アルファロメオ初のSUVであるステルヴィオ。この名前がイタリア北部にあるステルヴィオ峠から付けられたのは周知の事実だ。屈指のドライビングロードとして知られるこのステルヴィオ峠を、塩見 智がステルヴィオで疾走する。
REPORT●塩見 智(SHIOMI Satoshi)
PHOTO●FCA
※本記事は『GENROQ』2019年10月号の記事を再編集・再構成したものです。
アルプスは欧州を南北に分断する山脈だ。西端のフランスからスイス、イタリアをまたいで東端のオーストリアまで、いくつもの山群が連なっている。イタリア北西部のスイスとの国境に近い地域に、クルマ好きなら一度は耳にしたことがあるであろうステルヴィオ峠がある。標高2760m。舗装された峠道としてはアルプスで2番目に高い。
2018年夏に日本導入されたアルファロメオ・ステルヴィオの車名はこの峠に由来する。要するに彼らは「SUVでありながらアルプス最高峰の峠道を車名にするにふさわしい性能のクルマだ」と言いたいのだ。
発売直後に日本で試したステルヴィオは確かにSUVとは思えないハンドリングだった。まずクイック。操作中に手を持ち替える必要がほとんどない。それを実現するために重心が低く抑えられている。さらに足まわりが、ロールはすれどもそのスピードが入念にチェックされ、大きな舵角を与えても車体が不快に揺さぶられることがない。走らせて楽しいSUVなのは間違いない。
しかしなぜこんな風にしつけたのか、イマイチわからなかった。スポーティなブランドのSUVとして恥ずかしくない挙動を与えたいのだろうということはなんとなく想像できたのだが、具体的にどこをどういう風に走らせるべきSUVなのか、イメージすることができなかった。
それが今回ステルヴィオ峠を走らせて合点がいった。ここは短い直線とヘアピンの連続で、単純に走らせて気持ち良い区間というわけではなく、どちらかというとうまく走らせるのが難しいチャレンジングな区間だ。コーナーを抜ける度、今のはうまくいった、今のはぎくしゃくしたと、自賛と自省をひたすら繰り返す修行のような峠だ。それだけにスムーズに通過できた際の喜びは大きい。
つまり彼らはスムーズに走らせるのが難しいとされる地元の峠を痛快に走らせることができるSUVという目標を“自分たちらしさ”の表現として掲げたのではないだろうか。
連中は本心ではSUVを造りたかったわけではないと思う。けれども昔から親方フィアットに命じられたら、彼らに断る選択肢はない。今では命じるのがFCAという大陸をまたいだ企業になっただけで、図式は同じだ。どうせ造るなら自分たちらしいものにしようと、ステルヴィオ峠をこれまで自分たちが造ってきたクルマと同じように走り抜けられるハンドリングのSUVを開発したに違いない。
ところで、アルファロメオの最新コンセプトカーの車名は「トナーレ」。ステルヴィオ峠からほど近い峠の名前なのだ。もしかして峠の名を車名にするのが単に彼らのブームなのか!?
そうではないことを祈りたい。
【SPECIFICATIONS】アルファロメオ・ステルヴィオ2.2ターボディーゼルQ4
ボディサイズ:全長4690×全幅1905×全高1680㎜
ホイールベース:2820㎜
■車両重量:1820㎏
■エンジン:直列4気筒DOHCターボディーゼル
総排気量:2142㏄
最高出力:154kW(210㎰)/3500rpm
最大トルク:470Nm(47.9㎏m)/1750rpm
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:RWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ&Ⓡ235/60R18(9J)
■環境性能 燃料消費率(WLTC):16.0㎞/ℓ
■車両価格:617万円