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東京都庭園美術館で堪能する、エキゾティックなアール・デコ


東京都港区の東京都庭園美術館では、 2019年1月14日まで「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」展が開かれています。美術館の前身は、戦前にパリに遊学した朝香宮夫妻の邸宅として、1933(昭和8)年に建造された施設です。"アール・デコの美術品"と称されてきたこの旧朝香宮邸とまさに共鳴する今回の展覧会では、美しい芸術作品とともに、この装飾様式が生まれた時代背景をも、深く味わうことができます。


1910年代から30年代のフランスに花開いたアール・デコ

アール・デコは、1910年代から30年代に、フランスを中心に流行した美術工芸の様式です。それ以前の世紀末のアール・ヌーヴォーは、植物などを思わせる曲線による有機的なデザインでした。一方、近代的都市生活が生まれた時代に適したアール・デコは、実用的でシンプルな、直線によるデザインを特徴としています。

今回の展覧会では、エキゾティシズム、すなわち異国情緒に焦点が当てられています。両大戦間期の当時のフランスでは、驚きと憧憬に満ちた異文化との出逢いが、美意識や造形に大きな影響を与えました。ロシア・バレエが瞬く間にパリで大人気となり、ツタンカーメン王墓が発見され、シトロエンの自動車によるアフリカとアジアふたつの横断プロジェクトが遂行されるなど、新しい時代の風が到来します。そして1931年に開催されたのが、パリ国際植民地博覧会でした。

会場には、植民地を持つ欧米5カ国によって、各地域の特徴をアピールするパビリオンが並びました。キャッチフレーズの通り「一日で世界一周」気分の博覧会は、文化人による植民地主義への反対も浴びましたが、押し寄せた多くの人々にとって初めて、異郷の人々や文化と出合うきっかけとなりました。その生き生きと輝く自由な造形や色彩に、多くの芸術家が、革新的な価値を見出し触発されて、新しい作品を生み出します。今回の展覧会では、フランスの美術館所蔵の国内初公開作品を中心に、それらの逸品が展示されています。

庭園美術館正面

庭園美術館正面


疾走する美神、ナンシー・キュナード

そんなアール・デコの光と影の時代を背景にした、ある二人の女性の人生にも、展覧会ではスポットが当てられています。一人は、当時のパリの社交界のスター、ナンシー・キュナード。資産家の家に生まれ文化人と交流し、今回展示のセシル・ビートンをはじめ、マン・レイなど、多くの芸術家が彼女を撮影し描きました。まさにセレブです。

しかしのちに、彼女はアメリカ出身の黒人ピアニストと恋におち、人種差別と立ち向かうことになります。ナンシーは持ち前の反骨精神で、人間の尊厳、平等、自由を世に問うために書籍を出版し、世界の人々に訴えました。アフリカの文化を深く愛したナンシーのポートレートの姿は、コレクションした木や骨、象牙のネックレスやブレスレッドで纏われています。

庭園美術館新館テラス

庭園美術館新館テラス


「黒いヴィーナス」から「虹の部族」へ、ジョセフィン・ベイカー

もう一人の女性は、アメリカ出身のエンタテイナー、ジョセフィン・ベイカー。その魅惑的な容姿と類い稀な才能からパリで大人気を博し、「黒いヴィーナス」と讃えられた逸話は有名です。のちにフランスの市民権を取得したジョセフィンは、やがて郊外の城を買い取ります。そこで日本やアルジェリアの戦争孤児を含む様々な国籍の孤児たちを、「虹の部族」と名付けて育てたことが、美しい絵本とともに紹介されています。

展覧会は、稀有な空間に解け合う美しい美術工芸品のほか、エキゾチックながらも新しい造形発見への喜びに満ちた彫刻や絵画が揃い、見所満載です。また、ある時代が、見る者の視点によっては光にも影にも転換するという、歴史の陰影に富む展覧会でもあります。館内には広い庭園やテラスを眺めることのできる、レストランやカフェも配置されています。まもなく見頃になりそうな紅葉に囲まれて、アール・デコをじっくり味わってはいかがでしょうか。同展は、2019年1月22日〜3月31日まで、群馬県立館林美術館に巡回します。

庭園美術館日本庭園

庭園美術館日本庭園

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