「熊本地震」が発生してから、今年で9年目となります。震度7の地震が同じ地域で立て続けに2回発生したのは観測史上初めてのこととなりました。「熊本地震」がどんな地震だったのか。そして、いま私たちができることをまとめました。
「熊本地震」とは
「熊本地震」とは、2016年4月に発生した熊本県熊本地方を震源とする大地震のことです。
2016年4月14日午後9時26分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、熊本県益城町では震度7を観測しました。この一度目の大きな地震のあと、さらに大きな本震が発生し、2日後の4月16日午前1時25分に、同じ熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生し、熊本県益城町と西原村で、震度7を観測しました。
一連の地震活動で、震度7の地震が同じ地域で2回も発生したのは、震度7が制定された1949年以降、初めてのこととなりました。それも2日も経たず、30時間以内に発生しています。
大きな地震が発生すると、震源付近では地震活動が活発化します。従来、最初に発生した大きな地震を「本震」、その後に起こる地震を「余震」と呼んでいましたが、この「熊本地震」をきっかけに気象庁は大地震の後の防災の呼びかけ文について 「余震」という言葉を使わず、例えば「今後1週間程度は最初の大地震と同程度の地震に注意が必要」などと呼びかけるようにしました。「余震」という言葉を使うと、最初の地震よりも規模の大きな地震は発生しないという印象を与えてしまうことがその理由です。
なお、気象庁はこれらの地震をはじめ、熊本県を中心とする一連の地震活動について、「平成28年(2016年)熊本地震」と命名しています。※以下、「熊本地震」と表記。
「熊本地震」による被害
一連の「熊本地震」による被害も甚大なものとなりました。熊本市や益城町、西原村、南阿蘇村などを中心に多数の家屋倒壊や土砂災害が発生し、約20万棟の住宅が被害を受けました。また、死者は274人となり、そのうち「災害関連死」は200人を上回り、犠牲者のうち8割に及びました。
「災害関連死」とは、地震による直接の被害ではなく、被災後に時間が経ってから、長引く避難生活などによる環境の変化やストレスなどの影響で亡くなるものです。断水によってトイレが思うように使用できなくなることや、食事の栄養が偏ること、雑魚寝などで就寝環境が悪くなることや運動不足など様々な影響が挙げられます。
「災害関連死」を防ぐために
自然災害が発生した際に、助かったはずの命を避難所で落とすことがないようにするためには、「自助・共助・公助」のいずれもが必要と考えられます。身を守るためには、公助に頼ることなく、災害を他人事ではなく自分事として捉え、自助について考え、充実させることも重要です。
災害に備えて、個人で多めの備蓄をしておけば、トイレや食事、衛生管理などに困ることが減り、災害関連死のリスクを減らすことができるはずです。
今一度、避難時に必要なものを改めて見直して、備蓄が十分かどうかを確認しておくと良いでしょう。
今後の大地震発生の可能性は
政府の地震調査委員会は、日本周辺の海底や全国の活断層で想定される地震の発生確率について、毎年1月1日の時点で改めて計算し直し、公表をしています。
今年2025年1月1日に発表した内容によると、今後30年以内に南海トラフで想定されるマグニチュード8から9の巨大地震が発生する確率は、これまで「70%から80%」とされていたのが「80%程度」に引き上げられました。
また、今年3月に公表された被害想定によると、南海トラフ巨大地震がひとたび発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域で10メートルを超える大津波の襲来が想定されています。
「南海トラフ地震」に限らず、大地震はいつどこで発生してもおかしくない状況です。甚大な災害をもたらした「熊本地震」から今年で9年。日頃から地震の見直しを行い、自分が今できる備えをこの機会に行っておきましょう。
※30年以内に発生する確率については、南海トラフとして確率の算出を始めた2013年は「60%から70%」でしたが、その後、巨大地震が発生していないため、確率は徐々に上がっています。想定している巨大地震が発生しない限り、時間の経過とともに確率は上がります。