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漢方薬を国産に!!輸入頼みの「甘草」を国内で栽培する試み


最近は日本でも漢方薬がよく使われるようになり、病院で処方されるほか、薬局でも市販の漢方薬を手軽に買えるようになりました。一般に広く出回るようになった漢方薬ですが、その原料は中国などからの輸入がほとんど。しかし、世界的に漢方薬のニーズが高まり、近年は価格が高騰、漢方人気とは裏腹に手に入りにくい状況になりつつあります。そこで、漢方薬の原料を日本で栽培しようと、漢方薬の主原料である甘草(かんぞう)などが各地で栽培されはじめています。甘草の収穫が始まるこの時期、国産の漢方薬について考えてみたいと思います。


甘草は漢方薬の主成分。その名の通りとても甘い

甘草はマメ科カンゾウ属。実に多くの種類があり、ハーブの世界ではリコリスとも呼ばれていますが、漢方薬の原料となるのはウラルカンゾウやスペインカンゾウなど。

その名の通り強い甘みがあり、砂糖の数十倍も甘いとされています。この甘さは古くから、調味料や菓子などさまざまな食品に利用されています。身近なところでは、醤油や味噌の甘みや、飲料や食品の添加物として使われるほか、仁丹の主成分であったりもします。

甘草自体はそのほとんどは食用として用いられていて、漢方薬として使われるのはほんの一部です。しかし、甘草は漢方薬でもっともよく使われる成分で、炎症を抑えたり水分を保つ作用があり、漢方薬に欠かすことができません。


輸入頼みだった甘草だが、日本各地で栽培がはじまった

ほとんどを輸入に頼っていた甘草ですが、輸入先の中国で漢方輸出に制限がかかったため価格が2倍に跳ね上がるなど、漢方薬の入手が困難になっていました。また、輸入ものは主成分であるグリチルリチンサンの含有量が一定でない場合が多く、品質的に懸念される場合もありました。

そこで、農水省、厚労省、自治体、製薬会社、大学医学部、大手企業などが協力し、休耕地を利用するなどして、甘草や芍薬などの試験栽培がはじまりました。その数は30ヵ所以上。国産で漢方薬をまかなうことができれば、薬だけでなくサプリメントや食品にも利用できるなど、ビッグビジネスにつながる可能性もあるため、栽培が本格化しつつあります。

その中でも、東日本大震災で津波にのまれた宮城県岩沼市の畑では甘草の栽培が順調に進んでいます。塩害で野菜作りをあきらめかけていた畑では、甘草が早く育っており、塩分が適度なストレスとなって成長が早くなったのではないかともいわれています。

漢方薬用の甘草は薬用なので農薬が使えません。そのため、除草や害虫駆除などに手間がかかりますが、各地で独自の栽培が進められており、いずれはご当地ブランドの漢方薬が誕生する日も遠くないかもしれません。


漢方薬の7割に甘草が使われている

甘草は漢方薬のおよそ7割に使われていますが、単に甘い味だから飲みやすくするため、という目的だけではありません。

漢方薬は症状によって、いろいろな生薬を配合して作られますが、作用が強すぎるものもあれば、緩やかな作用のものもあります。甘草はこれらを調和する働きがあり、まとめ役として使われます。

市販薬でもよく見かける漢方薬には、葛根湯(かっこんとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)などがありますが、これらにも甘草が用いられています。このように、一般的に使われる漢方薬の中心となるのが甘草なのです。

※漢方薬は医師の処方通りに服用してください。市販の漢方薬もその用法を守って服用してください。

〈参考:産経WEST「漢方の主原料“カンゾウ”国産化に成功 脱中国依存へ、武田薬品〉

〈参考:日本経済新聞電子版「漢方の生薬確保 人工栽培技術を磨き、中国リスクに備える〉

〈参考:医薬基盤・健康・栄養研究所「カンゾウの栽培技術について」〉

〈参考:鹿島労災病院「漢方エッセイ 甘草のこころ」〉

〈参考:農業経営者「今から始める漢方生産」〉

〈参考:薬事日報ウェブ「ツムラ “甘草”の栽培化に成功 生育期間は1年3カ月」〉

〈参考:AERA.com「漢方で使われる“甘草”はやっかいな生薬? 帯津先生が解説」〉

〈参考:河北新報:夢の作物/高付加価値へ、構造転換図る〉

2001年以来、大学医学部では漢方医学を学ぶことが必須となりました。実際の医療現場でも保険適用の漢方薬が150種類にものぼり、漢方薬が用いられることが多くなりました。需要が高まる漢方薬。これがビジネスに結びつくとあって、各地で栽培が本格化し、2年後にはすべて国産の甘草に切り替える製薬会社もあるそうです。高まる漢方薬ブーム。あと何年か後には、国内生産の安全・安心な漢方薬が登場するかもしれませんね。

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