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PCX&PCX150とどちらが買いか? 「PCXハイブリッド試乗レポート第3弾」


ホンダから2018年9月に販売が開始されるPCXハイブリッドは、PCXをベースにACGスターターをアシスト動力として利用した量産二輪車初のハイブリッド車である。先にデビューした新型PCXとPCX150と合わせて3つのバリエーションが揃ったPCXだが、実際のところどれが買いなのか。実際の乗り味や性能比較も含めて考えてみたい。




REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ PCXハイブリッド……432,000円(9月14日発売)

【PCXハイブリッド試乗レポート第一弾】【PCXハイブリッド試乗レポート第二弾】

 PCXハイブリッドは新型PCXのエンジンや車体などのプラットフォームはそのままに、エンジン始動や発電を担うACGスターターに駆動アシスト機能を持たせたハイブリッドモデルである。簡単に言えば、電動アシストが付いたPCXである。

ハッキリ分かる出足の鋭さ

 当然だが見た目でスタンダードとの違いはほとんどなく、「HYBRID」のロゴを見なければそれとは分からないほど。深いブルーの専用カラーは都会の街並みにも映える上品な雰囲気がある。違うのは走りだ。エンジン音も静かだが、アクセルを開けた途端のダッシュ力が凄い。電動モーターは瞬間的に100%のトルクを出せるのが強みだ。馬力としてはたった1.9ps分のプラスだが、最大トルクでは33%の上乗せと聞けばそれも納得。加えて、クラッチがつながるまでの時間も短縮されている。つまり車体を押し出す力とそのレスポンスの両方が向上している。スタンダードのPCXと比べると、出足の力強さの違いは体感的にもハッキリ分かるレベルだ。加えてモーターアシストの立ち上がりが早いので、コーナリング中もリニアかつ安定してトラクションをかけ続けることができる。乗り味はよりスポーティと言っていい。

グッとくる4秒、乗り味は自然だ

 ちなみに電動アシストが作動するのはスタートから4秒間だ。スロットルを一度戻せば再びアシストが入るがそれも7000rpmまでと限定的。それが搭載されている48Vリチウムイオンバッテリーの性能との妥協点らしい。言い換えれば、電動モーターが得意とする低中速域とガソリンエンジンが得意な高回転域の双方のメリットを組み合わせたシステムと言っていいだろう。それでいて乗り味はとても自然で、電気とガソリンの切り替わり感などは皆無だ。また、PCXハイブリッドにはパワーモードが搭載されている。通常の「D」モードとより強力なアシスト力を発揮する「S」モード、そしてアイドルストップを解除する「アイドリング」の計3モードがある。Dモードでも十分強力だが、ハイブリッドらしい加速感を味わいたいならやはり「S」モードがおすすめ。ただし、電池の消費も明らかに早くなるが。

ハイブリッドのメリットとは

今回のハイブリッドも含めて現在PCXには3つのバリエーションが存在するが、その違いを一度整理したい。スペックで単純に比較すると下の通りとなる。

●PCX(エンジン仕様車)


・最高出力12ps


・車重130kg


・定地燃費54.6km/L


・価格34万2,360円

●PCX150(エンジン仕様車)


・最高出力15ps


・車重131kg


・定地燃費52.9km/L


・価格37万3,680円

●PCXハイブリッド


・最高出力12ps(エンジン)+1.9ps(モーター)


・車重135kg


・定地燃費55.0km/L


・価格43万2,000円

 PCXのガソリン仕様車を基準とするならば、PCX150の方がパワフルで3万円ほど高い。そして、PCXハイブリッドはアシスト分の動力はあるものの、最高出力値そのものは控えめで、燃費も同等。ただし価格は9万円ほど高い。数値だけ見ると、ハイブリッドのメリットは薄い気もする。




 ただ、重要なのはスペックには表れない感性の部分だ。前述のとおり、電動モーターのメリットはトルクの立ち上がりの早さによる出足の俊敏さにある。試乗してみて感覚的には初期の加速フィールではPCXはもちろんPCX150をも上回ると感じた。ただし、回転上昇とともに電動アシストは減るためトップスピードではPCX150が優るかも。ホンダ開発者の話でも、ゼロヨン加速ではPCX150に分があるらしい。しかしながら、このクラスの真骨頂は混雑した都市部での機動性である。やはり出足の俊敏さは大きなメリットであり魅力なのだ。




 燃費についてもホンダは今回、あまり追いかけていない。PCXハイブリッドは加速やスロットルレスポンスなど“走りの楽しさ”に注力したモデルだからだ。元々リッター50km以上も走るわけで、その上パワフルになって燃費が少しでもアップすれば十分だと思う。ちなみにリチウムイオンバッテリーの残量がゼロになったとしても、通常どおりガソリンエンジンのみで走行可能。これもハイブリッドならではのメリットだろう。


 一方でデメリットもある。それはシート下スペースの後ろ半分がリチウムイオンバッテリーで占められていることだ。従来どおり前部にはフルフェイスヘルメットが丸ごと納まるが、雨具や小物などが入れられる便利なスペースが消滅してしまったのは仕方ないとは言え残念だ。ホンダ開発者にも聞いたが、バッテリー搭載スペースも検討を重ねた末の苦しい判断だったようだ。最終的にはグローバルモデルであることを考慮し、洪水の多い場所でも安心できるようリチウムイオンバッテリーを耐水仕様とした上で、シート下後部の高い場所に収められた。

どのPCXを選ぶべきか

 さて、多くのユーザーが気になるのは「自分にとって最適なPCXはどのモデルなのか」ということだろう。


 普段の通勤・通学に使いたいのであればスタンダードのPCXで十分だろう。シート下スペースもフルに使えて価格も安いし実績もある。PCX150は同じ車体によりパワフルなエンジンを搭載していて動力性能が高く、高速道路にも乗れるので遠距離まで足を延ばせるメリットもある。行動範囲は広がるが、一方で原付二種ではなくなるため普通二輪免許が必要だ。ハイブリッドはやはり電動アシストパワーを生かしたスタートダッシュが命。ストップ&ゴーの多い混雑した都会で、ひときわ爽快感を味わいたいならハイブリッドがおすすめだろう。そして、二輪としては量産市販車初という先進性もまた所有感を満たしてくれる価値となるはずだ。そう考えると、それぞれに棲み分けができていると思うのだ。

ディテール解説

ACGスターターで左はハイブリッド用で右はスタンダード用。一見するとサイズも形状も同じだが、ハイブリッド用はコイルを巻く鉄芯の材質がハイクオリティだとか。

ハイブリッド車のシート下トランクはちょうど後ろ半分のスペースにリチウムイオンバッテリーを搭載。

ガソリン仕様車のPCXはヘルメット1個+雨具や小物などが収納できる。

48Vリチウムイオンバッテリー本体の大きさは電動アシスト自転車のそれと同程度で、重量も2.6kgと軽量だ。据え置きタイプで想定交換サイクルは6~8年とのこと。

ハイブリッドの先進性とプレミアム感を演出するパールダークナイトブルーの専用カラーを採用。ヘッドライトまわりやシートステッチにもブルーを強調。

新型PCXと同じでスマートキーを身に着けていれば簡単に始動できる。本体はハイブリッド専用カラーのブルーに統一されている。

メーター上辺部にはアシストおよびチャージレベルを示すゲージを配置。リチウムイオンバッテリー残量やパワーモード表示はハイブリッドならではだ。

左側グリップ前部にモード切り替えスイッチを配置。走行中でも「D」「S」「アイドリング」それぞれのモードにシフトできる。

PCX150に搭載されていたフロント側ABSをハイブリッドにも標準装備。動力性能に応じて安全性も高められている。

主要諸元

通称名 PCX HYBRID


車名・型式 ホンダ・2AJ-JF84


全長×全幅×全高 (mm) 1,925×745×1,105


軸距 (mm) 1,315


最低地上高 (mm) 137


シート高 (mm) 764


車両重量 (kg) 135


乗車定員 (人) 2


最小回転半径 (m) 1.9


原動機 エンジン型式・種類 JF84E-K96・水冷 4ストローク OHC 単気筒


電動機種類 交流同期電動機


総排気量 (cm3) 124


内径×行程 (mm) 52.4×57.9


圧縮比 11.0


最高出力 (kW[PS]/rpm) エンジン 9.0[12]/8,500


            電動機(モーター) 1.4[1.9]/3,000


最大トルク (N・m[kgf・m]/rpm) エンジン 12[1.2]/5,000


            電動機(モーター) 4.3[0.44]/3,000


電動機(モーター)定格出力(kW) 0.36


燃料消費率※8(km/L) 国土交通省届出値 定地燃費値(km/h) 55.0(60)<2名乗車時>


          WMTCモード値 (クラス) 51.9(クラス1)<1名乗車時>


燃料供給装置形式 電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>


始動方式 セルフ式


点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火


燃料タンク容量 (L) 8.0


主電池種類 リチウムイオン電池


変速機形式 無段変速式(Vマチック)


タイヤ 前 100/80-14M/C 48P、後 120/70-14M/C 55P


ブレーキ形式 前 油圧式ディスク、後 機械式リーディング・トレーリング


懸架方式  前 テレスコピック式、後 ユニットスイング式


フレーム形式 ダブルクレードル
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