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新型ポルシェ・マカンといえばポルシェの新たなる屋台骨だが、その最新型の実力は?


今やポルシェの屋台骨を支えるモデルとなったマカンがマイナーチェンジ。スタイリッシュさに磨きをかけた外観やパワートレインの改良により、商品力が一層高まったのは間違いないだろう。その新型マカンの実力を島下泰久が確かめた。


REPORT◉島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa) PHOTO◉Porsche AG

 覚えている方も少なくないだろう。マカンのデビューは2013年11月。東京とLAの太平洋をまたいだモーターショーで、ほぼ同時にお披露目されたのだった。その後のサクセスストーリーは皆さんご承知の通り。このポルシェ6番目のモデルは大ブレイクし、4年間の累計販売はすでに35万台を超えたという。17年で言えば、ポルシェの世界販売の実に4割近くを、このマカンが占めたのだ。


 


 瞬く間に最重要車種のひとつとなったモデルだけに、初のフェイスリフトは慎重に行われたかと思いきや、さにあらず。ポルシェはいつもの流儀に則り、隅々まで改良の手が加えられた大幅なアップデートを、このマカンに施してきた。


 

高精細な10.9インチ大型タッチスクリーンを採用した最新のインフォテインメントシステム「PCM(ポルシェ・コミュニケーション・マネージメント)」の搭載により、インパネデザインが刷新された。

 今回、マヨルカ島で行われたプレス向け国際試乗会で試したのはベースモデルのマカン、そしてマカンSの2モデルである。大幅なアップデートとは書いたが、スタイリングの変更点は最小限。LEDヘッドランプが標準装備となり、バンパー、ホイールなどのデザインが改められているが、これらも従来のイメージを大きく変えるものではない。


 


 ひと目で新型だと判別させるのは、左右テールランプ間をLEDライトストリップで繋ぎ、そこの「PORSCHE」のロゴを挿し込む最新のポルシェに共通のエレメントを採用したリヤビューだ。LEDで左右テールランプ間を繋ぐこと自は、他社でもいくつか例が見られるが、そこにブランドロゴが入ったデザインは、ポルシェの確固たるアイデンティティ。後続車へのアピール度は格段に高まっている。


 


 インテリアでは、10.9インチの大型タッチスクリーンを用いた最新のPCM(ポルシェ・コミュニケーション・マネージメント)の搭載に伴い、ダッシュボードのデザインが刷新されている。また、より小径のGTスポーツステアリングも採用された。スポーツクロノパッケージ装着車では走行モードの切り替えがスポーク脇のダイヤルスイッチで行えるようになる。


 



 新装備としてはイオナイザーや遮音ガラス、ヒーテッドガラスなどを設定した。また安全装備としてリスクレーダーなる機能も用意される。これは前走車の急ブレーキ情報からブレーキ圧を高めるなど、車車間通信により危機回避を支援するもの。ただし、通信相手は今のところVWグループの車両に限られる。渋滞時の半自動運転機能であるトラフィックジャムアシストも設定された。


 


 ここまで確認したところで試乗となった。走りに関する部分については事前情報はほとんどなしで……。


 

高い俊敏性と、快適性の同居

 最初に乗り込んだのはマカンS。オプションの21インチの大径タイヤ&ホイールを装着したモデルだ。思わず顔をほころばせたのが、まるでギヤ比を速めたかのようなステアリングの軽快なレスポンスである。ステアリングフィールもよりクリアになり、総じてフットワークは一層洗練度を高めている。


 


 このシャシー、スプリングやダンパーにファインチューニングが加えられた他、電動パワーステアリングの改良、フロントサスペンションのスプリングフォークのアルミ化、19インチ以上のリヤホイールのリム幅拡大といった変更が施されている。小径のステアリングも、これらにぴたりと合って、俊敏性の演出に貢献しているようだ。


 


 しかも快適性も素晴らしい。剛性感の高いボディと、しなやかさを増したエアサスペンションとのマッチングは秀逸で、常にフラットな姿勢を保ちつつ、すべての入力を丸く受け止めてくれる。この乗り味は上質の一言。文句のつけようがない。


 

試乗したマカンSにはオプションの21インチの大径タイヤ&ホイールが装着されていた。

 エンジンの力強さは十分ながらフィーリング的には従来より低回転域がややラフで、トップエンドの伸びもおとなしい印象だ。実はマカンSの3.0ℓV型6気筒シングルターボユニットは、ツインターボだった従来のものとはまったくの別物。Vバンク内にターボチャージャーを搭載したそれはアウディSQ5などと共通のもので、最高出力は14㎰増の354㎰まで高められている。


 


 今後、登場予定のマカンターボのエンジンも、おそらく同様に刷新されることになるのだろう。パフォーマンス向上は間違いないが、ツッフェンハウゼン製ユニットがなくなるのは少々寂しいところではある。


 


 続いて同じマカンSに20インチタイヤ、コイルサスペンションにPASMという仕様を試すと、スポーティさは変わらないが、乗り心地はやや硬めと感じられた。これだけ乗っている分には満足できそうだが、マカンSではやはりエアサスペンション付きをお勧めとしたい。

マカンは252㎰/370Nmを発生する2ℓ直4ターボ、マカンSには354㎰/480Nmを発生するV6ターボを搭載する。

 ところがベースグレードのマカンに、同じ20インチタイヤ、PASMという組み合わせは、乗り心地のカドが取れて十分快適だし、フットワークはエンジン重量が軽いおかげか軽快さを増していて、これはいいぞと唸らせたのだから面白い。しかも従来型のリファインとなる最高出力252㎰の2.0ℓ直列4気筒ターボエンジンは、低中速域のツキが良く、高回転域もよく伸びて、絶対的なパワーはともかく扱いやすさやスポーティさでは決してヒケを取らないのだ。コストパフォーマンスだけでなく、走りの魅力で見ても、この仕様は狙い目だ。


 


 人気モデルのフェイスリフトでも手を抜くことなく、入念に熟成が図られた新しいマカン。とりわけ従来も十分に満足していたフットワークがさらにその質を高めていたことに嬉しくなった。その好調ぶり、間違いなく今後も持続しそうである。


 


※本記事は『GENROQ』2019年2月号の記事を再編集・再構成したものです。

SPECIFICATIONS ポルシェ・マカン〈マカンS〉


■ボディサイズ:全長4696×全幅1923×全高1624㎜ ホイールベース:2807㎜ トレッド:Ⓕ1655 Ⓡ1651㎜


■車両重量:1795〈1865〉㎏


■エンジン:直列4気筒DOHCターボ〈V型6気筒DOHCターボ〉 ボア×ストローク:82.5×92.8〈84.5×89〉㎜ 総排気量:1984〈2995〉㏄ 最高出力:185kW(252㎰)/5000~6750rpm〈260kW(354㎰)/5400~6400rpm〉 最大トルク:370Nm(37.7㎏m)/1600~4500rpm〈480Nm(48.9㎏m)/1360~4800rpm〉


■トランスミッション:7速DCT


■駆動方式:AWD


■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク


■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク


■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ235/60R18(8J) Ⓡ255/55R18(9J)


■車両本体価格:699万円〈価格未定〉
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