11月になると富山湾などでは寒ブリ漁がはじまります。お正月の魚にはブリが利用されるなど、西日本の方たちにとって、ブリはとても馴染み深い魚です。ところが最近は、北海道でもブリがよく獲れるようになりました。北海道の代表的な魚であるサケやイカ、サンマが獲れなくなる一方で、北の海では西日本の代表的な魚であるブリが豊漁となっています。
北海道ではサケ、イカ、サンマが不漁。かわりにブリが獲れる
10年ほど前までは北海道ではブリにはあまり馴染みがなく、テレビや雑誌などでブリの照り焼きやブリ大根を目にはするものの、実際に作って食べる家庭は少なかったようです。
しかし、海水温の上昇が原因なのか、北海道ではここ数年、北海道で主要な漁をしめていたサンマ、イカ、サケが不漁。かわりにブリがよく獲れるようになりました。
イカの街、函館では、ブリの漁獲がスルメイカを上回っているため、イカの加工業者がブリの商品開発に乗り出したりしています。
気温が低い道東の知床でも、サケの漁獲量が減少。かわりに、暖かい海で獲れるはずのブリがサケの定置網にかかるようになりました。
ブリは出世魚。北海道ではフクラゲ→イナダ→ブリ
ブリは出世魚なので、大きさによってよび方が違います。北海道では、体重が1kgに満たないものを「フクラゲ」(または「フクラギ」)、1~5kgのものを「イナダ」、そして5kg以上になったものを「ブリ」とよびます。
北海道以外ではブリの幼少期は「ワラサ」「ハマチ」「メジロ」「ワカナ」などとよばれたり、ブリが大きくなったものは「オオウオ」とよばれたりして、地域でまったく違った名称がついています。このように、同じ魚なのに地域でよび方が違うと、研究者たちは学問的な議論がしにくくなります。そこで、明治の後半から全国の魚の名称が統一されて図鑑に収められ、今ではブリに統一されました。大きさや重さが違っても、1kgのブリ、50cmのブリ、というように表記されて混乱することは少なくなりました。
ブリは12月から1月にかけての寒ブリがおいしいといわれていますが、北海道で獲れるフクラゲは、秋がもっともおいしいと評判をよんでいます。最近では、北海道を代表する秋の味覚といってもいいほどに“地位”が上がり、脂がのっているので刺身はもちろん、照り焼きやフライ、汁物などで道民に消費されています。
道内でブリの消費拡大を。函館でブリフェス。日高ではブランドブリ
暖かい海で獲れるブリは、数年前までは北海道では馴染みが薄く、家庭の食卓にのぼることはあまりありませんでした。最近はスーパーなどでもブリを見かけるようになりましたが、道外に比べると消費量はまだまだ少ない傾向です。
そこで、ブリがよく獲れる道南では、平成30年に「はこだて・ブリ消費拡大推進協議会」が設立されたほか、今月の10~18日には、函館産の「地ブリ」を食べてもらおうと、飲食店各店が工夫を凝らした「ブリたれカツ」を提供する「ブリフェス」が開催されました。
また、ひだか漁協では地元で獲れたブリをブランド化する取り組みをしています。ブランド名は「三石ぶり」と「はるたち(春立)ぶり」。ブリを船上で血抜きして鮮度を保ち、6kg以上の大型に限り、産地別にブランドロゴが入った専用のケースで出荷しています。
参考
日経電子版:「1センチのブリ」の名は? 出世魚、昇進ルートの謎
北水試83,2011:佐藤充,「積丹半島に来遊するブリについて」
日本財団 海と日本PROJECT:函館ブリフェス
ひだか漁業協同組合:鰤のブランド化による販路開拓と販売促進
お正月の魚といえば、西日本ではブリですが、東日本ではサケが一般的です。しかし、北の海ではサケが不漁、ブリが豊漁という現実。日本のおさかなマップが変化してきている今、北海道でも、お正月の魚といえばブリ、という日がくるのでしょうか。