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去年より又さびしいぞ秋の暮ー歳時記を楽しむ


このところ、ようやく秋の季語「爽やか」を実感するお天気の日も多くなりました。もう台風など自然災害の被害が広がらないことを祈りつつ、人々が日々の移ろいを詠んだ俳句の世界から、秋気分の代表となる季語を取り上げます。


をりとりてはらりとおもきすすきかな

「すすき」は、漢字ですと芒、薄。秋の代名詞で、月やお団子との相性も抜群。ちなみに、「枯れすすき」は冬の季語となります。

・をりとりてはらりとおもきすすきかな/

飯田蛇笏

折り取った、秋の実りの芒の穂。はらりと垂れる、その思いがけない重さの感触を詠んだ名句です。ひらがなの表現が、指先の体感を強調する効果を高めています。

・山は暮れて野は黄昏の薄哉/

蕪村

向うの山々から夜の闇が訪れ、手前の野原のすすきは仄かな光の中で揺れている。素朴な里山の夕暮れを描きつつも広大な構図は、画家でもあった蕪村の真骨頂。

・君が手もまじる成るべしはな薄/

去来

こちらは少々解説を。「はな薄」は花薄のことで、穂の出たすすきを指します。向井去来は、芭蕉の高弟。篤実な人柄で、芭蕉が最も信頼した人物です。この句は、旅の別れの一シーン。友人が別れを惜しんでいつまでも振っている手が、一面のすすきの穂に混じり重なり、遠くなっていく。詩情豊かな一句ですね。


誘はれしごとく灯のつく秋の暮

次の季語は「秋の暮」。秋の一日の夕暮れの意味です。秋も終わり近い頃の晩秋を指す「暮れの秋」とは本来別の意味でしたが、重なる例も多くなっているようです。

・誘はれしごとく灯のつく秋の暮/

遠藤紀子

秋の日暮れは物悲しいものですが、街の明かりが共に誘い合うようにひとつ、また一つと灯されていく光景は心温まるものがありますね。

・硬球を打つ青年の秋の暮/

鈴木六林男

テニスでしょうか野球でしょうか、日没までの一瞬の間も無駄にせず、元気にボールを打つ若者の姿。秋の爽やかさと相まって凛々しいことでしょう。

・去年より又さびしいぞ秋の暮/

蕪村

「老懐」と前書きが添えられています。一般的な意味は老人の心、年寄りの考えといったところ。しかしここで聞こえてくるのは、毎年同じはずの秋の日暮れが、歳を重ねるごとにますます寂しく感じるものだ……という蕪村の嘆き。現代人の心の内にも寄り添う一句で、今も愛される蕪村の人気が納得できますね。


坂の上また坂ありて鱗雲

最後は、「秋風」「鱗雲」「夜長」と、カジュアル感覚の秋の季語のバラエティーを。

・秋風の山羊鳴くたびに白くなる/

磯和魚歌

爽やかな風とともに日毎に深まる秋の中、山羊たちをのどかな中にもシュールに捉えた、見事な一句。カメラの連続撮影を思わせる言語表現も、俳句ならではの技法と言えるでしょう。

・坂の上また坂ありて鱗雲/

猪瀬つる子

通学通勤、外回りの営業、配達人エトセトラ。誰もが忙しく行き来しながら、ふと坂の上の鱗雲を見上げて、秋の喜びに心を満たす一瞬があるのではないでしょうか。

・辞書に引く古語おもしろき夜長かな/

岩井加寿子

夏の暑苦しさに閉口した後だけに、秋の夜長の心地良さはひとしおです。調べ物が面白くて次々に脱線して、夜更かしとなる今日この頃。本好きには、古語のみならず、季語の奥深さを教えてくれる歳時記も、本棚に欠かせぬ一冊であることでしょう。



【句の引用と参考文献】

草間時彦(著)『秀句鑑賞十二か月』(朝日新聞社)

飯田竜太(著) 『鑑賞歳時記 (第3巻)』(角川書店)

石田郷子(著) 『俳句の意味がすぐわかる! 名句即訳 蕪村』(ぴあ)

『第三版 俳句歳時記〈秋の部〉』(角川書店)

秋風の山羊鳴くたびに白くなる

秋風の山羊鳴くたびに白くなる

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