2017(平成29)年8月、関西電力は関電トンネルトロリーバスの運行を2018(平成30)年度で終了し、来年度からは全車両15台を「電気バス」に変更すると発表しました。
電気バスとはどのような乗り物なのでしょうか?
そもそもトロリーバスって?
トロリーバスとは、架線から電気をとって、それを動力として走るバスのこと。電気自動車のように充電する必要はありません。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
関電トンネルトロリーバスとは?
長野県にある扇沢駅と、富山県の黒部ダム駅を結び、後立山連峰の中に掘られた約5.4kmの関電トンネル。そこを通っているのが関電トンネルトロリーバスです。
関西電力が運営を担当しており、1964(昭和39)年から運行し続けています。それから現在まで約半世紀、観光客を乗せるだけでなく、工事用の資材の輸送にも使われてきました。
2017(平成29)年には累計乗車人数6,000万人に。しかしランニングコストなどの面から、その1カ月後に、鉄道事業廃止が決定。2019年の車両更新時に、トロリーバスを廃止し、充電式電気バスに変更されることになりました。
電気バスって何?
電気バスとは、蓄電池に電力を貯め、それで電動機を回転させて走るバスのこと。基本的な仕組みは電気自動車と同じですが、バスは車体が大きく、より多くの電力が必要になります。それに対応するため、一般的な電気自動車のようなコンセント式充電と異なり、パンタグラフを用いて一気に大量の電力を充電します。
長所は、トロリーバスと同じように、排気ガスが出ない点や、走行音が静かな点。また架線が必要なくなるため、通常の自動車のように自由に進路をとって走行できます。
戦後から80年代頃まで、各地で試験的に導入されていましたが、電池の消耗やそれによってクーラーをかけられないことが問題となり、定着には至りませんでした。
しかし2010年代から、リチウムイオン二次電池を使ったバスが開発され、そのおかげで電池問題は解決されつつあります。
2012年に東京都墨田区のコミュニティバスが初めて、電気バスを使用した路線バスとなりました。
ここが変わる! 電気バス運行の詳細情報
1964(昭和39)年から54年間にわたって活躍し続けた関電トンネルトロリーバス。その全15台が2019年4月から電気バスとなります。
車両はすべて新しいものに変更となりますが、今回用いる電気バス車両は、ディーゼルバスからエンジンを取り出して、モーターとバッテリーを付けて改造したものを使用します。内装も近代的にチェンジ。
また車両デザインは、54年間無事故で運行し続けたという安全運転への強い思いを込めて、大きな変更はしていません。ベース色を白に変更することで、新しさやさわやかさを表現したといいます。
運行はトロリーバスと同じ黒部ダム駅・扇沢駅間の片道16分の行程。1往復ごとに、約10分間の超急速充電を扇沢駅で行います。
関電トンネルトロリーバスの後継者として、電気バスが最適な理由
関電・立山トンネル内がトロリーバス運行に最適であったのと同じように、この環境は電気自動車の不安点を補える要因があります。
その最大の理由は、エアコンをかけなくていいこと。関電・立山トンネル内は日差しが入らず、標高も高いことから、平均気温は夏でもおよそ12~13度で、むしろ肌寒いほど。冷房をかける必要はもちろんありません。
加えて運行距離も片道6kmほどなので、長距離・長時間運行にもなりません。トロリーバスの採用理由でもあった、トンネル内に排気ガスがこもるからそれが出ないように、という条件もクリアしています。
関電・立山トンネルは、まさにトロリーバス・電気バス両方に最適な環境なのです。
珍しいバスが二種揃い踏み! 立山黒部アルペンルート
関電トンネルトロリーバスが電気バスに変わることで、日本唯一となる立山トンネルトロリーバスと、最新技術を搭載した関電電気バスが、一気に楽しめるようになります。
世界有数の大規模山岳観光ルートである立山黒部アルペンルート。雄大な自然に囲まれつつ、多様な交通手段にも注目してみましょう!
文/風来堂
(バスとりっぷ編集部)