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スキー休暇が2週間!? スキー大国フランスの独特な文化 日本との共通点も


フランスはヨーロッパを代表するスキー大国であり、多くのスキーリゾートがアルプス山脈を中心に広がっています。冬には特にスキー休暇が設けられ、多くの家族が長期滞在型のスキー旅行を楽しみます。しかし、近年の温暖化がスキーリゾートに深刻な影響をもたらしており、雪不足が問題化しています。特に低地のスキー場は営業維持が難しくなっており、フランス内外で対策が求められています。持続可能な観光業の取り組みとして、通年で楽しめるリゾート開発や再生可能エネルギーの活用が進行中です。また、日本のスキーリゾートでも同様の課題に直面しており、観光客誘致のために新しいアクティビティを提供しようとしています。

寒くなってきましたね。冬にはスキーやスノーボードを楽しもうと計画されている方も多いのではないでしょうか?
筆者の住むフランスは、ヨーロッパを代表するスキー大国です。アルプス山脈を中心に多くのスキーリゾートが存在し、12月頃から4月頃にかけてのスキーシーズンには、国内外から多くの観光客で賑わいをみせます。しかし、近年は温暖化の影響により、スキー場の雪不足が問題になっています。

本記事では、フランスのスキー文化や温暖化がスキーリゾートにもたらす影響について詳しく解説します。フランスと日本のスキーリゾートが抱える、課題と未来を探っていきましょう。


スキーはフランス人の冬の楽しみ

フランス人にとって冬の楽しみといえば、真っ先に浮かぶのはスキーです。

アルプス山脈やピレネー山脈など世界有数の山地があり、スキーに適した地形が豊富なフランスでは、冬にスキーをするのが定番のレジャー。
「トロワ・ヴァレー」という総滑走距離、約600kmの世界最大級のスキー場があることでも有名です。日本国内では比較的大きな部類に入る、新潟県の苗場スキー場(総滑走距離約18km[※1])と比較してみても、その差は歴然です。
シーズン中は上級者から初心者まで、フランス国内外から多くの観光客が訪れます。

今から100年前、1924年の第1回冬季オリンピックが、アルプスの最高峰モンブランの麓にあるリゾート地、シャモニー・モンブランで開かれました。
これをきっかけにウィンタースポーツの人気が高まり、フランスではその後も1968年、1992年と計3回冬季オリンピックが開催され、スキーの普及に大きく貢献しました。

日本ではスノーボードの人気も高いですが、フランスではスキーを好む人が大多数。スキー場に行けば、子供から中高年まで華麗にスキーを楽しむ様子が見られます。
スキーを教えてくれるスクールも充実しているので、家族連れや初心者も楽しめる環境が整っています。

日本のスキー旅行というと、日帰りや1泊2日、長くて2泊3日ほど、という人が多いと感じますが、フランスでは1週間や2週間と、長期間スキーリゾートに滞在する人が多いんですよ。

〈出典〉
[※1]苗場スキー場
https://www.princehotels.co.jp/ski/naeba/winter/coursemap/


フランスには「スキー休暇」がある?

フランスの学校は日本と比べてバカンス(休暇)が多く、季節毎に2週間(夏は約2ヶ月)の休暇があります。それに加えて12月に2週間のクリスマス休暇があります。
フランス人にとって、子供のバカンスに合わせてお父さんやお母さんも休暇を取るのは自然なことなので、計画的に仕事を休む人が多いです。

スキーシーズンは主に12月中旬ごろから4月にかけてです。
2月の冬季休暇はまさにスキーシーズン真っ只中。この休暇中にスキー旅行へ出かける家族が多いので、この休暇は別名「スキー休暇」とも呼ばれているほどです。

2月はこの影響で、スキー場、交通機関、高速道路が非常に混雑し、スキー場周辺のホテルやレストランも予約でいっぱいになります。
この混雑を緩和するため、フランス国内を3つのゾーン(Zone A、Zone B、Zone C)に分けて、ゾーンごとに休暇の開始時期を1週間ずつずらしています。たとえば、Zone Aの学校が2月の第1週から休暇に入った場合、Zone Bは第2週から、Zone Cは第3週から休暇に入るように設定されています。

日本でもスキー人気は根強いですが、フランスのように「スキー休暇」として国家的なバカンスが設定されているのは興味深いですよね。


温暖化による雪不足とスキー場の現状

ここ数年、フランスのスキーリゾートは温暖化の影響で雪不足に悩まされています。
フランスには標高3000mを超えるスキー場も幾つかありますが、1000m台と比較的低いスキー場においてその影響は著しく、厳しい状況が続いています。

通常スキーシーズンが始まる12月だというのに営業を開始できない、あるいはシーズン中にも関わらず、雪が少なく営業を停止せざるを得ない、というスキー場が出始めています。
降雪の代わりに降雨が多くなったことや、雪が以前に比べてより早く解けるようになったことで地盤が緩み、崩落などの問題に直面しているスキー場もあるようです。
中には経営難に陥り、閉鎖を余儀なくされるスキー場も相次いでいます。

フランス気象庁のデータによると、年平均気温は上昇傾向にあるため、2000m未満の場所において雪が地表を覆う期間が、2021年時点で1970年代と比較すると1カ月短くなったそうです。この期間は、今後数十年の間にさらに数週間短くなるとみられています。[※1]

日本のスキー場でも同様に、温暖化による深刻な雪不足が課題になっています。今後も続くであろう雪不足のリスクに備え、人口降雪機の導入なども検討されていますが、投資に対する効果の測定が難しく、その優先度は上がりにくいようです。
さらにはスキー・スノーボード人口の大幅な減少も追い打ちをかけることになり、多くのスキー場が厳しい経営を迫られています。
観光庁が2020年に発表した「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」報告書によると、1998年の最盛期にはスキー・スノーボード人口が合計1800万人だったのが、2016年には580万人と約3割にまで減少しています。[※2]

〈出典〉
[※1]ksm.fr
https://ksm.fr/archives/662078
[※2]観光庁
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12888603/www.mlit.go.jp/common/001342222.pdf


スキーリゾートが直面する課題と未来

温暖化による雪不足が続く中、フランスの多くのスキーリゾートは、その存続に関わる気候危機の脅威を理解し、持続可能な観光業を目指す新たな方向性を模索しています。

例えば、冬だけでなく年間を通じて楽しめるリゾートに転換するため、自然の中の整備された道を歩くトレイルや、マウンテンバイクなどのアクティビティを充実させるリゾートが増えています。
また、風力や太陽光発電を利用した環境への影響の軽減に取り組むなど、エコリゾート化を進めるスキー場もあり、温暖化対策と観光収入の両立を図っています。

日本でも同様に、新たな取り組みが進んでいます。イルミネーションやかまくら体験・雪像などスキーだけでない体験型スノービレッジの造成や、年間を通じた誘客促進のためマウンテンバイクコースを整備するなど、様々な楽しみ方ができるリゾートへの転換を図っています。
また、外国からの旅行者を取り込むために、本格的スキーヤーから初めての人まで、多様な利用者のニーズに合った、国際競争力の高いスノーリゾートの形成に取り組もうとしています。[※3]

このように、フランスや日本のスキーリゾートは、未来を見据えた新しい価値を生み出すことで、観光地としての魅力を維持し続けようと努力しています。

〈出典〉
[※3]観光庁
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12888603/www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/content/001593296.pdf


スキー場の今後に期待

温暖化の影響が拡大する中で、各国のスキーリゾートは深刻な雪不足に直面しています。
日本では特に顕著になっているスキー・スノーボード人口の減少という課題もあり、多くのスキー場が厳しい経営を迫られています。

雪が少なくてもできるアクティビティや夏のアクティビティの導入、再生可能エネルギーを取り入れた人工降雪設備の活用など、既に始まっている新たな取り組みが今後も加速していくことでしょう。

歴史あるスキー文化や観光産業を守るため、持続可能な観光の実現に向けた力強い戦略が求められています。
リゾートの魅力を維持しながら気候変動に対応した未来に向けて、スキーリゾートが今以上に盛り上がっていくことを期待したいですね。

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