務めているニック・ハイドフェルトだ。
「そんな憧れのカロッツェリアとともに仕事をするのは大変光栄なことだった」
「サーキットでの実走テストや風洞実験も重ね、自分の考える理想的な公道スポーツカーに仕上がったと思う」
ただ、ハイドフェルトは現役時代から愛車のポルシェ911でニュルブルクリンク・ノルトシュライフェを攻めたり、ドリフト大会に出ていたほどのカーガイである。壇上での“公式”コメントではなく、本音を聞いてみたかったので、イベントが終わった後に声を掛けてみた。
記者「本当にEVが好きなんですか?」
ニック「もちろんさ。確かに内燃機関はパワーが盛り上がる感覚もサウンドも最高だ。でも、いまのハイパーカーに求められる性能は、もはやEVでなければ得られない。内燃機関よりも、EVのほうがハイパフォーマンスを得やすい時代になってしまったんだよ」
記者「速さはともかく、ドライビングプレジャーは内燃機関が上ですよね?」
ニック「キミは日産リーフに乗ったことはあるかい? あれ、最高に楽しいだろ? デザインは最悪だけどさ(笑)。EVの最大の武器は、4輪のトルク配分を緻密に行えることにある。旋回性能を高めることはもちろん、セッティングも思いのままだ。当然バッティスタも4輪すべてでトルクベクタリングを行っている。もちろん自分が求められているのは、まずは絶対的な速さを引き出すことだけれど、このクルマを手に入れたドライバーにも楽しんでもらえるものに仕上がっている自信はあるよ」
バッティスタのデリバリー開始は2020年の10月を目指しており、欧州での価格は200万ユーロ(約2億4000万円)とされている。生産台数は世界限定150台だ。ステアリングを握る可能性は限りなく低いかも知れないが、ハイドフェルトの仕立てたハイパフォーマンスとプレジャーを両立させた走りを体験してみたいものである。