プリウスPHVのバックドアはCFRP製であることはよく知られている。その実物が三菱ケミカルホールディングスのブースに展示されていた。同社の関わりを取材した。
ご存じ、プリウスPHVのバックドアはフレームがCFRPを用いている。CFRPを用いるメリットについては軽量化や高剛性化(製法によるが)などがあり、さらにトヨタの例では形状の自由度と生産性の高さが挙げられる。
自由度とコストに優れているのはSMC製法を用いているから。そのサプライヤーが三菱ケミカルだ。
シート・モールディング・コンパウンドの略であるSMCは、CFRPの短繊維をビニルエステル系の樹脂に混ぜ込んだ状態を生地とし、加工時には加熱加圧するプレス機にセットする。加工時間は約2分。減圧して脱法して加圧して加熱して──というオートクレーブ製法(いわゆるドライカーボン)に比べて驚異的なタクトタイムの短さを誇る。
短繊維とはおよそ2.5cm。短いことで型への追従性が高まり、ご覧のような細かいリブや鋭利な凹凸まで表現できるのがメリットだ。プリウスPHVの例では、5ピースで構成。漠然と(ガラスのはまる部分とテール面とフランジ部と──)などと想像したらさにあらず。見えているフレーム全体と、裏打ちするパネル4枚という驚きの結果だった。生産性の高さがよくわかる。
さらにプリウスPHVは、その「裏打ちするパネル」の表面が織物形状になっているのが特徴。まるで長繊維を使っているように見える部材だが、じつはここもSMCによる短繊維構造。金型表面に長繊維状のシボを設け転写することで、このようなテクスチャを実現した。CFRPといえば──という心をくすぐる憎い演出だ。