秋は登山にちょうどよい季節です。少し険しい山道でもそれほど汗をかくこともなく、あまり運動をしていない人でも低山なら無理なく楽しめます。もしかしたら、すでに友人と秋山登山の計画を立てている人もいるのではないでしょうか。
気候を考えると秋は登山に適しているのですが、この季節だからこそ気をつけなくてはいけないポイントがいくつかあります。そこで今回は、安全に秋山登山を楽しむために、気をつけるべきポイントをご紹介していきます。
秋山登山の魅力は景色の美しさにあり
気をつけるべきポイントをご紹介する前に、まずは秋山登山の魅力について解説します。秋の登山の魅力は、なんといっても景色が美しいことにあります。紅葉がきれいなだけでなく、夏よりも湿度が低く乾燥しているので、空気が澄んで遠くまで見渡すことができます。
日本アルプスのような本格的な山でなくても、高尾山や六甲山といったアクセスしやすい都市近くの山で絶景を楽しめるのもこの季節ならでは。気温がそれほど高くないので、夏場のように熱中症のリスクも低く、汗が滴り落ちるということもありません。
晴れた日の登山なら寒さを感じることもなく、山頂付近で家族や友人とお弁当を楽しめます。きちんと自分のスキルに合った山を選べば、体力にやや不安のある初心者でも気軽に登山を楽しめるのが、秋山登山の魅力になります。
ただし秋山登山には他の季節とは違うリスクがあります。どのようなリスクがあり、何に気をつければいいのか詳しく見ていきましょう。
秋は日が短いので余裕のあるスケジュールを立てよう
10月から12月にかけての登山で気をつけたいのは、自分たちが思っているよりも日が短いということです。夏の記憶が頭の片隅に残っているので、17時くらいでもまだ活動できそうな感覚になる人も多いようですが、2021年11月1日の東京は日の入りが16時46分。12月になるとさらに日が短くなります。
秋山登山はまず日没時間をチェックしてください。そして日没の2時間前までに下山できるように、登山スケジュールを組みましょう。もし日没時間が17時なら15時に下山できているのが理想です。
どうしても2時間前に下山できない場合には、必ずヘッドライトを用意してください(2時間前に下山する場合もできる限り用意しておく)。また、無理に登頂しようとしないのも重要です。あと少しで山頂という場合でも、予定よりも遅れているなら途中で引き返してください。
暗くなると分岐を間違えたり、足元が見えづらくなって転倒や滑落のリスクが高まります。そうならないためにも、秋山登山は早朝にスタートし、早めの下山を心がけてください。
秋山は思ったよりも冷えるので防寒具は必須
秋の山は涼しくて登りやすいというメリットがありますが、必ずしも快適な気温というわけではありません。歩いているときにはちょうどよい気温でも、止まって休憩していると体が冷えてしまって低体温症になることがあります。
そもそも標高が高い場所は平地よりも気温が低く、一般的に標高が100m上がるごとに気温が約0.6℃下がると言われています。1000mくらいの山でも、平地と山頂で6℃も気温が違うことになりますので、必ず防寒具を用意しておきましょう。
山の標高にもよりますが、フリースや薄手のダウンジャケットくらいはリュックに入れておきましょう。外気だけでなく汗も体を冷やす原因になるので、汗冷えしないように肌着は吸水速乾性の高いウェアを身に着けておくのもポイントです。
すでに早めの下山の必要性については説明しましたが、早めに下山するというのも寒さ対策になります。まだ日が高いうちに下山できれば、寒さを感じることなく登山を楽しめます。防寒具を用意するのはもちろんですが、早めの下山も忘れないでください。
【参考】
山の天気を知ろう!:日本山岳会
天気予報はしっかりと確認しておこう
山の天気は変わりやすいと言いますが、秋の山は特に天気が目まぐるしく変わります。標高が高い山では雪が降り出すこともありますし、平地は晴れているのに山頂付近だけ大雨になっているなんていうこともあります。
秋山登山をするときには1週間前から天気予報をチェックして、天気が大きく崩れるようなら予定を延期しましょう。上級者になると雨でも登山をすることもありますが、初心者にはおすすめできません。山は逃げませんので、安全に登山できるタイミングを待ってください。
雨で濡れてしまうと低体温症のリスクが上がるため、荷物に雨具を入れておきましょう。雨具というとレインウェアを思い浮かべる人もいますが、それに合わせて折り畳み傘もあると便利です。100g以下の軽量の折り畳み傘がありますので、そちらも用意しておいてください。
また、登山中は時々でいいので「tenki.jp 登山天気」アプリで雨雲の動きをチェックしておきましょう。雨雲レーダーを確認して、大きな雨雲が近づいているようなら無理せず途中で下山してください。
無理をしないことと、計画をしっかり立てることが秋山登山の基本。ここでご紹介したリスクはいずれも備えていれば回避できるものばかりです。安全に帰ってくるために、3つのポイントをしっかりと頭に入れた上で、余裕のある秋山登山の計画を立てましょう。