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11月24日はフレディ・マーキュリーの命日です。代表曲「ボヘミアン・ラプソディ」に隠されたメッセージ


11月もあとわずか。2018年も残すところ1か月あまりとなりました。

現在大ヒット上映中の『ボヘミアン・ラプソディ』、もうご覧になりましたか。完成まで8年の歳月を経て公開された、伝説のバンド・クイーンの伝記映画です。タイトルはフレディ・マーキュリーが作詞作曲したクイーンの大ヒット曲にして、ロック王国・イギリスを代表する曲。2002年にギネス・ワールド・レコーズ社が実施した「英国史上最高のシングル曲は?」というアンケートで、ジョン・レノンの「イマジン」やビートルズの数ある名曲を抑えて堂々の1位を獲得したのが、「ボヘミアン・ラプソディ」なのです。難解といわれる歌詞と6分という長さ、オペラの要素も組み込まれた複雑な構成。かつてない革新的なこの曲に、なぜ人々は魅了され続けるのでしょうか。フレディが曲に込めた想いを、彼の人生を紐解きながら考えてみましょう。


唯一無二の歌唱力と 圧倒的な存在感!フレディの光と影

フレディ・マーキュリー(Freddie Mercury、1946年9月5日 〜 1991年11月24日)は、イギリスのロックバンド・クイーン(QUEEN)のボーカリスト。本名はファルーク・バルサラ。ペルシャ系インド人の両親の間に、当時イギリス領だった東アフリカ・タンザニアのザンジバル島で生まれました。幼少期の大半をインドで過ごし、ザンジバルに戻りますが革命が勃発、17才の時に家族とともにイギリスに移住します。その後、ロンドンのアートスクールで芸術とグラフィック・デザインを学び、クイーンでは自ら衣装デザインを行うなど芸術面でも才能を発揮しています。ピアノを習い始めたのは7歳の頃で、少年時代にはすでに複数のロックバンドで活動していました。

激動の幼少期を経て、早くから自らの才能を開花させたフレディ。デビュー後は「ボヘミアン・ラプソディ」をはじめ、「キラー・クイーン」「伝説のチャンピオン」などの数々のヒット曲を手がけ、4オクターブといわれる歌唱力と圧倒的なマイクパフォーマンスから放たれる強烈な存在感で、唯一無二のエンターティナーと称えられます。このような成功の裏には、アイデンティティやセクシャリティの問題に葛藤し、複雑な生い立ちや容姿のコンプレックスに悩むもうひとりの自分がいました。


ボヘミアン・ラプソディに、なぜ人々は魅了されるのか?

1975年に発表された「ボヘミアン・ラプソディ」は、クイーンとフレディにとって転機となった作品。「ボヘミアン」は伝統や習慣に捉われずに生きる人々、「ラプソディ」は感情的で自由な形式の曲、という意味があります。

ひとりの少年が「ママ、たった今、人を殺したよ(Mama,just killed a man)」と告白する衝撃的な内容、スカラムーシュ(Scaramouche)、ガリレオ(Galileo)、ビスミラ(Bismillah)、ベゼルブブ(Beelzebub)といった、オペラの要素やイスラム教、悪魔を想起させる単語が散りばめられた歌詞、アカペラにはじまり、バラードやオペラ、ハードロックが組み込まれた曲の構成。すべてが革新的で常識を覆す「ボヘミアン・ラプソディ」は、評論家からは酷評されますが世界中が熱狂、クイーン初のシングル曲1位という大ヒットになりました。

この曲には、フレディが同性愛者であることを示唆したものとの見方があります。「ボヘミアン・ラプソディ」での殺人は、昔のフレディを自分自身で殺し、真の自分を受け入れることのメタファーという解釈です。

生前、彼はこの曲に関して多くを語りませんでした。クイーンのメンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーも、歌詞の本当の意味はわからないと語っています。ファンタジーと現実が交錯する世界は、小説やアートのようにさまざまな解釈の余地があります。陰鬱にみえる世界を描きながらも、後半にあらわれる高らかなギターソロは、すべてを肯定する響きをたたえているようにも感じられます。わずか6分という時間のなかで、自由への憧れや心の葛藤、人生の肯定感への渇望といった普遍的なテーマを描いているからこそ、人はこの曲に惹きつけられ意味を見出したくなるのかもしれません。


もはや伝説!語り継がれる「ライヴ・エイド」でのパフォーマンス

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の冒頭とラストは、1985年7月13日にロンドン郊外のウェンブリー・スタジアムで開催された「ライヴ・エイド」のシーン。「1億人の飢餓を救う」というスローガンで、アフリカ難民救済を目的とした20世紀最大のチャリティーコンサートです。スタジアムを埋めつくす72,000人の観客が、フレディのパフォーマンスに合わせて歌ったり揺れたりするシーンが壮大なスケールで再現されています。驚くべきは、今なお語り継がれる21分間のパフォーマンスが、映画ではほぼ完コピで再現されていること。主演のラミ・マレックは、白いタンクトップとスリムジーンズでフレディのダイナミックな動きを見事に体現しています。

舞台袖では、デビュー前からの恋人だったメアリーと当時の恋人ジム・ハットンが、フレディの勇姿を見守ります。愛に包まれ、圧巻のパフォーマンスを披露するフレディの豪快かつチャーミングな姿に思わず感涙。クイーンのメンバーも本人と見紛うほどのルックスと動きで、フレディと一体感を演出しています。「ボヘミアン・ラプソディ」のピアノ・イントロからはじまり、ラストの「伝説のチャンピオン」まで、まさにフレディと駆け抜けるかのような疾走感。このライヴ・エイドでのクイーンのパフォーマンスは他を圧倒し、偉大な演奏としてロックの歴史に刻まれています。



1991年11月24日、フレディはHIV感染合併症による肺炎のためケンジントンにある自宅で死去。45歳という若さでした。晩年は、愛するパートナーのジムと多くの猫たちに囲まれて過ごしたそうです。

フレディが残したクイーンの音楽には、知性と美意識に貫かれた揺るぎない力強さがあります。人生の応援歌として、これからも人々を励まし勇気を与えてくれることでしょう。



参考

映画『ボヘミアン・ラプソディ』プログラム

現在のウェンブリー・スタジアム

現在のウェンブリー・スタジアム

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