日産自動車主催の「Nissan Intelligent Mobility 雪上試乗会」が開催された。ノートe-POWERからGT-Rまで、日産の主力車種を一同に集め、雪上でのドライブパフォーマンスが楽しめる。そこで意外なパフォーマンスを見せたのが、ノートe-POWERとリーフのワンペダル操作車だった。その極意を日産エンジニア諸氏に訊いた。
TEXT:世良耕太@Kota Sera PHOTO:MFi /NISSAN
日産リーフe+(イープラス):「プラス100kmの安心感」「プラス50kWの加速感」「ほとんど劣化しません」
雪道といえば4WD(四輪駆動、よんく)のイメージである。前もしくは後ろの2輪で滑りやすい雪の路面に力を伝達するより、4輪で力を伝えたほうが安心だ。なにより、2WD(にく)だと「すべる」気がする。降雪地域のユーザーなら実体験がともなっていることが多いだろう。
そんなお客さんの声を受けて、北海道の販売会社は「4WDを寄こせ!」「なんで4WDを作らないんだ!」と、日産自動車の社員に訴えていたという。販売店にやってきたお客さんは、お気に入りのモデルに4WDの設定がないと知ると、「じゃ、いいです」といって背を向けるからだ。
だが、リーフやノートe-POWER、セレナe-POWERを出してからというもの、4WDに対する強い要望は影を潜めたという。なぜだろう。
結局のところユーザーは、4WDが欲しかったのではなく、「扱いやすさ」が欲しかったのだ。カタカナで表現すればコントローラビリティである。ノートやe-POWERは扱いやすいので、4WDでなくても(ノートe-POWERには4WDの設定もある)、雪が積もったすべりやすい路面で気を遣わずに発進できるし、安心して減速できる。だから、「4WDじゃなきゃ」という声が激減したのだ。
リーフやe-POWERが扱いやすい理由のひとつはモーターにある。リーフはバッテリーに蓄えた電気エネルギーだけで走る。ノートとセレナのe-POWERはガソリンエンジンを積んでいるが、エンジンで発電してつくった電気エネルギーでモーターを動かして走る。リーフもe-POWERも、タイヤを動かしているのはモーターだ。
日産は「1万分の1秒単位」という表現を用いているが、ともかく、モーターは反応がいい。細かな制御を緻密に行なうのが得意だ。これはエンジンとトランスミッションを組み合わせたパワートレーンには絶対に真似ができない。モーターで走るクルマであることが、雪道でも安心して走れる理由のひとつである。
それ以上に大きな理由が、ワンペダルドライブだ。アクセルペダルの操作で加速側だけでなく減速側もコントロールできるワンペダルドライブで走ると、日常走行のほとんどのシーンで、ブレーキを踏む必要がない。リーフやe-POWERの場合、アクセルペダルを踏み込めば加速し、戻すと減速する(ブレーキを掛けたようなものだ)。弱く踏めば弱く加速し、強く踏めば強く加速するように、ゆっくり戻せば弱いブレーキを掛けたように減速し、速く戻すと強いブレーキを掛けたように急減速する。
専門的にはFS特性(Fはフォース=力、Sはストローク)といって、ペダルのストローク量とそのときにペダルから生じる反力(足の裏に感じる力)の関係が関連してくる。ワンペダルドライブの場合は、アクセルペダルひとつで加速側も減速側もFS特性が完結している(わかりやすいように、図ではG=加速度とS=ストロークの関係で説明)。
これまでの一般的なクルマは、加速するときはアクセルペダルを踏み、減速するときはブレーキペダルに踏み換えていた。つまり、FS特性の異なる2つのペダルを踏み換える必要があったのだ。雪道でブレーキを掛けるときは、アクセルペダルと特性の異なるブレーキペダルに踏み換えなければいけないので、「どれくらい踏めばスリップしないで思ったとおりに減速できるだろうか」と不安になる。
ワンペダルドライブなら、その心配はない。どれくらい踏めばどれくらい加速し、どれくらい戻せばどれくらい減速するか。その感覚になじんでしまえば、気を遣うことなく加減速ができるからだ。従来の2ペダル車の場合、交差点などで発進する際は、ブレーキペダルからアクセルペダルに足を載せ替える必要があった。アクセルからブレーキに踏み換える際と同様、特性の異なるペダルを操作しなければならないので、無意識のうちに不安を覚えるのだ。「あれ? 大丈夫かな?」と。