17世紀、景徳鎮や伊万里焼と言った白磁の東洋陶磁器が「白いプラチナ」と呼ばれてヨーロッパの上流階級で珍重されていました。ドイツのザクセン選帝侯・アウグスト強王も東洋磁器を蒐集していましたが、ついには錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベトガーに白磁の製法を研究するように命じ、ヨーロッパ初の硬質磁器製造に成功、1710年・王室磁器製作所として「マイセン窯」が誕生しました。そしてこの夏、パナソニック汐留美術館(東京・港区)では「マイセン動物園」と銘打ち、動物に注目した展覧会が開催されています。アール・ヌーヴォー期を中心に120点に及ぶ作品が一堂に揃い、その8割が展覧会初出展です!ほとんどが個人蔵ですので、次に見られる予定はまったくの未定です。見逃せないですね。
第1章「神話と寓話の中の動物」
神話や寓話のモチーフは西洋美術で多く表現されていますが、陶磁器においても同様です。第1章では繊細にして豊かなマイセンの技術を駆使した、神話と寓話の世界を堪能することができます。《人物像水注「四大元素の寓意」》では、水・火・地・空気の四大元素の特徴を表情豊かなデコレーションで表しています。タイトル画像の《猿の楽団》も、今にも動き出しそうな生き生きとした表現で見ているだけで元気をもらえます。小さなお子様から大人の方まで楽しめますね。
第2章「器に表された動物」
カップアンドソーサー、ポット、皿、壺…さまざまな器に動物が散りばめられている作品群の中には、「スノーボール」シリーズも多く紹介されています。スノーボールは、アウグスト強王の息子 アウグストⅢ世が「王妃に枯れない花を贈りたい」という願いから、その命によって1739年に生まれました。小花をふんだんに散らした透かし模様にあしらわれた小動物のデコレーションは、動物が主張しすぎない印象です。装飾は時代と共に自然主義の要素が強くなっていきます。今でも愛好家の多いマイセンのシリーズ。時代を超えて継承されているのがうれしいですね。
第3章「アール・ヌーヴォーの動物」
20世紀に入ると、アール・ヌーヴォー(新しい芸術)の影響を受け、より写生に忠実に、リアルな表現の作品が多く登場するようになります。主に犬や猫をモチーフとして、日常の一コマの様子を表わした作品は本物そっくりの愛らしさです。ヒョウやシロクマ、ペンギン、キリン、キツネなどの彫像が並ぶ様子はまさに「動物園」と見まごうばかりです!また、質感のなめらかさや色彩の自然な風合いからアール・ヌーヴォー期の技術の進歩を見てとることができます。この時期マイセンでは、イングレイズ※1という技法が多用されるようになり、淡く繊細な色調の作品が作られました。
※1模様を釉薬の上に描きながら、焼成時に釉薬のなかに染み込ませる技法
第4章「マックス・エッサーの動物」
1925年以降になるとアール・ヌーヴォーからアール・デコへと様式が変化していきます。マイセンでも例外ではありません。この時期にマックス・エッサーが多くの作品を残しています。エッサーの作品は新しい時代を反映しつつ、これまでのマイセンらしさも残しているのが特徴と言えるでしょう。1937年のパリ万博でグランプリを受賞した《カワウソ》はポーズや表情にユーモラスな風情を感じますし、《ライネケのキツネ》の作品群ではモチーフに則した優美さも感じられます。1700年代に一人の王のこだわりから始まったマイセンの歴史はまだまだ続きます。
展覧会概要 他
名称:マイセン動物園展
会場:パナソニック汐留美術館
会期:2019年7月6日(土)~9月23日(月・祝)
休館日:水曜日、8月13日(火)~15日(木)
開館時間:午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
*8月2日(金)、9月6日(金)は夜間開館 午後8時まで(ご入館は午後7時30分まで)
入館料:一般:1,000円 65歳以上:900円 大学生:700円 中・高校生:500円 小学生以下:無料
20名以上の団体:100円割引
障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料で入館可能。
その他、詳細はリンクサイトよりご確認下さい。
*出典・引用
パナソニック汐留美術館 プレスリリース、展覧会概要
ドイツの名窯「マイセン」日本公式サイト