IMSA WeatherTechスポーツカー選手権の開幕戦、「ROLEX 24 DAYTONA」(デイトナ24時間)が米フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催されている(決勝レースは1月27日〜28日に実施)。このレースにはマツダ、日産、アキュラ、レクサスの日本関連ブランドが関わっている。
TEXT &PHOTO◎世良耕太(Kota SERA)
2017年からDPiが導入されたのに合わせ、マツダはRT24-Pを開発し、2台をシリーズに送り込んだ。マツダ・ノース・アメリカン・オペレーション(マツダの北米拠点。以下MNAO)でモータースポーツ活動を統括するジョン・ドゥーナンに、北米におけるマツダのモータースポーツ活動について聞いた。
──北米マツダにとって、IMSA WeatherTechスポーツカー選手権に参戦する意義を教えてください。
ドゥーナン「IMSA WeatherTechスポーツカー選手権はマツダのモータースポーツ・ストラテジーの頂点に位置する。ピラミッドの頂点がIMSAなら、底辺に位置するのはグラスルーツだ。アメリカでは、マツダのカスタマーによるグラスルーツモータースポーツの参加率は55%にも達する。それもあり、グラスルーツではマツダブランドを好きになってもらうのが狙い。また、才能のあるドライバーに成長するチャンスを用意している」
──それがピラミッドの中間に位置する階層。
「そうだ。レーシングドライバーになりたいという夢を実現するための階層で、スポーツカー部門ではグローバルMX-5カップなどを用意している。オープンホイール部門は『マツダ・ロード・トゥ・インディ』と名付け、スポーツカー部門と同様に3階層を用意している。IMSAにDPiで参戦することはマツダにとってとても重要だ。なぜなら、DPiはマツダブランドの究極の表現であり、IMSAはマツダストーリーを発信する場にふさわしいと考えている」
──RT24-Pは、マツダの市販車でおなじみの「魂動デザイン」が採用されています。
「マツダの北米と日本のデザイナーが協力してRT24-Pのエクステリアをデザインした。ロードカーの魂動デザインをレースカーに融合させたわけだが、マツダが掲げる『人馬一体』の究極の表現でもある。実は、MNAOのチーフデザイナーがこの週末デイトナにやってくることになっているんだ」
──それはなぜ?
「RT24-Pのインテリアをスタディするためだ。ドライバーの着座姿勢といった基本的なところから、人間工学的な観点、操作系、視界などを確認する。(カリフォルニア州)アーバインにあるデザインスタジオにRT24-Pのコックピットを再現し、将来のマツダ車のコックピットデザインの参考にするつもりだ。いずれ、プロトタイプレースカーとロードカーがダイレクトな結びつきを持つことになる」
──2017年はシーズン途中でスピードソースとのパートナーシップを終了し、ヨーストレーシングと新たなパートナーシップを結びました。
「スピードソースとのパートナーシップは長期にわたった。その観点から言えば、非常に難しい決断だった。だが、パフォーマンスの観点から言うと、レベルを上げる必要があった。2016年の半ばにDPiの参戦について準備していた頃、ヨーストと組む選択肢はなかった。なぜなら、彼らはまだWEC(世界耐久選手権)でアウディと組んでいたからだ。ところが10月にアウディと別れることになった。ヨーストとはちょうど1年前のデイトナで交渉を始めたんだ。彼らはプライベーターではなくマニュファクチャラーと仕事をしたがっていた」
──力強いパートナーを得ました。
「彼らの実力は記録が物語っている。ル・マンでは16回優勝し、デイトナ24時間でも複数回優勝している。世界で最も偉大なスポーツカーチームとパートナーを組むことができる機会はそうあることではない。難しい決断ではあったが、マツダにとって素晴らしい決断だったと思っている」
──マルチマチック製のシャシーに大幅な改良を施したそうですね。
「サスペンションと冷却、空力を見直した。ドライバーは『まったく別のクルマになった』と言っているよ。もちろん、いい方向にね。2018年のRT24-Pは、レースに勝ち、チャンピオンシップを制するためのパッケージになった」
──ところで、車名に含まれている「24」は、ル・マン24時間の「24」ではないのですか?
「ある意味ね。正確には24時間レースの『24』だ。あくまでも、ドライバー育成プログラムの頂点として、デイトナ24時間への出場を頂点に据えている。現在のレギュレーションでは、DPiがル・マンに参戦することを許していない。ただ、(ル・マン24時間を統括する)ACOは、DPiのバリューを気にしているようだ。デイトナ24時間にも視察に来るに違いない。いつか、DPiがル・マンに参戦できるようになるといいと思っている」
──ありがとうございました。