2010年12月の初代デビューから約7年を経て、9月6日にワールドプレミアを果たした新型日産リーフ。その内外装は、先代のイメージとは対照的なものへと劇的に変化している。この2代目リーフのデザインを統括した森田充儀(もりたみつのり)PDD(プログラムデザインダイレクター)に、その狙いを聞いた。
新型リーフは、あれから時が経って、もっとお客様は実質的に、中身のパワートレインが何であろうと、クルマとして美しい、よりダイナミックであること。要するに、今まで我々が具現化しようとしてきたカーデザインの延長線上にある、クルマとして持っているべきハンサムな姿、これを求めるようになったので、今回はそういう方向でいきました。
ですから、ガソリン車であろうがEVであろうが、表現すべきことにあまり違いはないと思っています。EVパワートレインならではのノーズの低さや、エキゾーストパイプがないためより充実したリヤバンパーの造形は、EVプラットフォームだからこそできることですが、それは本来実現したかったことで、それを具現化したのが新型リーフです。エクステリアのスタイルはよりダイナミックに、「あっ、乗ってみたいな」と思わせる格好良さを狙いました。
新型リーフはその過程にあるクルマとして、向かう方向は同じで、できるだけシンプルな造形にして、目に刺さるような派手なジェスチャーや装飾は必要ない、という考え方ですね。お客様は室内で過ごす時間が最も長いのですから、長時間室内にいても疲れを感じさせないデザインにしたいと考えました。
そこで、インパネのボリュームをできるだけ水平方向に切ることで軽く見せていますが、フォームとしてはシンプルでクセのないスタイルにしました。その中に先進的なインターフェイスを載せるというのが実現したかったことなのですが、それに関しては今回のクルマではこういったサイズで、将来的にはもっと大きくなるでしょう。その後はそういったインターフェイスもなくなって、声だけで全部認識できるようになるのかもしれませんが。
ですからある意味、ベーシックに戻ったと言うべきか、インテリアは古い、先祖返りしたのではないかと声も聞かれたりするのですが、新型リーフではそういった考え方でデザインしています。
--エクステリアも、よりシンプルな方向に向かっているのでしょうか?
森田 そうですね、それは間違いなく、日産デザイン全体の流れとしてそうなっています。ラインがたくさん入っていて、凹んだり出っ張っていたりという、形のためのデザインというのが横行した時代が少し前にありましたが、このクルマは本当にピュアに、シンプルに作っていますね。もちろんそれが、空力特性に良いということも関係しているのですが。
--その、今後の日産デザインの方向性を最初に示したのがこの新型リーフ、という位置付けになるのでしょうか?
森田 その一つではありますね。特に、EVだからブルーのアクセントをたくさん入れた、ということではなく、我々はこのフォルムとしてもEVであることを表現したかった。それは、今までのガソリン車は、ガソリンエンジンで熱を発して、そのパワーをタイヤに伝えて、タイヤが地面に食い付くような形の作り方になっていましたが、その気分を変えたかったんですね。ですからもっとサイレントで、クリーンで、軽くて……ということが、スタイリング上のキーワードになっています。
ガソリン車はやはり、熱を感じさせようとデザインしますよね。エンジンフードやグリルをパワフルにして、フェンダーは張り出したマッチョに作るのが、スポーツカーやガソリン車のパワフルさの表現だと思っていますが、新型リーフではそれとは違ったところでダイナミックさを出したかったんですね。
「クワイエット・ダイナミズム」(静かな躍動感)という言葉で表現していますが、なにもいきり立っていることだけがダイナミズムではないでしょう、ということですね。クールでサイレントなのが、EVらしさだと思っています。
--ボディの寸法はほとんど変わっていないにもかかわらず、非常に躍動感のあるデザインになったと思います。そのポイントは?
森田 ありがとうございます。まず、実際にEVはバッテリーパックが車体の下側にあって重心が低いので、それを視覚的にも表現するために、アイキャッチをできるだけ低い部位に配置しています。そのため、サイドシルまわりに特徴的なデザインを与えています。それから。水平方向に抜ける窓周りの面取りもそうですね。