北海道ではそろそろ、ゆり根の収穫が始まっています。市場に出回るのはもう少し先ですが、スーパーにゆり根が並んでいるのを見かける頃になると、年末が近くなってきたことを実感します。10月ももう下旬。そろそろ年末のことが気になる時期になってきました。
食用は小鬼ゆり。「ゆり根」に「根」の字が使われているけど「茎」の一部
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と、美人を表すたとえとして使われるユリの花ですが、花ではなくゆり根のほうは京料理や正月料理として古くから食用とされています。
ゆり根には「根」の字が含まれていますが、あの丸い形のものは「根」ではなく、「隣茎」といって、「茎」の字が含まれている通り、地下茎の一部です。たくさんの隣片が重なり合って丸くなったもので、玉ネギやチューリップも似たようなつくりです。
食用になるのはほとんどが、苦味が少ない小鬼ゆりです。京都の丹波地方でも栽培されていますが、生産量の95%以上が北海道産です。主な産地は北海道の後志(しりべし)、上川(かみかわ)、十勝など。10月から収穫が始まり、12月になるとお節料理用に出荷のピークをむかえます。
真狩(まっかり)村で道内の3割を生産。ゆるキャラは「ゆり姉さん」
国内のゆり根は北海道が全国シェアの95%以上を占めますが、そのうちの約3割が真狩村で生産されています。真狩村は歌手の細川たかしさんの出身地としても有名ですが、札幌から西へ車で約100分ほどのところに位置しています。
真狩村の特産物であるゆり根には、イメージキャラクターがあります。その名は「ゆり姉さん」。頭部がゆり根の形をしていて、ピンクのTシャツに赤のチェックのスカートを履いています。丸くて大きな瞳がチャームポイントで、真狩村のPRのために日夜奮闘しています。
丸くなるまで6年。秋に掘り起こし、春に植える…これを毎年繰り返す
ゆり根が丸くなるまでには、実に6年もの年月がかかります。春に、まだ小さい種球を植えて、次の年の春に掘り起こして、畑の別の場所に植えます。その年の秋に掘り起こし、冬の間、おがくずの中に保存し、春にまた別の場所に植えます。3年目の秋にまた掘り起こし、冬は保存、4年目の春にまた植え替える…これを繰り返し、5年目の秋にようやく収穫となります。
収穫後はカボチャやサツマイモのように、2~3ヵ月寝かせてから出荷されます。そのほうが、デンプンが糖分に変わって甘味が増すからです。秋に収穫し、倉庫で寝かされ、冬に出荷されるころには甘くおいしくなるというわけです。
ゆり根が店頭に並ぶまでには、実に6年もの年月がかかります。しかも、ゆり根はとてもデリケートです。表面が柔らかいので傷つきやすく、日光にあたるとすぐに変色してしまいます。さらに、連作に弱いので、10年間はゆり根を植えたことがない畑に、毎年毎年植え替えなければなりません。
このように、ゆり根の栽培は、気の遠くなるような手間ひまがかかっているのです。
お正月になると、ゆり根は含め煮や茶碗蒸しの具などに使われますが、アク抜きや皮剥きなどの面倒な下ごしらえがなく、火の通りが早いので、お正月以外でもいろいろな料理に手軽にアレンジすることができます。たとえば、玉ネギやエビといっしょにかき揚げにしたり、蒸してつぶしてコロッケにしたり、オムレツの具にするなどなど…。
農家の方が手間ひまかけて、大切に育てたゆり根。お正月料理や和食という枠にとらわれず、様々な料理に使ってみてはいかがでしょうか。
〈参考:真狩村「ゆり根」〉
〈参考:ホクレン きたやさい「ゆり根」〉