わたくしこと自動車ライターの伊達は、日頃から「600万円も800万円もするような輸入新車など要らん! クルマは200万円以下ぐらいの中古輸入車で十分!」という意味のことを各所で述べている。また最近では、スバルXVを気に入った関係で「国産新車のフツーぐらいの価格帯のやつも最高だぜ!」みたいなことも言っている。
ただし誤解してほしくないのは、私はなにも高額輸入車や、それを買う人らのことを否定しているわけではない……ということだ。
とある超絶高級レストランでの体験
貧乏人の倅として生まれ、あいにく今現在も二級市民として生きている都合上、自分では高級新車を買った経験はない。しかしこんな仕事をしていると、800万円はおろか数千万円のクルマに試乗する機会もあるわけで(さすがに数億円のクルマは乗ったことありません)、そういった高額車の素晴らしさはきちんと理解しているつもりだ。
わたくしは「幸せとは何か?」ということについてのみ、日々考えをめぐらせている。そして考え続けた結果として、「わたしは高額車を買わない。なぜならば、そのほうが(わたし個人としては)幸せだから」と判断しているだけなのだ。
そのニュアンスをご説明するにあたり、寓話というか、過日わたしの身に実際に起きた出来事を通じて話を進めよう。
その日、わたしは都内某所にある「世界トップレベルの超絶フランス人シェフが経営するレストラン」にいた。当然ながら私的にメシを食いに行ったわけではなく、仕事だ。某輸入車の某モデルの、かなり限定された某お披露目会に関連する仕事である。
基本的にはそのクルマの潜在ユーザー層でいらっしゃる富裕層の皆さまが招待されたイベントだったが、ごく少数のプレス関係者も招待され、超絶瀟洒な空間のなかで、超絶フランス人シェフ様が統率制作する超絶料理に舌鼓を打ったのだ。
わたしがその「ごく少数のプレス関係者」だったのかって?
まさか。
その日わたくしが担当した仕事は「瀟洒なバンケットルームの壁際にギャルソンのように立ち、富裕層の皆さまや少数の有名ジャーナリストが食する超絶料理をそっと眺め、脳内にメモり、後日その様子をオフィシャルマガジンに記事として書く」というものだった。料理のにおいだけはかいだが、水の1杯も供されていない。