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春はさかりへ「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」です


寒さのなかに感じた暖かさをいつのまにかあたりまえにして、寒さのぶり返しを警戒するようになっていませんか? 今日から啓蟄の末候「菜虫化蝶」です。春の気配に這いでてきた虫も成長を重ねています。やがて蝶となり春の空に羽ばたきます。春の日ざしに厚いコートやダウンを脱げば、心とからだも開かれ放たれて新しい自分になりたい! そんな気持ちがわいてきます。虫に負けずに私たちも春の空へ飛び立ってみませんか。


ギャップが大きすぎます! 菜虫から蝶へ

菜虫とは大根、蕪、キャベツやブロッコリーという野菜でおなじみのアブラナ科の植物を食べる虫をいいます。青虫とよばれるのは身体が葉っぱと同じ緑色をしているからでしょう。もりもりと葉っぱを食べてサナギになるとやがてモンシロチョウとなります。華麗なる変身です。

蝶にはたくさんの種類がありますが、それぞれ食べる植物は決まっているということです。同じアゲハチョウの仲間でもアゲハはミカンなどの柑橘類、キアゲハはセリ科のニンジンというように食べ物が違うということです。もし「出会いたいわ」という蝶がありましたら、その蝶がたべる植物を調べてそれが生えているところで待っていれば、出会えるチャンスに恵まれる確率がぐっとあがりそうですよ。

蝶はもう一つ「夢虫」という名前ももっています。虫からの変身ぶりが夢のようだからでしょうか。謎めいた華やかさを喩えるのにつかわれるのもわかりますね。


菜の葉にとまれ! 口ずさんだ歌の景色は晴れ? それとも曇り?

ちょうちょが飛びかう菜の花畑は、都会に育っても口ずさんだ歌とともに郷愁を誘われほのぼのとした気分になります。青空と菜の花の黄色が春の明るさを里山の景色にもたらして、心を浮き立たせてくれるからかもしれません。そんな情景を与謝蕪村は、

「菜の花や月は東に日は西に」

と詠んでいます。菜の花といえばこの季節誰でもが思い出す俳句です。菜の花の咲く時期は晴れてばかりではありません。曇りの日には「菜の花曇り」という素敵なことばがあてられており、曇りでも冬とは違う明るさを感じます。

「窓低し菜の花明かり夕曇り」

夏目漱石の句です。明治の文豪の目がとらえる陰翳の美しさが読みとれます。

春になるとどこにでも咲いている菜の花は季節を知らせてくれるだけでなく、畑の土を消毒する殺菌する成分をもっているそうです。他にも大地を守り育てる力を持っている菜の花は土地改良にも使われています。菜の花畑は次の作物のための準備でもあったんですね。


春の山は笑うんです! 知っていました?

春の山のようすは「笑う」と形容されます。冬を越した木々に若い芽が吹き、湧いてくる霞がかかった山はふんわりと笑みをこぼしているように見えるのでしょうか。春を待っていた私たちの心を託すような素敵な表現だと思いませんか? 冬の間眠っていた山が立春を過ぎて暖かい風をうけ、鳥が囀り、雪解けの水が流れだし、草木が萌えはじめたまさにこの時、大きく動き出す山の合図のようにも感じます。夕刻に家路をたどる時、日暮れの空の変わりゆくさまを楽しむことができます。さあ次は春分です。春が存分に力を発揮するまで、歩みはゆっくりですがもう少しの辛抱ですよ。

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