スポーツサルーンの基準ともいえるBMW3シリーズに待望のクリーンディーゼルモデルが登場した。スポーツとディーゼルの融合はどのような世界を提供するのか?
REPORT●吉岡卓朗(YOSHIOKA Takuro)
PHOTO●山本佳吾(YAMAMOTO Keigo)
※本記事は『GENROQ』2019年10月号の記事を再編集・再構成したものです。
今年日本に上陸した新型BMW3シリーズ、G20型のラインナップに、最も売れ筋となるだろうディーゼルグレードが導入された。実際の販売比率はもちろん異なるが、筆者周辺の自動車メディア関係者が購入した先代3シリーズは8割がディーゼルエンジンモデルだった。しかも新型320dはxドライブ、つまりAWDである。個人的には大トルクのディーゼルとAWDという組み合わせは大好物で、許されるならどこまでも走って行きたい衝動にかられたが、ぐっとこらえて試乗に繰り出した。
320d xドライブにはスタンダードとMスポーツがあるが、今回試乗したのは後者だ。スポーツシートや18インチホイール(スタンダードは16インチ)が備わり、LEDフォグランプが内蔵されるスポーティなエアロバンパーが装備される。Mの香りを味わおうとワインディングも高速道路も手加減なく飛ばしたが、やはり1750rpmから400Nmという大トルクを発生する2ℓ直4ディーゼルターボは気持ちいい。しかもAWDだ。今回は雨や滑りやすい路面に遭遇しなかったが、ワインディングのタイトコーナーで鋭く加速しても、4輪がバランス良く蹴り出すばかりで、ほどよいトルクとたしかなトラクションを感じた。ただし高速道路を巡航中に前走車をさっと追い越そうとする場面で、やや加速の頭打ちが感じられたのは、やはりディーゼルであった。
だが、いったん車速が乗ればコーナリングは軽快そのもの。Mスポーツに装備されるバリアブル・スポーツ・ステアリングによって、ロック・トゥ・ロックは2.25回転とクイックだ。これはワインディングはもちろん、市街地でも取り回しが楽だったことを付け加えておこう。
混雑した高速道路で有用なACCは、他社に先駆け、この夏からハンズオフ機能の実装を発表しており、自動運転の覇権争いで一歩抜きん出たように見える。試乗車はまだステアリングから手を離すと10秒ほどで警告が表示されたが、早くハンズオフ機能の実力を試してみたい。
そんなこんなを楽しみつつ、ついつい800㎞あまりを走ってしまった。総合燃費は16㎞/ℓだったが、100㎞/h時の燃費は20㎞/ℓで1タンク(59ℓ)1000㎞は余裕でこなせる実力を持っている。ちなみにギヤ比の関係で100㎞/h時の回転数は1800rpmと、先代と較べて400rpmほど高かった。
価格は320d xドライブMスポーツが629万円。スタンダードの320d xドライブ(578万円)に対して約50万円高となる。ガソリンエンジンの320iと比較しても50万円高いがディーゼルでAWDと考えれば、今回もやはり玄人筋に受けるのは自明である。
【SPECIFICATIONS】BMW 320d xDrive M Sport
■ボディサイズ:全長4715×全幅1825×全高1450㎜
ホイールベース:2850㎜
■車両重量:1680㎏
■エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルツインターボ
総排気量:1995㏄
最高出力:140kW(190㎰)/4000rpm
最大トルク:400Nm(40.8㎏m)/1750~2500rpm
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ225/45R18(7.5J) Ⓡ255/40R18(8.5J)
■車両本体価格:629万円