
マツダが「人馬一体」と表現する、ドライバーの意のままに操れる運動性能。その理念はマツダのすべての車種に息づいているが、代表作はやはりロードスターだろう。軽量ボディ+2シーター+オープン+後輪駆動というピュアスポーツカーのお手本のようなスタイルを守り続けるロードスターだが、初代から継承されるもうひとつの隠れた伝統がある。それが「パワープラントフレーム」だ。

もうひとつの隠れた伝統
マツダ・ロードスターの伝統的スタイルと聞いて、何を思い浮かべるだろうか? 軽量コンパクトなオープンボディ、フロントエンジン+リヤホイールドライブ、2シーター……といったところか? MTが必ずラインナップされている点を挙げる人も多いかも知れない。
だがもうひとつ、初代から必ず採用され続けているものがある。
それがパワープラントフレーム───略してPPFとも呼ばれるものだ。

これはトランスミッションとリヤデフをアルミニウム製のフレームで直結することで、アクセルのオンオフによるデフの捩れるような動きを抑え、ダイレクトなドライブフィールを実現するもの。
初代「NA型」の開発時に主査の貴島孝雄氏が考案したもので、二代目「NB型」、三代目「NC型」、そして現行四代目「ND型」まで、アップデートされながら採用され続けている。

シンプルながら効果絶大のすばらしいアイデアだが、エンジン&トランスミッションとリヤデフを同時に持ち上げてボディに固定しなければならないため、生産現場での手間とコストは通常よりもはるかにかかってしまうらしい。
それでもパワープラントフレームを採用し続けるところにマツダのこだわりを感じさせられる。
ちなみにこのパワープラントフレームは、RX-7(FD型)とRX-8にも採用されていた。



外から見てもわからないし、随分と地味なパーツのように思われるかも知れない。
ただし、前述のように生産工程で大きな手間が掛かってしまうにもかかわらず採用され続けているということは、つまり効果は絶大ということだ。しかも30年も前に考案されたものが基本的構造をほぼ変えずに現在まで継承されているということも、いかにこのアイデアが優れていたかを如実に表している。
ロードスターの人馬一体感の隠し味として、知っていて損はないだろう。
