走りと低燃費、使いやすさを極めた快適ワゴン
TOYOTA/COROLLA FIELDER
トヨタ/カローラフィールダー(160系) 2012年5月フルモデルチェンジ
カローラとしては11代目、ワゴンは6代目となる新型は、歴代モデルでは初めて先代よりもボディサイズが小さくなったというのが話題のひとつに挙げられる。
フロントオーバーハングを短縮し、その分先代に比べると全長が60㎜短くなったわけだが、あらためて実車を前にしてみるに、実際のクルマの大きさ感にほとんど変化は感じない。カローラに限らずフルチェンジの度にボディサイズを拡大して「ホラ、立派になったでしょ!」とやることが、必ずしも時代にそぐわなくなっていることを示してくれた気さえする。
とりわけフィールダーのような5ナンバーサイズのワゴンユーザーにとっては、ヘタに大きくなってくれるよりも現状とトントンの大きさである方が、駐車スペースや取り回し性の面からも歓迎されることが少なくなさそうだ。実際に最小回転半径は従来の5.1mから4.9mに縮小されてもいる。
さて、新型フィールダーは先代同様1.5Lと1.8Lモデルがあるが、今回試乗したのは1.8Lモデルの1.8Sと同エアロツアラー。どちらもパワートレーンは1.8Lバルブマチックエンジン&7速スポーツシーケンシャルシフトを備えたスーパーCVT-iでその走りはなかなかに良好だ。
発進~加速時のエンジンフィールが心地良く、クルマの軽さを感じさせる文字通り軽やかな走りを披露してくれる。低回転域から高回転域まで気持ち良く回り、運転中、程良く届くサウンドも軽快だ。
新型のスーパーCVT-iにも注目したい。車両のGセンサーによって減速時や旋回時のGを判断し、コーナーリング中の不要なシフトアップを抑制するG AI-SHIFTを備えたCVTスポーツモードを採用したからだ。インパネに設けられたスポーツモードスイッチをONにすることでスポーティな走りを楽しめる。今回はG AI-SHIFTの恩恵を授かるような試乗は出来なかったが、スポーツモードの制御はなかなかに楽しい。
スポーツモードをONにして加速してゆくと一定回転まで各ギアを引っ張り、スムーズにシフトアップするといった、いわばATのような加速フィールを味わえる。通常のCVT制御では得られない走りのリズムが生まれるところが好感だ。もちろんシーケンシャルモードにして自らシフト操作するという手があるのだが、よりイージーにスポーティ感覚を得られるところがメリットといえそう。
反面、ハンドリング等でのスポーティ感覚は少々希薄だ。ステアリングの切り始めの動きはダルではないがゆったり系。リアの動き、追従性など基本的に安定志向だ。1.8Lモデルにスポーティさを期待しているユーザーにとっては少し物足りないと感じるかもしれない。逆に1.5Lよりも余裕を求めて1.8Lを選ぶユーザーにとっては、乗り心地の良さや静粛性の高さなどの恩恵がある。
今回試乗した限りでは、前席よりも後席の方が乗り心地は良かったので、後席に人を乗せる機会の多い人は、よりありがたみが増すはずだ。
余談ながら、新型で採用した樹脂製のバックドアはボディの軽量化や開閉時の軽さといったメリットがある。反面、経年変化による他のボディ面との色差が出てしまう心配がある。そのためバックドアとサイドパネルとは面と面が直接接しないようにデザイン的な配慮がなされているところが興味深い。
唯一接しているのはルーフエンドとルーフスポイラーだけなので、仮に色差が出ても余り目立たなくて済むというわけだ。
なお、オプション設定ながらアイドルストップ機能が設定された1.5Lモデルは、後日あらためてご報告したい。
スタイリッシュに演出された「1.8S“AEROTOURER”」のコクピット。メーターもクールなデザインだ。CVTにはスポーツモードが設定される。シフト周辺の処理もオシャレ。
快適性を向上させたシート。“AEROTOURER”のシート表皮はブラックのスエード調トリコットを採用。シートデザインにもスポーティなテイストを演出している。
シリーズ最上級のグレードとなる1.8S“AEROTOURER”。1.8Lバルブマチック&7速スポーツシーケンシャルシフトのスーパーCVT-iで良好な走りを披露。写真のルーフスポイラーはオプションとなる。
こちらは1.8Sの走り。エクステリアパーツやシート形状などは異なるが、パワートレーンは“AEROTOURER”と同様だ。
「1.8S」と「1.8S“AERO TOURER”」に搭載される1.8Lユニット。低燃費化によりJC08モード16.6㎞/Lを実現。
※記事の内容、価格、スペック等は2012年5月のデビュー当時のものです。その後の一部改良等で変更になっている可能性もあります。
※スタイルワゴン2012年7月号より