バッテリー容量を40kWhから62kWhへ大きく拡大したハイパフォーマンス版リーフ。バッテリー容量の拡大は、そのまま航続距離の延長につながる。もちろん、価格も上がる。それをどう考えるか? ジャーナリスト世良耕太が、e+(イープラス)という名の、リーフを試す。
TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
電気自動車の日産リーフにハイパフォーマンス版の「e+(イープラス)」が追加になったのは1月9日のことだ。11日からオーダーを取り始めると、注文が殺到したという(発売は23日)。リーフのハイパフォーマンス版が出ることは知られており、発表を待ち望んで販売店に足を運んだお客さんがほとんどだったという。
e+の特徴のひとつは、バッテリーの容量が大幅に増えたことだ。素のリーフが40kWhなのに対して、e+は62kWhで55%増である。では、販売店に足を運んだお客さんがみんなe+を選んだかというとそんなことはなく、1〜2月の試乗フェアでの受注内訳は、62kWhのe+が40%で、40kWh版が60%だったという(全体の6%はNISMOだ!)。
販売店で説明を受けつつ自分の使い方と照らし合わせてみた結果、「40kWhで十分」との判断に至った購入者が多かった。e+の登場は、選択肢を増やす効果をもたらしたことになる。スマホを購入する際と同じで、「512GBも選べるけど、128GBで十分でしょ。値段も違うし」といった状況だろう。40kWh版と62kWh版ではざっと50〜73万円の価格差がある。
62kWhの大容量バッテリーを得たことで、航続距離は大幅に伸びた。カタログの数字を見ると、JC08モードで570km、日本のWLTC(超高速モードを含まない)では458km、欧州WLTC(コンバインド)で推定385km、米国EPAでは推定最大364kmとなる。
リアルワールドでは、EPAの値が最も近い。参考までに記しておくと、満充電状態の試乗車は、482kmの航続可能距離をメーターに表示していた(エアコンはオフ)。別の試乗車でバッテリー残量が86%のときに確認したら、395kmだった(走り方によって数字は変動する)。エアコンをオンにしたら航続可能距離は342kmになった。
それでも300km台である。ちょっと走ると二桁の数字になって「大丈夫かなぁ」と不安になった24kWh時代を知る身としては、隔世の感がある。日産の販売点では、40kWh版に対するe+の魅力を「プラス100kmの安心感」と伝えているという。
e+の特徴は航続距離が伸びたことだけではない。モーターがパワフルになったのだ。40kWh版の最高出力は110kW(150ps)だったが、e+は160KW(218ps)である。試乗に際して日産からは、「40kWh版は50km/hを超えると加速Gが落ちるが、e+は70km/hまで引っ張ってそこから落ちる」との説明があった。
データ上では、80km/hから120km/hの中間加速で、e+は40kWh版に対して13%加速性能がアップしている。実際に走らせてみると、大人しい姿と強烈な加速のギャップに驚きを禁じ得ない。いとも簡単に、派手な動きやノイズをともなわず、シュイーンと加速する。あまりにもさりげなく強烈な加速を披露するので、遠慮することなく何度でも(バッテリー容量はたっぷりあるし)、全開加速を楽しみたくなる。
例えば高速道路の走行車線を走っていて前のクルマに詰まり、70km/hまで車速が落ちたとする。追い越し車線の車列が途切れた瞬間を狙って一気に加速して100km/hまで持っていこうと、アクセルペダルを全開にする。と、その直後、そうなったのがはっきりわかるくらいフロントが浮いて猛然と加速する。ステアリングが軽くなってどこに向かうかわからず不安、なんてことはなく、しっかりしている。
あっという間に100km/hだ。頼もしいし、病みつきになる。エンジンが載ったクルマなら、エンジンサウンド(聞きようによってはノイズ)の高まりをともない、まずは変速機の回転数を上げるのにエネルギーを使って加速に転じるのだが、バッテリーとモーターの組み合わせならそんなことはなく、間髪入れずに加速する。「プラス100kmの安心感」だけでなく、「プラス50kWの加速感」もe+の大きな魅力だ。
Specifications
日産リーフe+ G
全長×全幅×全高:4480×1790×15405mm ホイールベース:2700mm 車両重量:1670kg 定格出力:85kW 最高出力:160kW(218ps)/4600-5800rpm 最大トルク:340Nm/500-4000rpm 駆動用バッテリー総電力量:62kWh 駆動方式:FWD 価格:472万9320円