クールビズを取り入れている企業などでは、ノージャケット、ノーネクタイ……軽装の会社員の姿を見かけるようになり、街を行く人たちにも夏服姿が多く見られます。いよいよ本格的な夏がやってきますが、これからの時季は、暑さ+高湿度に加えて気候も不安定になりやすく、私たちはそうした自然環境の影響を受け、気力や食欲も減退気味になりがち。そんな時でも、そうめんやそば、うどん……なら喉越しよく、さらっと食べられて、本当に助かりますね。そして、そこに欠かせないのが薬味ですが、皆さんはきちんと薬味を食べていますか? 薬味には、香りや色どり、食欲増進……様々な効能があり、夏を迎え乗りきるには格好の戦力! 今回は、まだまだ知らない、薬味に隠された力をみていきましょう。
薬味には、「薬」の働きと「味」を引き立てる一人二役の役割が!
薬味とは、大根おろし、しょうが、にんにく、ねぎ、からし、ごま、のり、ゆず……麺類や鍋物、生魚や肉料理などに少量加えることで、香りや色どりを添え、風味づけする香味料のこと。外食に行くと、仕切りのある細長い薬味皿に、数種類の薬味を並べて出されることも多いですね。
ふだん、何気なく食べている薬味ですが……そこには驚きのパワーが秘められています。
【薬味の効能】
・薬味の香りと色どりで食欲増進
・薬味の香りと成分が肉や魚などの臭みを抑制する
・薬味の殺菌作用で食べ物の腐敗や食あたりを防ぐ
・水分の摂りすぎで冷えた体を温める
・食材の味わいに深みや変化をつける
・消化を助ける などが挙げられます。
こんなにすごい、薬味パワー
それでは、和食に使われる主な薬味の効能をみていきましょう。
・ねぎ
食欲増進、消化促進、血行促進、疲労回復など
ねぎの白い部分には、胃腸の働きを高める、血行をよくする、新陳代謝を活発にするなどの作用があり、青い部分にもビタミンなどが多く含まれており栄養豊富。
・しょうが
血行促進、新陳代謝の向上、脂肪の燃焼を促進、消化促進など
生のしょうがに多く含まれる辛味成分は免疫細胞を活性化、殺菌作用、胆汁分泌の促進、抗炎症作用、吐き気・頭痛を抑える作用、老化を防ぐなどの効能がある。
・大根
消化促進、殺菌など
ビタミンCや消化酵素が多く含まれ、消化を助け胃腸の働きを整える。辛み成分には、殺菌作用や臭みを消す効果もある。
・しそ
免疫力増加、血行促進、疲労回復、精神安定、アレルギー症状の緩和など
しその香り成分には殺菌力と防腐効果があるため食中毒の予防。また、神経をしずめイライラを抑える効果も。
・わさび
殺菌、血栓予防、消化促進、食欲増進など
わさびに含まれる「わさびスルフィニル」が血流を改善して血栓が詰まるのを防ぎ、血栓ができてもサラサラ血液によって詰まるのを防ぐ。
まさにミラクル! すべての効能を挙げていくとキリがありません。
存在を主張しないながらキラッ、と光る存在感。さりげなく料理全体のグレードをアップさせ、食べる人の体を守る……。まさに、薬味は料理の「名脇役」ですね!
刺身にわさび、しそ、大根のつま……その理由は?
私たちがふだん、刺身を食べる際にあたりまえに使っているわさび。
この刺身とわさびの組み合わせは、わさびのツンとした辛味と香りが生魚の臭みを消し、味わいにアクセントをつけるというだけでなく、生魚を食するのにわさびの殺菌作用が役に立つ、という安全面の効果もあったのですね。
そういえば、刺身とセットの大根のつまやしそにも、ただのお飾りではなく、殺菌、防腐、消化……の働きをしていたことがわかります。刺身のつまは残すのではなく、一緒に食べることで食中毒や消化不良を防ぐことができるようです。
決して出しゃばらず、しかし、しっかりと主人(刺身)を支える、さしみの「つま」は「妻」の語源であるという説もあるそうです。
もともと「薬味」の「薬」とは、薬、毒消し、滋養などを現し、「味」は、味、旨み、食欲を起こす、などの意味があります。薬としての働きと味(美味しさ)を引き立てる働き、このふたつを兼ね備えている「薬味」! 積極的に摂りたいですね。
とはいっても、薬味として食べる量はわずかです。逆に薬味だから大量に摂ればいい、というわけでもありません。ここは、薬味の効能を知ることで意識的に薬味の食材を食事に摂り入れ、美味しく、健康的な食生活を送ることを心がけようではありませんか!