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ダイムラーM264の「CONICSHAPE」とは何か──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第12弾


新型Cクラスに搭載されて日本にも登場を果たしたダイムラーの新型2ℓガソリンエンジン。 48Vシステムの搭載が大きく取り上げられているが、当然、本機の技術的トピックはエンジン本体にも多くが挙げられる。そのうちのひとつ、円錐形状のシリンダーボアの狙いを考察してみる。


TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)

M264型のピストン構造。張力低減にコーティング、クーリングギャラリーの設置など、多くの気が払われている。

 内燃機関の熱効率を向上させる手段のひとつに、フリクション(摩擦)の低減がある。特に損失の大きいのが、ピストン側面とシリンダーウォールとの摩擦。接触面積が広いだけでなく、滑り方向が反転するという厄介な部分だ。


 この部分には各社とも、ピストンスカートへの低摩擦樹脂コートや、シリンダーボアの真円度向上によるピストンリング張力の低減、リングへのDLCコートなど、さまざまな対策を行っている。


 さすがにそろそろ手も出尽くしたか、と思ったら、メルセデス・ベンツの新型C200に搭載されているM264型エンジンには、どうやら新手の対策が行われているようだ(A250に搭載されるM260型エンジンも同様)。

ダイムラー・M264型エンジン。「180」から「350」までを担う、2ℓの4気筒ガソリンターボ過給エンジンで、48VシステムのBSG/ウォータポンプを用いているのもトピックである。

 プレスリリースの上では、「シリンダーウォールをフォームホーニング加工する際に、シリンダーウォールを底部に向けてやや広がる形とすることで、ピストンスカート部に発生する摩擦を低減する技術」となっている。技術の名称は「CONICSHAPE(コニックシェイプ)」。直訳すれば「円錐形状」。要するに、通常は円筒形のシリンダーが円錐形状をしている、ということだ。もちろん、目で見てわかるような極端な円錐ではないだろう。ホーニング工程での加工だというから、テーパーは1%よりずっと小さいはず。これでどうして、摩擦損失を低減できるのかを考えてみた。

概念図。下方に向かって広がる円錐形状とすることで下死点における間隙を増やし、ピストンとライナ間の摩擦を低減する。

 リリースの上では、摩擦が低減できるのは「ピストンスカート部」とあるが、実際には「ピストンリングとシリンダー壁の摩擦」ではないかと思う。ピストンリングの張力は、筒内圧が最大になる圧縮上死点で圧力漏れが起こらないように設定する。一方で、吸排気の下死点では、筒内圧は圧縮上死点に較べて大幅に低いから、リング張力はもっと低くできるはず。しかしリング張力を可変化するわけにも行かないし……、ならばシリンダーボア側をテーパーにしてしまえば、リング張力は下死点に近づくほど小さくなって、無駄なフリクションは減らせるはず。


 というのが、僕が考えたCONICSHAPEのフリクション低減ストーリーなのだが、リング張力に影響を与えるほどのテーパーを付けたら、ピストンが暴れてスラップ音が出そうだし、そもそもホーニング加工で、それほど大きなテーパーが付けられるのか。




 しかも謎なのは、加工方法。通常のホーニングは、回転と往復を組み合わせて研磨していくから、テーパーは付けられない。砥石はある程度の長さを持っているから、下に向かって徐々に広げていくわけにも行かない。CONICSHAPEは特許技術だそうだから、加工方法にもノウハウが隠されていそうだ。




 実は近々、新型Cクラスについて取材する機会をいただける予定で、このあたりも詳しく聞いてみたいと思っている。すべてを答えてもらえるかどうかは不明だが、結果は「ニューモデル速報・新型メルセデス・ベンツCクラスのすべて」で報告できると思う。

こちらは同じファミリーのM260型。横置きFWD車に用いるタイプ。先代のM270@横/M274@縦と同様のコンセプトだ。

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