クルマの持つ潜在能力を引き出すプロフェッショナルである、チューニングショップのチューナー達は、仕事を効率よく作業するために工具ですらチューニングしてしまう。
チューナーの作業現場では、ちょいちょいそんな自作工具に遭遇する。
今回は、筆者が取材先で見掛けた、見てるだけでもカッコいい、手作りチューニング工具を紹介しよう。
まずは、もはや廃盤なってしまっているが(初っ端が古い写真を引っ張り出してきたもので恐縮です)、クルマを自分でいじる人なら必ず持っていたと言っても過言ではないKYBのシザースジャッキ。(現在はマサダ製作所が同様のものを販売中)もちろんチューナーやチューニングパーツメーカーでも必ず使われていた逸品だ。
写真のジャッキの右のグレーっぽい奴だが、これはブレーキパッドメーカーのエンドレスのスタッフが使っていたもので、左の金色っぽいやつは編集部のもの。
色合いが違うのは、グレーの奴がマイナーチェンジ前のいわゆる前期モデルだから。で、ジャッキポイントに注目してほしい。
前期型のジャッキポイントはプレス成形されたスチール製で、何度かクルマを持ち上げていると変形するという弱点があった。その弱点の対策として左の後期型のジャックポイントはアルミ製のブロックタイプに変更された。
ただこのエンドレスの前期型はオリジナルではなく、潰れたパーツを取り外し、鉄板を溶接してジャッキポイントをつくりあげたスペシャル品。
あまりに自然につくられているので、知らない人が見たら加工品とは思わないであろうクオリティ。しかもこれなら潰れることもなく、アルミ製の後期型よりも丈夫そうだ。
ショボい車載工具だって使いやすく!
こちらは栃木県の老舗チューナーガレージ北関東酒田さんの自作ジャッキ。
愛車をシャコタンにした人ならお分かりだと思うが、前述のシザースジャッキは畳んだ状態でも結構高さがあって車高によっては入らないこともある。
そんな時には背の低い、車載工具のジャッキが便利……なのだが、これも一風土でも純正ジャッキを使ったことがあればわかるのだが、どのメーカーのものも上げ下げのしにくさがハンパない。
その純正ジャッキの弱点を克服したのがコレ。ご覧のとおり回転部にソケットレンチのコマが溶接され、ラチェットで素早く上げ下げできるようになっています。
と、まあここまでなら「なるほどね」で終わるのだが、よ〜く写真をみていただきたい。ラチェットのコマとジャッキの間にパイプを溶接し、長くして作業しやすくしているのですが、この真ん中のパイプ何だかわかりますか?
ピンときた人は相当なチューニングフリークか整備士さんですかね。見覚えのない人には回答を。コレ実はピストンとコンロッドをつなげているピストンピンなんです。
確かにこういったものならショップの廃材入れによく転がっています。普通はクズ鉄回収か産廃として捨てられる運命ですが、プロっぽいエコロジー&リサイクルがコレまたカッコいい!
ご職業柄がよくよく滲み出てます
そして、最後は神奈川県のRX-7&RX-8のロータリーチューナで、最近はロードスタやトヨタ86なんかもチューニングしてるRマジックさん。
エンジンオイルの交換作業を行なっていたのですが、その廃油受けのスタンドの足元に、重石としてロータリーエンジンのローターが溶接されているではあいませんか!
しかもマツダ787Bとタメ張る4ローターです。
コレまた廃材の有効活用ですが、ローターリーショップぽくて、イカしてます。