アウディの上級セダン/ワゴンであるA6。新型A6は、C8型と呼ばれる5代目である。アウディ得意のクワトロシステムに先進装備満載。そのアバント(ワゴン)にジャーナリスト、世良耕太が試乗した。TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
乗り味には感銘を受けた。試乗車は複数のオプションを装着していたが、そのうちのひとつはドライビングパッケージ(380,000円)で、ダイナミックオールホイールステアリングとダイナミックステアリング、それにダンピングコントロールサスペンションがセットで装着される。
ダイナミックステアリングは可変制御のステアリングシステムで、ダイナミックオールホイールステアリングは後輪操舵を含む4輪操舵のことである。後輪は60km/h以下では逆相に最大5度、60km/hを超える速度域では同相に最大1.5度切れる。後輪の操舵と前輪操舵のレシオ可変は統合的に制御される。ダンピングコントロールサスペンションはダンパーの減衰力を可変する機能で、操舵にともなって車両姿勢が変化すれば、その変化に追従することになる。
摩擦円の限界付近をなぞるような領域を試す機会はなく、極低速で交差点を曲がったり、高速道路で車線変更を行ったりする日常的なシーンの走りでは、スムーズさばかりが際立った。裏を返せば、大転舵時もレーンチェンジ時も違和感とは無縁。ひたすら取り回しはしやすく、動きは安定している。
A6はA8と同様に48Vマイルドハイブリッドを搭載している。ベルト駆動式オルタネーター(BAS)とリチウムイオン電池の組み合わせだ。BASでエンジン再始動を行なうためか、アイドリングストップからの復帰は俊敏かつ静かで、もたつきはない。先代A6は8速ステップAT(ティプトロニック)を搭載していたが、新型A6は7速DCT(Sトロニック)を搭載する。発進〜微低速ではDCTのクセでギクシャクしてもよさそうなものだが、制御は見事でスムーズそのものだ。スムーズさを意識した制御にすると、ときとしてそれが逆効果になる場合があるが、ダルではなく、ダイレクト感は失っていない。
形式:3.0ℓV型6気筒DOHCターボ
型式:DLZ
排気量:2994cc
ボア×ストローク:84.5×89.0mm
圧縮比:11.2
最高出力:340ps(250kW)/5200-6400pm
最大トルク:500Nm/1370-4500rpm
4輪駆動システムを意味する「クワトロ」は、ブリスターフェンダーの引用元となったアウディ・クワトロのようなセンターデフを用いたフルタイム式ではなく、状況に応じて4WDに切り替えるオンデマンド式で、アクティブかパッシブかで分類すればアクティブ式になる。つまり、前輪のスリップを検知してから後輪に駆動力を伝えるのではなく、スリップしそうな状況を各種センサーの情報で事前に検知しておき、4WDになっていて欲しい状況では常に4WDになっているシステムだ。説明によれば、常に0.5秒先を読み、いざ必要となれば0.2秒でリヤに駆動力を配分することができるという。
燃費に対する要求の高まりが、不要なときはプロペラシャフトを回さない仕組みになびかせたのだろう。プロペラシャフトの前後それぞれにクラッチがあって通常は切れており、前輪駆動時はプロペラシャフトを回さないで走る。そのぶん、損失が低減する仕組みだ。試乗時は完全ドライだったし、日常ユース的なドライブに終始したため、クワトロの恩恵にあずかった実感はない。だが、ダイナミックオールホイールステアリングと同様、制御の介入を感じさせずに2WD↔4WDの切り替えが行なわれるだろうことは、A6と付き合っていれば想像がつく。
新型A6はドアを開けた瞬間から降りるまで、「いいクルマ」感に満ちていた。先進技術を押しつけがましく主張しないところがいい。
アウディA6 Avant 55 TFSI quattro
全長×全幅×全高:4950×1885×1465mm
ホイールベース:2925mm
サスペンション:F/Rダブルウィッシュボーン式
エンジン
形式:3.0ℓV型6気筒DOHCターボ
型式:DLZ
排気量:2994cc
ボア×ストローク:84.5×89.0mm
圧縮比:11.2
最高出力:340ps(250kW)/5200-6400pm
最大トルク:500Nm/1370-4500rpm
燃料:プレミアム
燃料タンク:73ℓ
燃費:JC08モード 12.3km/ℓ
トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
車両本体価格:1041万円
試乗車はオプション込みで1162万円