ゲームのキャラクターを実物にする。そんな途方もないプロジェクトによって生まれたレーシングカーがアウディの『e-tron Vision Gran Turismo』である。実車を取材する機会に恵まれたのでレポートをお届けする。
アウディによるAudi Sportラインアップ試乗会が富士スピードウェイで開催された。本会の柱はふたつ。ひとつは『R8』を頂点とするアウディのスポーツモデルについて『TT RS』『RS 5』『RS 3』『RS 3 Sportback』の各車をメインコースでドライブできるという催しである。もう一方がレーシングカーの同乗走行体験。今回は3台が用意され、『RS 3 LMS』『R8 LMS』に加えて『e-tron Vision Gran Turismo』がコース上に現れた。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれない。『e-tron VGT』はPlayStationのゲーム「Gran Turismo」においてアウディがデザインしたレーシングカーである。
その『e-tron VGT』を、アウディはなんと実車化してしまった。クルマを仕立てるプロセスとして非常にユニークな手段をとったこのクルマについて、モータースポーツマーケティングスのクラウス・デメル氏は「8ヵ月で仕立てました。普通ならあり得ない期間です」と笑う。Formula Eの各ステージ、また先般のスーパーGTにおいてデモ走行をしているそのクルマを、今回のイベントに持ち込んできたのである。
e-tronの文字が示すのはEV。本車もリヤ×2+フロント×1のモーターで車両を駆動する。車両各部にはレースカーや市販車で実績のある部品が数多く用いられていて、たとえばシャシー部品にはDTMの車両のパーツが採用されていた。ボディは鋼管によるフレーム構造。
EVだけに、ビデオをいつ回し始めていいのかがわからないくらいに突然走り始める。ストレートを通過するときもサイレントの一言。シュイイイイイイイイン!という高周波とともに走り抜ける。
室内では案外パワーエレクトロニクス関連のノイズがあり、しかしエアコンはなし。室内に引き込まれたダクト類でキャビンの空調としている。7日の富士スピードウェイは曇天で気温も高くなかったが、前日までの酷暑ではどのような状況だったのだろうか。プロドライバーはタフである……。
クルマを仕立てるまでの経緯や特徴、さらに同乗走行したときのインプレッションについては、同行した世良耕太さんが詳細にレポートする予定だ。お楽しみに。
Audi e-tron Vision Gran Turismo
全長 5132 × 全幅 1980 × 全高 1214 mm(リヤウイングを含む数値)
ホイールベース 2825 mm
車両重量 1450 kg
駆動方式 フルタイム4WD
システム最高出力 600kW(815ps)
パワー/ウェイトレシオ 1.78kg/hp
0-100km/h加速 2.5秒以下