モーターファンにて連載されていたコラム「福祉の車窓から」。福祉車両の機能的な進化、携わっている人々の考え、そして共に走り楽しむことの心地よさを伝えるべく、その全編をWEBにて再録します。
※データ等は収録時のものになっています。ご注意ください。(2017.05.01)
我が家の下の子にもバギー(子供用車いす)がやってきました。制作を検討しはじめたのが1歳半のとき、綿密な仮合わせなど12ヶ月の時を経て完成。やったー! ということで、お出かけの頻度は増えそうなカンジです。そこで気になるのが出先の駐車場。今回は、大型ショッピングモールや公共施設などにある、車いすマークの駐車枠について採り上げます。
まずは法整備から。11年前「バリアフリー新法」によって公共性のある施設について、200台の駐車場に4台と、約2%の割合で、駐車枠の幅を1mほど広げ、幅3.5mとした「車いす使用者用駐車施設(本稿では車いす駐車枠とします)」に設置が義務づけられました。その詳細は下段のコラムに譲りますが、そのサイズは、ざっくりいって、ターゲットを車いすユーザー本人が単独で来訪するケースと考え、その取り回しスペースをなんとか最低限確保するものといえそうです。
まず第一の側面。数多くの施設で採用されている有効打がパーキングパミット制です。これは、利用対象者にしっかりサービスをリーチできる手段といえます。その多くは、ルームミラーにぶら下げるタイプの利用許可証を発行し、掲示させるもの。許可証をもらう必要があるため、一度目の利用だけは障がい者手帳の確認が必要だったりと手間がかかるものの(郵送などで申請ができる場合もある)、その後は許可証を掲示するだけでいいので利便性に優れます。管理者側も許可証申請の有無の確認のためという建前で、未掲示の利用者を呼び出し、利用案内をすることでこの駐車枠の意味を認識してもらうことができるというシステムでもあります(うっかり駐車をやんわり抑制できますね)。また、公共施設同士ではいずれかの自治体(35府県1市)かの許可証を持っていれば相互利用が可能という状況にもなっています。
またこの許可証は数種類用意されていることがあり、障がい者や、高齢者のほか、たとえば妊婦や一時的な疾病による歩行困難者などに期間限定で交付されるものも。ユニバーサルデザインの考え方で、実態に則して柔軟に対応しているといえます。反面、利用者が多くなっているということにもなり、慢性的に車いす駐車枠が不足してしまうという事態も生じているようです。
そこで注目すべきシステムが、駐車場の中にさらにゲート付きの車いす駐車枠を別途設けて、重要度の高いユーザーにはそちらを利用させるといった方法。これはドライバーが車いすを必要とするなど、確実に駐車枠がないと用が足せないユーザーに対して有効なサービスといえます。このゲート付き駐車枠に加えて、ゲート外にも車いす駐車枠を設置しているケースもあったりと、施設側の負担は大きくなるだけに、リテラシーの高さを感じます。
車いす使用者用駐車施設の設置例
2006年(平成18年)の12月20日に制定された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」 に基づいて、その必要なサイズや周辺の表示などが決められた「車いす使用者用駐車施設」。公共性の高い施設に対し、駐車場の規模に応じて決められた台数分の車いす駐車枠の設置が義務づけられました(例:200台以下の駐車施設の場合、全体の1/50以上=4台、2%以上)。駐車枠そのものの規格としては、幅2.5m、長さ5.0mとされている標準的なサイズがの駐車場枠に対し、幅が3.5mに拡大。そして、施設の出入り口などから近くに設置することが義務付けられています。さらに、建物自体も同じバリアフリー新法により、車いすでもアクセスがしやすいよう動線に配慮する、車いす利用者がわかりやすい案内看板を出す等のレギュレーションがあります。ちなみに、一般的な車いすの最大サイズ(JIS規格最大寸法 全幅0.7m×全長1.2m)のものが、360度の転回を行えるスペースが直径1.5m、180度転回で直径1.4mとされており、また松葉づえ利用者が円滑に通過できる寸法が幅1.2mとなっています(公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドラインによる)。ですから、ざっくり1.6〜1.8m幅のクルマの横でいろいろと作業するにはこのくらいのスペースが必要になるというコトのようです。
著者紹介:古川教夫
クルマとバリアフリー研究家。基本は自動車雑誌編集&ライター&DTP/WEBレイアウター。かつてはいわゆる徹夜続きの毎日だったが、現在は娘さんの介護をしながら9割9分の在宅ワーク。『ドレスアップナビ』(https://dressup-navi.net/)のアンカーや、ライフワークであるロータリー関連の執筆活動等を行いながら、介護経験から見る福祉制度と福祉車両の世界をつづる。2017年2月に福祉車輌取扱士の資格を取得。