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ドイツ・アウディAGは10月19日、ミドルラージ5ドアクーペ「A7スポーツバック」をフルモデルチェンジ。2代目へと世代交代した新型は、2014年11月のロサンゼルスモーターショーに出品されたコンセプトカー「プロローグ」で示された新たなデザイン言語を、7月に発表された新型A8以上に明確に具現化したグランツーリスモとして、その姿を現した。
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フロントはA8のものよりも低く幅広いシングルフレームグリル、細いヘッドライト、大胆な縁取りがなされたエアインレット、低く伸びたボンネットなどで、グランツーリスモとしてのスポーティな性格を表現。
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ヘッドライトには3つの仕様があり、中間及びトップグレードのモデルには、2進法によるデジタル世界との関連性を想起させる、ライトシグネチャーがデジタル化され細い枠で区切られた12個のLEDライトを持つ「マトリクスLEDヘッドライト」が用意された。そして、「アウディレーザーライト」を備えた「HDマトリクスLEDヘッドライト」が最上級仕様として設定されている。
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後方へ行くに従ってシャープに下降するダイナミックなルーフラインを持つサイドビューは、長く伸びたボンネット、長いホイールベース、短いオーバーハングで構成。全長×全幅×全高=4,969×1,908×1,422mm、ホイールベース2,926mmの低く長くワイドなプロポーションを得て、アスリートのようにダイナミックなスタイルを実現した。
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リヤエンドは先代と同じく、ヨットのように両側が細く、長いハッチゲートの後端はリップ状に少し突き出した形状。120km/h以上の高速では内蔵されたスポイラーが自動的に伸長して、リヤのダウンフォースを高める構造となっている。
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その一方で、アウディの上級モデルに共通するデザイン要素であるフラットなライトストリップが新たに与えられ、それぞれ13の縦型ライトセグメントで構成された両側のテールライトを接続している。なお、このリヤライトとヘッドライトは、ドアを開錠・施錠すると光のアニメーションプレイを展開し、新型A7スポーツバックの静止していてもダイナミックなキャラクターを堪能できるようプログラムされているのも見所だ。
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インテリアは、水平ラインと細いインストルメントパネルにより広々感が演出されており、ドライバーに向けて少し角度が付けられたセンターコンソールが、グランツーリスモとしてのスポーティなキャラクターを強調。
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そして新型A8に続き、ロータリープッシュボタンや旧来のボタン・スイッチ類に代わるインターフェイスとして、2つの大きな高解像度タッチディスプレイによる「MMIタッチレスポンスコントロールシステム」を採用。上側でインフォテインメントシステムを、下側でエアコンや文字入力を行うこのシステムは、操作時に触感と音によるフィードバックをもたらすことで、スマートフォンのように直感的な操作を可能とした。
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室内は見た目だけではなく実寸法上も広くなっており、先代に対し室内長が21mm拡大。これにより後席のヘッドルームとニールームにさらなる余裕が生まれている。荷室も左右幅1,050mmが確保され、荷室容量は通常時でも535L、後席を畳んだ状態では1,390Lとなった。さらに、形状の工夫により、オプションのスペアタイヤを搭載したモデルでもゴルフバッグを横にして2つ収納できるよう進化している。
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ボディにはスチールとアルミの複合構造を採用し、アドオンパーツなどの大型コンポーネントをアルミ製として、ねじり剛性と空力、静粛性をさらにアップ。前後サスペンションは多くの部分がゼロから新設計されるとともに、新開発されたエレクトロニックシャシープログラム(ECP)(シャシーの中央制御ユニット)および改良されたエアサスペンションなどにより、敏捷性と乗り心地が大きく向上した。
そのうえ、ステアリングの切り角が大きくなるにつれてステアリングレシオがダイレクトに変化する「プログレッシブステアリング」が、全モデルに設定されている。
また、サスペンションのセットアップは4タイプが用意されており、スチール製スプリングを備えた標準的なサスペンションのほか、車高を10mm下げたスポーツサスペンション、減衰力を調整できるアダプティブコントロールサスペンション、さらに自動車高調整機能を備えたアダプティブエアサスペンションも選択することが可能だ。
さらに、4輪操舵システム「ダイナミックオールホイールステアリング」を新型A8に続いて設定。前輪にはストレインウェイブギヤのメカニズムが採用され、ドライバーのステアリング入力に応じてギヤレシオが9.5:1から16.5:1まで可変制御される。後輪はスピンドルドライブにより最大5°の操舵を行い、低速時は逆位相に制御することで、ステアリングをフルロックした場合の回転直径を1.1m減少。60km/h以上で走行中は同位相制御を行うことで、直進性や車線変更時の操縦安定性を向上させる。
リヤ2輪間の駆動トルクをアクティブに配分する「スポーツディファレンシャル」もオプションで用意されており、ダイナミックオールホイールステアリングや可変ダンパー、アダプティブエアサスペンションなどとともに、ECPにより一括制御。緊密に連携して制御することで、車両のコントロール性を大幅に高めている。
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新型A7スポーツバックには当初、340hp・500Nmを発する3.0 V6 TFSIエンジンと7速DCT、状況に応じて後輪を駆動するクワトロ4WDを組み合わせた「55TFSIクワトロSトロニック」が設定されるが、その後別の6気筒および4気筒エンジンが追加される予定。
これらすべてに新開発のマイルドハイブリッド(MHEV)ドライブシステムを搭載し、快適性と効率をアップ。2タイプのV6エンジンとの組み合わせではさらに、48Vの主電源システムを採用した。
この48Vシステムは、リチウムイオンバッテリーとベルト駆動式のオルタネータースターター(BAS)の働きにより、ブレーキング時に最大12kWのエネルギー回生を実現。55~160km/hの速度で走行している際は、フリーホイーリングモードでエンジンを止めてコースティング(惰性走行)するほか、BASを介した再スタートもスムーズに行うことも可能としている。また、スタート/ストップ機能の範囲も大幅に拡大し、22km/h以下で作動可能となった。
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そして、車両から降りた状態でスマートフォンのmyAudiアプリを操作し、駐車スペースやガレージへ自律的に車両を入出庫させることができる「アウディAIリモートパーキングパイロット」および「アウディAIリモートガレージパイロット」を、新型A8に続き設定。
最大5つのレーダーセンサー、5つのカメラ、12の超音波センサー、1つのレーザースキャナーを搭載し、これらをセントラルドライバーアシスタンスコントローラー(zFAS)で統合制御することで、最大39のドライバーアシスタンスシステムを実装可能としている。
フラッグシップのA8に匹敵するレベルで最新技術を満載した新型A7スポーツバックは、ドイツ・ネッカーズルムのアウディ工場で生産。本国ドイツでは2018年2月末から販売開始される予定で、ベース価格は67,800ユーロ(1ユーロ130円換算で8,814,000円)となっている。
10月27日から11月5日まで開催される第45回東京モーターショー2017には、残念ながらこの新型A7スポーツバックは出品されない見込みだが、新型A8とともに1日も早い日本上陸が期待される1台だ。