アウディA3のスポーツバージョンがS3。スポーツバージョンだが、最もスポーティなモデルには、「RS」が用意されている。A3以上RS3未満というのがS3の立ち位置か。ジャーナリスト世良耕太がS3を試乗する。
TEXT&PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
ハッチバックの実用性とスポーツカーの走りを両立させたのがアウディS3スポーツバックだ。実用性に重きを置くのか、それともスポーツカーの走りを重視するのかによって、このクルマに対する評価は分かれそうだ。
大人4人が窮屈な思いをせずに過ごせる。乗り降りがしやすい。小さな荷物から大きな荷物まで、難なく積み込むことができる。といった、主にディメンション由来の実用性に関しては申し分ない。A3スポーツバックと同等といっていいだろう。つまり、高い実力を備えているということだ。
では、スポーツカーの走りについてはどうか。現在、国内で購入可能なスポーツバックのラインアップは下記のとおりだ。
A3 1.4ℓ直4ターボ 90kW(122ps)/200Nm〜2.0ℓ直4ターボ 140kW(190ps)/320Nm 296万円〜433万円
S3 2.0ℓ直ターボ 213kW(290ps)/380Nm 615万円
RS3 2.5ℓ直5ターボ 294kW(400ps)/480Nm 762万円
しかし、高い運動性能に見合った見た目を備えているかと意見を求められた際は、議論になりそうだ。あまり派手に演出してしまってはRS3の領分を侵してしまうし、といって控え目にすぎるとA3より上であることを感じにくい。エクステリアでは、後ろに回り込んで4本出しのテールパイプを確認し、テールゲートにある専用バッジを認めなければ、S3であることを認識するのは難しい。
ポーカーの役でいえば、ロイヤルストレートフラッシュ、つまり最強なのがRS3。ストレートフラッシュな点(つまり強い役)ではRS3と同じだが、S3はエースと10、それに絵札は含まれていない。人によってはA、2、3、4、5がそろった最弱の手に感じてしまうかもしれない。強いんだけど弱い。微妙な立ち位置にあるのがS3だ。
逆に、視覚上の控え目な演出を好意的に捉える人もいるだろう。さりげないのがいいんだと。レーシーな雰囲気を醸し出すフラットボトムのステアリングホイールこそS3の専用装備と言いたいところだが、形状自体はA3と共通で、S3は左右のグリップにディンプル処理を施し、ボトムにS3のバッジをあしらっている。加えて、明るい色の糸で縫っているため、ステッチが目立つ。
アウディS3スポーツバック
■ボディ寸法
全長×全幅×全高:4335×1785×1440mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1520kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット/R4リンク
駆動方式:AWD
■エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボ
排気量:1984cc
ボア×ストローク:82.5×92.8mm
圧縮比:9.6
最高出力:290ps213kW)/5400-6500rpm
最大トルク:380Nm/1850-5300rpm
使用燃料:プレミアム
■トランスミッション
7速DCT
■燃費
JC08モード:14.7km/ℓ
価格○615万5円